財務会計視点でのマンション管理組合会計

以前、必要な時に必要なお金を用意するため、ファイナンシャルプランニングの観点からマンション管理組合会計を考える必要があることを記事にしています。

今でもまさにこの通りだと考えていますが、長期修繕計画を作成していない管理組合はともかく、作成している管理組合にも、なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

 

積み立てるべき修繕積立金が簿外債務となっている

いつまで存続させるのかという論点もありますが、問題点をシンプルにあぶり出すため、今回はその点は脇におきます。

仮にマンション管理組合を、その寿命いっぱいまで存続させると考えて計画すると、RC造建物を前提にすれば、物理的な耐用年数は最低でも50年(最近のものには100年以上のものも)はあると考えることができます。

この耐用年数に対して、一般的な長期修繕計画は25年から30年計画となっています。

これは、国土交通省から発表されているマンション管理標準指針や長期修繕計画ガイドラインにおいて、そのように目安が示されていることに端を発しています。

しかし、実はこの計画年数では、この年数以後に修繕周期が到来する大型設備改修工事、具体的には排水管やガス管(特に埋設配管)、自動火災警報装置、機械式駐車場設備の更新などが計画から漏れるため、特に新築時の計画には反映されません。

加えて、長期修繕計画は、あくまで管理組合の管理対象である専用部分以外の共用部分を修繕するための計画であることから、共用部分しかその算定の対象にはしていません。

ところが、漏水対策としての修繕計画を考えれば、当然、専有部分の給排水菅の更新工事も必要ですので、床材の下などに隠蔽されている配管などを更新するためには、隠蔽部分を露出させて工事をする必要もあります。

したがって、その撤去・復旧工事費まで織り込まないと現実的な計画とはいえません。

これらの工事費のすべてを計上して計算し直せば、相当な工事費が計画外となっていることがわかります。

漏水事故が多発したり、設備故障を放置したりして、生活と安全に支障があるマンションとしないためには、これらの工事を行う必要があることになります。

そう考えると、これらを反映できていない修繕計画は、将来必要となる費用を正確に確認し、今どの程度の金額を積み立てておくべきかを把握できていないものとなり、積み立て額は必要額を集めていないといえます。

その計上されていない支出分、帳簿外に債務があると考えざるをえません。

 

簿外債務となる最大の原因は段階値上げや一時金徴収の計画

実施すべき工事の内容がしっかりと計画できていないことも原因の一つですが、さらに大きな原因は、修繕積立金の段階値上げ案によるものです。

全体像を把握していない上に、段階値上げ案等にしてしまうことが、必要額を積み立てることの障害になってしまっています。

バブル期以前の大昔はともかく、現在は給与が年功に応じて段階的に上がることのほうが少数派です。

したがって、マンションを維持するために必要な修繕積立金を段階的値上げ案とすることに、合理的な根拠はありません。

むしろ、新築時に安い修繕積立金で居住している人は、中古で購入した人よりも安い金額しか積み立てずに、そのマンションに住むことになるので、不公平感を生み出す積み立て方式といえます。

 

中古マンションの評価が変われば

今までは中古マンションの不動産評価は、あまり良いものとはいえませんでした。

現状でも、実際には修繕積立金が安いことを理由として中古マンションが購入される傾向があります。

もちろん、その安い積立額が適切な修繕計画のもとに設定されたものであれば、問題ありません。

しかし、そうであるかどうかを判断することは、プロでもない限り難しいはずです。

結局のところ、その部分はあまり深く考慮されることなく、修繕積立金の安さだけが一人歩きしてしまいます。

そのため、適切に修繕積立金を値上げすることがマンションの価値を維持する上で必要とまではいえませんでした。

ところが、今後は中古市場を活性化させようという政策的な動きがあります。

現段階では将来的な動きとしかいえませんが、不動産価格にこの修繕積立金の問題も絡めて考えると、古いマンションはさらにその価値が下がる方向になると考えられます。

なぜなら、適正に積立金を積み立てていないのですから、適正に積み立ているマンションよりも評価される方向になるとは考えにくいからです。

 

年金問題と似た構造

これって、国の年金問題と似た構造ではないでしょうか?

全体で医療費がいくらかかるかを考えない(考えていたのかもしれませんが)まま、計画されていたことから、積み立て額はその分値上げされてしまっています。

さらには、値上げ対応が難しくなってきたことから、ついには支給開始年齢を引き上げています。

そして、若者は年金に加入したがりませんし、払いたくもなくなります。

当然ですね。

年金制度を維持するためには必要でも、積み立て額と支給額を比較すると、単純な金額的損益として若者は損することが明白なのですから。

結局、マンションの修繕計画と同じです。

これらによって、年金や積み立て制度は、安心を提供しているのではなく、不安を増大させているように感じています。

結果として、そのようなマンションを買いたい人はいなくなり、マンション価値のさらなる低下を招き、新築至上主義に貢献してしまっています。

 

工事費の全体像をしっかりと把握することが重要

実は、前段にあげた簿外債務となっている可能性の工事は、個々のマンションごとに設備の仕様などが異なることから、一律には扱えない問題です。

これは、給排水管などでは明らかに違いがあるのですが、築年の古いマンションでは鉄管が使われていることが多く、新しくなるにつれて、塩ビ管など錆びない・錆びにくい材質に変わっているのです。

当然、使える年数が伸び、トータルで必要な修繕費が変わってきます。

逆に、マンションが新しくなるにつれて、様々な新しい設備がつくようになります。

具体例を一つあげれば、古いマンションにオートロックはありませんが、今では当たり前の設備です。

建築的にも、昔の団地型マンションでは、それほど建築的に修繕費がかかるわけではありませんが、超高層マンションはその高さゆえに修繕コストが高くなりますし、普及している15階建てぐらいのRC造マンションであったとしても、その形状が複雑であるほど修繕コストは高額になる傾向にあります。

したがって、平均額や近隣相場などといったことをいいだして修繕積立金の値上げ額を決めることは、目安として悪いものではありませんが、それは皆さんのお住まいのマンションにとって適切なものであるかどうかとは完全にはリンクしていません。

これらを把握するために、現在の長期修繕計画が適切なものであるかどうか専門家の検証を受けるべきだと考えます。

もちろん、過剰に積み立てる必要は全くありません。

ただ、積立額が適正かどうか判然としない計画だと、結局のところ消極的選択として過少な段階値上げを誘発してしまいがちです。

 

まとめ

財務会計的に考えるということは、「利害関係者(現在の所有者・購入希望者など)にどのようにマンションの現状を伝えるのか?」という視点につながります。

そう考えた時、皆さんのマンションは現状を適切に伝える内容になっていますでしょうか?