A Written Oath

湘南藤沢の開業税理士・マンション管理士・社会人大学生のブログです

A Written Oath
マンション管理管理見直し

フロント担当者から見た業務処理の要領とポイントについて(契約書記載の業務:中編)

前編(2015.12.26)を旧年中に投稿後、年が明けてしまいましたが、『マンション標準管理委託契約書』に記載されている第9条以降の業務について、第15条までの業務を中編として、投稿したいと思います。

 

第9条 管理事務の報告等

法定されているため、儀式的な意味が強くなり、中身は、おおむね月次報告を年間でまとめたものに過ぎません。

この業務に関しては、省力化に努めることが大きなポイントだと考えています。

加えて、大変難しいのですが、「要求されるがままには応えない」業務姿勢を身につけることは、さらに重要なポイントです。

これは、「応えきれない要求にどのように対応するのか?」という課題につながり、私見としては「何をやらないのか」を決めることへと繋がっていくのですが、ここでの判断基準は、「他人から言われたままに行うのか?」「自ら主体的に行うのか?」に集約されると思っています。

 

そして、この判断を行っていくためには、「自らの判断基準を持つこと」が必要です(それが許されない環境の方も、多いかもしれませんが・・・)

判断基準を持つためには、業務の全体像を理解する必要があり、その中で、言うまでもなく、法定要件は「期限までに必ずやるべきこと」のはずです。

度々、書いていますが、この業務関連では、「毎月月末までの、前月における会計の収支状況報告」の未実施が散見されます。

また、年1回のこの管理事務報告すら実施できず、行政処分を受ける大手の管理会社があります。

 

 

第10条 管理費等滞納者に対する督促

この業務実施には、3つの段階があると考えています。

まずは、電話・郵送・訪問などを組み合わせた督促を実施すれば「契約上の義務を満たすこと」となり、フロント担当者としては、これが契約上果たすべき最低限の段階です。

次に、「しっかりと督促履歴を残し、説明責任が果たせる」段階です。

最後に「督促テクニックを磨き、滞納率も下げられる」段階です。

 

おおむね「すぐ」に「マメ」に連絡すれば、滞納率は下がります。

そして連絡した際に、滞納者の状況をしっかりと確認し、早め早めに「複数の連絡手段の確保」や「支払能力を把握しておくこと」が滞納を悪化させないために必要となります。

忙しくなるとここが甘くなり、悪循環が始まります。

したがって、この業務をしっかりこなせるかどうかは「タスク管理」の能力がポイントだと言えると思っています。

 

第11条 有害行為の中止要求

契約書に従えば、管理業務の履行に際し必要となる契約書記載の事項に該当する明らかな有害行為は、管理組合に代わって管理会社でも中止要求ができます。

しかし、「(一社)マンション管理業協会」の業務マニュアルには、「理事長と協議の上、理事長の意向に基づき対応する」旨が記載されています。

ここはフロント担当者自身も心得ていると思うのですが、緊急対応を除き、原則は、「理事長(状況によっては「理事会」)で協議した決議事項にしたがって、対応を進めるべきだと考えます。

 

これは、総会審議事項にまで及ぶ場合を想定し、一つ一つのステップをしっかりと確認しておくことが重要だからです。

悪い意味だけではなく、状況が変われば、人の言うことは変わってしまいます。

口頭だけの確認では、「中止要求」までの強い対応は、難しいと考えます。

また、理事会協議に備えて、写真や現場証拠となるような客観的な物証を確保しておくことも重要です。

一方的な印象のみの申し入れや議論だけでは、反論に対して議論を進めることが難しくなるからです。

 

第12条 通知義務

この業務で漏れがちなのは、組合員からの申し出などに基づく、次の事項の理事長への通知義務です(逆に組合員はこの申し出などを行う必要があります)

一 甲の役員又は組合員が変更したとき

二 甲の組合員がその専有部分を第三者に貸与したとき

ただ、この業務は実施時期が「速やかに」と規定されているため、期限が明示されていません。

では、「いつ行ってもいいのか?」と問われれば、少なくとも「年1回の管理事務報告」が行われる段階では報告が行われるべきだと考えています(「速やかに」行われるべき通知事項が、この段階でも行われないのはオカシイですよね?:苦笑)

月次報告などに所定の欄があり、実施されていれば問題ないのですが、そのような業務処理上のポイントがないと、そもそもこの事実に気づいていない担当者が多い気がしています。

 

第13条 専有部分への立入り

こちらは日常業務では問題になることは、まずないと思います。

管理会社からの必要があっての立入り要請が断られることは、普通はありません。

入っていいと言われても、あまり入りたくない部屋(汚部屋など)はあったりするのですが(苦笑)

 

第14条 管理規約等の提供

こちらは、宅地建物業者からの依頼に基づく、重要事項調査に対する情報開示に関する条項です。

たまに、「駐車場契約を引き継げるのかどうかや、ウェイティングルール」などで、この調査報告に対する回答書面に記載ミスが起こり、トラブルに発展します。

システムがしっかりと整っている管理会社で、データ移行なども順調に進んだのであれば、問題ないと思いますが、WordやExcelなどを直接書き換えて作成しているような中小管理会社では、ダブルチェックやチェックリスト作成などのミス対策を行われることをお勧めします。

 

特にチェックリストの作成は有用です。

自らの失敗や他者の失敗事例を蓄積し、ミスを発見しやすくする体制を整えることが、速く正確に業務を処理する上では、欠かせません。

また、リスト化しておけば、引き継ぎも容易です。

 

第15条 使用者責任

「損害を及ぼしたとき」に限定されているのですが、担当者のミスは管理会社の組織としての責任です。

担当者のせいにして、担当を変えて挽回しようとする管理会社がありますが、これは、本当に管理組合をバカにしていると思っています。

担当者に責任がないわけではないでしょうが、履行確認や進捗状況の把握は、個人事業者に依頼しているわけではないのですから、当然、組織の責任だと考えます。

このような場合には、組織としての改善や対応を提言すべきと思っています。

 

本日の記事は、ここまでとしたいと思います。

契約書関連については、次回の後編で最後の第24条まで解説できればと思っています。