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消費税税理士試験

仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の仕入れに係る消費税額の控除の特例

昨日に引続き、仕入れに係る消費税額の控除の特例で、「仕入れに係る対価の返還等を受けた場合」について、まとめてみたいと思います。

この特例規定は、「仕入れに係る対価の返還等」、すなわち「返品」、「値引き」または「割戻し」を受けた場合に、その金額の消費税分は、税額控除できませんよという規定です。

この規定は、大きく次の2つの内容に分けられます。

・「国内において行った課税仕入れにつき、仕入れに係る対価の返還等を受けた場合」

・「保税地域からの引取りに係る課税貨物につき、他の法律等の規定により、還付を受ける場合」

 

そして、それぞれに次の場合が規定されています。

・「控除して控除しきれない金額があるとき」

・「相続、合併、分割があった場合」

 

※下記の参照条文については、分かりやすさを優先し、条文番号の内容への置き換え、一部省略等を行っています。

 

国内において行った課税仕入仕入れに係る対価の返還等を受けた場合

第32条1項に次の通り規定されています。

事業者が、国内において行つた課税仕入れにつき、返品をし、又は値引き若しくは割戻しを受けたことにより、当該課税仕入れに係る支払対価の額の全部若しくは一部の返還又は当該課税仕入れに係る支払対価の額に係る買掛金その他の債務の額の全部又は一部の減額(以下「仕入れに係る対価の返還等」という。)を受けた場合には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額を当該仕入れに係る対価の返還等を受けた日の属する課税期間における課税仕入れ等の税額の合計額とみなして、「仕入れに係る消費税額の控除」(「課税売上高が5億円を超える場合等」の規定の適用がある場合には、同項の規定を含む。)の規定を適用する。

 当該事業者の当該課税期間における「仕入れに係る消費税額の控除」の規定により控除される課税仕入れ等の税額の合計額(以下「仕入れに係る消費税額」という。)の計算につき「課税売上高が5億円を超える場合等」の規定の適用がない場合 当該課税期間における課税仕入れ等の税額の合計額から当該課税期間において仕入れに係る対価の返還等を受けた金額に係る消費税額(当該支払対価の額につき返還を受けた金額又は当該減額を受けた債務の額に百八分の六・三を乗じて算出した金額をいう。)の合計額を控除した残額

 当該事業者が当該課税期間における仕入れに係る消費税額を「個別対応方式」に定める方法により計算する場合 イに掲げる金額にロに掲げる金額を加算した金額

 「個別対応方式」イに掲げる金額から課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れにつき当該課税期間において仕入れに係る対価の返還等を受けた金額に係る消費税額の合計額を控除した残額
 「個別対応方式」ロに掲げる金額から課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れにつき当該課税期間において仕入れに係る対価の返還等を受けた金額に係る消費税額の合計額に「個別対応方式」ロに規定する課税売上割合を乗じて計算した金額(「課税売上割合に準ずる割合」の規定の適用がある場合には、同項に規定する承認に係る割合を用いて計算した金額。)を控除した残額

 当該事業者が当該課税期間における仕入れに係る消費税額を「一括比例配分方式」に定める方法により計算する場合 同号に規定する課税仕入れ等の税額の合計額に同号に規定する課税売上割合を乗じて計算した金額から当該課税期間において仕入れに係る対価の返還等を受けた金額に係る消費税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算した金額を控除した残額

 

長い規定ですね。

内容的には、「支払対価の額」は、値引き後の金額であるため、通常はそのまま金額で処理すれば良いのですが、国内における課税仕入れについて、後日返金するキャッシュバックなどがあった場合にどのように処理するのかという規定です。

当然、キャッシュバックなどがあれば、それは「値引き」を受けたのと同じことですので、差し引きことができる「支払った消費税額」からその分を控除すれば良いのですが、年度をまたいだ場合などには、その「対価の返還等を受けた日(キャッシュバックなどがされた日)」の属する課税期間において、控除する規定となっています。

 

そして、一号から三号までの各号では、それぞれ「全額控除の場合(=課税売上高が5億円を超える場合等の規定の適用がない場合)」、「個別対応方式の場合」、「一括比例配分方式の場合」について、具体的な計算方法を規定していますが、詳細は割愛します。

 

 

保税地域からの引取りに係る課税貨物につき、還付を受ける場合

第32条4項で次の通り規定されています。

事業者が、保税地域からの引取りに係る課税貨物に係る消費税額の全部又は一部につき、他の法律の規定により、還付を受ける場合には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額を当該還付を受ける日の属する課税期間における課税仕入れ等の税額の合計額とみなして、「仕入れに係る消費税額の控除」(「課税売上高が5億円を超える場合等」の規定の適用がある場合には、同項の規定を含む。)の規定を適用する。

 当該事業者の当該課税期間における仕入れに係る消費税額の計算につき「課税売上高が5億円を超える場合等」の規定の適用がない場合 当該課税期間における課税仕入れ等の税額の合計額(当該課税期間において第一項第一号の規定の適用がある場合には、同号に定める残額)から保税地域からの引取りに係る課税貨物につき当該課税期間において還付を受ける消費税額(附帯税の額に相当する額を除く。)の合計額を控除した残額

 当該事業者が当該課税期間における仕入れに係る消費税額を「個別対応方式」に定める方法により計算する場合 イに掲げる金額にロに掲げる金額を加算した金額

 「個別対応方式」イに掲げる金額(当該課税期間において第一項第二号イの規定の適用がある場合には、同号イに掲げる残額)から課税資産の譲渡等にのみ要する課税貨物につき当該課税期間において還付を受ける消費税額の合計額を控除した残額
 「個別対応方式」ロに掲げる金額(当該課税期間において第一項第二号ロの規定の適用がある場合には、同号ロに掲げる残額)から課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税貨物につき当該課税期間において還付を受ける消費税額の合計額に「個別対応方式」ロに規定する課税売上割合を乗じて計算した金額を控除した残額

