A Written Oath

湘南藤沢の開業税理士・マンション管理士・社会人大学生のブログです

A Written Oath
マンション管理社会人大学院関連

組合とマンション管理組合について

先日、マンションの管理組合は、民法上の権利能力なき社団とされており、租税法上は、人格のない社団等に該当するものとして、収益事業を行った場合には法人税がかかることについて書きました。

権利能力なき社団とマンション管理組合について

その中で、民法上の団体には、社団や財団のほかに、「組合」があることにも少し触れました。

そして、マンションの管理組合は、その名称に「組合」が含まれています。

しかし、管理組合は、通常、権利能力なき社団とみなされており、組合とは考えられていません。

 

組合とは

ざっくりと一言でいってしまえば、「各構成員が出資して行う共同事業体で、法人ではないもの」です。

社団との比較その他一通りの解説をしだすと本題から逸脱しすぎるため、ここでは税金をかける対象(納税義務者)としてみた部分にのみ着目します。

結論、その根拠法(特別法)に基づき、協同組合等として法人税が課税されるものを除き、「民法上の組合(任意組合とも呼ばれ)」や「商法に規定がある匿名組合」は、団体としては課税されず、その組合を構成する組合員に対して所得税をかける構成員課税(パス・スルー課税とも呼ばれます)されています。

これは、組合が権利能力なき社団よりも、構成員からの独立性が弱い団体であることから、組合に帰属する権利・義務は、実質的には各構成員に帰属していると考えられていることによるものです。

そのため、組合の利益や損失は、たとえその利益配分などが行われていなかったとしても、組合には帰属せず、出資の割合に応じて各構成員の所得に含めて計算されることになっています。

その結果、組合に出資された財産は、出資割合に応じて変動することとなり、一般的な企業会計よりも複雑な計算が必要となります。

 

共有、合有と総有

次に、法解釈による取扱いですが、それぞれに違いがあります。

民法上の「共有」財産は、原則、各構成員が持分を自由に処分できることになっています。

しかし、組合が所有する財産を各構成員の共有としてしてしまうと共同事業を行う上では不都合です。

そのため、組合の財産は、「合有」という概念で、共有とは少し区別して取扱っています。

共有ではあるもの、所有目的によってはその処分が制限され、各自の持分の分割請求権は、団体存続中は認められません。

そして、さらにもう一つ拘束性が強い状態が「総有」です。

権利能力なき社団等の財産は、法人ではないため、不動産を所有しても登記できませんが、その社団に帰属する総有財産として扱われ、各構成員が持分の分割請求などをすることはできません。

 

管理組合の2面性

1)団体の性格から見た場合

以前の解説の通り、通常、管理組合は民法上の権利能力なき社団とされ、その財産の構成員の総有にあるとされています。

そのため、税制上も法人税課税されています。

しかし、管理者を定めず、規約も制定されなければ、管理組合は、権利能力なき社団にはあたらないはずです。

この可能性については、稲本洋之介、鎌野邦樹著『コメンタールマンション区分所有法(第3版)』にも指摘があり、この場合には、管理組合には総有財産はなく、組合として合有財産を所有していると考えられます。

そのため、税法上は、この団体が収益事業を行った場合には、組合として構成員課税が行われる可能性があります。

 

2)財産の帰属から見た場合

また、別の論点として、共用部分はどのような財産なのかという問題があります。

法律制定当初より、「共有部分」とは名づけられておらず、「共用部分」とされたことに意味はあり、民法の「共有」とは異なるものです。

本来、共有であれば、本来構成員課税を受けるはずですが、人格のない社団等として法人税課税されているため、国税庁は文章回答事例において、法人税法基本通達15-2-5に基づき、次のように回答しています。

なお、駐車場施設をはじめとする外部使用に必要な資産は、区分所有者の共有物であり、マンション管理組合の所有物ではないことから、通常、マンション管理組合の収益事業にかかる所得計算において減価償却費が計上されることはないと認識しております。

しかし、この制限を受けると管理組合が共用部分を利用して収益事業を行った場合には、減価償却ができないことになります。

 

3)事業主体が異なる場合

また収益事業を行う主体者が変わった場合には、取扱いに違いが生まれています。

具体的には、管理組合から駐車場の貸与(非収益事業)を受けた区分所有者が転借(不動産所得等)を行った場合です。

この場合には、共有財産ではあるものの、その財産は区分されていませんから、その駐車場部分に関わる減価償却を区分所有者は行うことができると考えられます。

結果として、組合課税していることと変わりがありません。

なお、そもそも専有部分を賃貸している区分所有者は、基本、その所有しているマンションのすべてを事業に供していると考えられますから、共有部分を収益事業に供しているかどうかにかかわらず、減価償却資産として償却費を計上しているはずです。

 

まとめ

論文として上手くまとめられるかはわかりませんが、私は管理組合には、社団と組合の2面性があり、現状、人格のない社団等としての一括法人税課税には、このような課題があるのではないかと考えています。