 当該事業者が当該課税期間における仕入れに係る消費税額を「一括比例配分方式」に定める方法により計算する場合 同号に規定する課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算した金額(当該課税期間において第一項第三号の規定の適用がある場合には、同号に定める残額)から課税貨物につき当該課税期間において還付を受ける消費税額の合計額に当該課税売上割合を乗じて計算した金額を控除した残額

 

こちらの規定は、輸入取引について、「他の法律の規定により、還付を受ける場合」です。

輸入取引でも消費税が課税されていますが、その詳細は、消費税法ではなく、「輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律(「輸徴法」と呼ばれています)」で定められています。

そのため、「他の法律」と規定されているのは、この「輸徴法」を指しており、輸徴法第15条「変質、損傷等の場合の軽減又は還付等」その他の規定において、一旦納付した消費税が還付される場合について、適用されます。

また、こちらでも第一号から第三号の各号において、具体的な計算の方法が規定されています。

 

 

控除しきれない金額があるとき

「仕入れに係る対価の返還等を受けた場合」については、第32条2項に次の通り規定されています。

前項の規定により仕入れに係る対価の返還等を受けた金額に係る消費税額の合計額を当該仕入れに係る対価の返還等を受けた日の属する課税期間における課税仕入れ等の税額の合計額から控除して控除しきれない金額があるときは、当該控除しきれない金額を課税資産の譲渡等に係る消費税額とみなして政令で定めるところにより当該課税期間の課税標準額に対する消費税額に加算する。

 

また、還付を受ける場合については、第32条5項に次の通り規定されています。

前項の規定により、還付を受ける消費税額の合計額を当該還付を受ける日の属する課税期間における課税仕入れ等の税額の合計額から控除して控除しきれない金額があるときは、当該控除しきれない金額を課税資産の譲渡等に係る消費税額とみなして政令で定めるところにより当該課税期間の課税標準額に対する消費税額に加算する

 

通常、値引きや還付は払った額以上に戻ってくることはないのですが、年度をまたいだ場合などには、「支払った消費税額」以上に戻ってくることがありえます。

このような場合に差し引くことができる「支払った消費税額」を超えた消費税額については、その年度に納付すべき「預かった消費税額」を増額する方向で、その年度の「課税標準額に対する消費税額」に加算して計算することが規定されています。

このような消費税額は、消費税の申告書上、「控除過大調整税額」と呼ばれています、

 

 

相続、合併、分割があったとき

相続があったとき

「仕入れに係る対価の返還等を受けた場合」については、第32条3項に次の通り規定されています。

相続により被相続人の事業を承継した相続人が被相続人により行われた課税仕入れにつき仕入れに係る対価の返還等を受けた場合には、その相続人が行つた課税仕入れにつき仕入れに係る対価の返還等を受けたものとみなして、「仕入れに係る対価の返還等を受けた場合」の規定を適用する。

 

「還付を受ける場合」については、第32条6項に次の通り規定されています。

相続により被相続人の事業を承継した相続人が被相続人による保税地域からの引取りに係る課税貨物に係る消費税額の全部又は一部につき、他の法律の規定により、還付を受ける場合には、その相続人による保税地域からの引取りに係る課税貨物に係る消費税額の全部又は一部につき還付を受けるものとみなして、「還付を受ける」の規定を適用する。

 

このように相続があった場合、被相続人(亡くなった人)から相続人(財産を受け継ぐ人)へと、当然に義務や権利が引き継がれるわけではなく、税法上で改めてそのような事態となった時にはどのように処理するのかが規定されています。

ここでは、亡くなった人が行った課税仕入れについて、相続人がキャッシュバックなどを受けた場合には、その相続人が課税仕入れにを行ったものと考えて、計算することとされています。

 

合併、分割があったとき

合併、分割については、「仕入れに対価の返還等を受けた場合」と「還付を受ける場合」をまとめて、第32条7項に、次の通り規定されています。

「仕入れに係る対価の返還等を受けた場合に相続があったとき」の規定は、合併により事業を承継した合併法人が被合併法人により行われた課税仕入れにつき仕入れに係る対価の返還等を受けた場合又は分割により事業を承継した分割承継法人が分割法人により行われた課税仕入れにつき仕入れに係る対価の返還等を受けた場合について、「還付を受ける場合に相続があったとき」の規定は、合併により事業を承継した合併法人が被合併法人による保税地域からの引取りに係る課税貨物に係る消費税額の還付を受ける場合又は分割により事業を承継した分割承継法人が分割法人による保税地域からの引取りに係る課税貨物に係る消費税額の還付を受ける場合について、それぞれ準用する。

こちらも相続と同じで、合併、分割などで法人の事業が継続していたとしても当然に引き継がれるわけではなく、その処理について、このように規定されています。

合併、分割についての詳細はここでは割愛します。

 

 

まとめ

この規定は、第1項の部分はともかく、その他は計算では必要ですが、理論では重要度は高くありません。

むしろ、理論としては暗記を後回しにされがちな規定です。

11月に入り、そろそろ年末が見えてきました。

限られた時間の中で勉強にするにあたって、ポイントの絞り込みを考えるべき時期だと思います。

これは試験勉強だけに限りませんが、年内で残された時間と業務の棚卸を行って、一度、どこにポイントを絞って勉強(仕事)するのかを考えてみられてはいかがでしょうか?