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消費税税理士試験

災害等があつた場合の中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例の届出に関する特例

本日は、昨日の『中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例』の続きで、「災害等があった場合の中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例の届出に関する特例」について、まとめてみたいと思います。

 

すでに題名だけで読みたくなくなるレベルですが、この規定は、災害などで大きな被害を受けた時に必要となる、とてもありがたい規定です。

申告に関しては、『国税通則法』という法律により、国税一般の申告手続きについて、災害などがあった場合に、その期間が延長される旨の規定がありますので、このような規定は不要に思えます。

しかし、「国税通則法」は、「申告」に関してのみの定めであり、「届出」に関しては定めがありません。

 

そこで、消費税法では、特有の「届出」に関して、一定の要件のもと提出期限が猶予される「宥恕(ゆうじょ)規定」を設けています。

しかし、この「宥恕規定」では、「届出書」の提出期限のみを猶予するだけで、「2年継続適用」の適用については、「宥恕」されません。

これでは、東日本大震災のような津波で帳簿書類一切が流され、事業そのものが一変してしまうような大災害を受けた場合には対応できませんので、さらに「2年継続適用」の要件すらも無視できる本特例を設けて、対応しています。

 

※下記の参照条文については、分かりやすさを優先し、条文番号の内容への置き換え、一部省略等を行っています。

 

災害等があつた場合の中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例の「届出」に関する特例

第37条の二 第1項から第5項までに次の通り規定されています。

災害その他やむを得ない理由が生じたことにより被害を受けた事業者(消費税を納める義務が免除される事業者及び「簡易課税制度」の規定の適用を受ける事業者を除く。)が、当該被害を受けたことにより、当該災害その他やむを得ない理由の生じた日の属する課税期間(その基準期間における課税売上高が五千万円を超える課税期間及び分割等に係る課税期間を除く。以下「選択被災課税期間」という。)につき「簡易課税制度」の規定の適用を受けることが必要となつた場合において、当該選択被災課税期間につき同項の規定の適用を受けることについてその納税地を所轄する税務署長の承認を受けたときは、当該事業者は同項の規定による届出書を当該承認を受けた選択被災課税期間の初日の前日に当該税務署長に提出したものとみなす。この場合においては、「届出書を提出することができない場合」の規定は、適用しない。

 前項の承認を受けようとする事業者は、前条第一項の規定の適用を受けることが必要となつた事情その他財務省令で定める事項を記載した申請書を、前項に規定する災害その他やむを得ない理由のやんだ日から二月以内(当該災害その他やむを得ない理由のやんだ日がその申請に係る選択被災課税期間の末日の翌日以後に到来する場合には、当該選択被災課税期間に係る「課税資産の譲渡等についての確定申告」の規定による申告書の提出期限まで)に、その納税地を所轄する税務署長に提出しなければならない。

 税務署長は、前項の申請書の提出があつた場合において、その申請に係る同項の事情が相当でないと認めるときは、その申請を却下する。

 税務署長は、第二項の申請書の提出があつた場合において、その申請につき承認又は却下の処分をするときは、その申請をした事業者に対し、書面によりその旨を通知する。

 第二項の申請書の提出があつた場合において、その申請に係る選択被災課税期間の末日の翌日から二月を経過する日までに承認又は却下の処分がなかつたときは、その日においてその承認があつたものとみなす。ただし、同項に規定する災害その他やむを得ない理由のやんだ日がその申請に係る選択被災課税期間の末日の翌日以後に到来する場合は、この限りでない。

 

 

前段でも説明しましたが、要約すると、第1項では、「簡易課税制度」の適用を受けるための届出に関して、一定の要件を満たして税務署長の承認を得た場合には、2年継続適用を強制する「届出書を提出することができない場合」の規定を適用しない旨が規定されています。

そして、第2項から第5項にその具体的な手続き要件を規定しています。

 

 

災害等があつた場合の中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例の「不適用届出」に関する特例

第37条の二 第6項から第8項までに次の通り規定されています。

 災害その他やむを得ない理由が生じたことにより被害を受けた事業者(「簡易課税制度」の規定の適用を受ける事業者に限る。)が、当該被害を受けたことにより、当該災害その他やむを得ない理由の生じた日の属する課税期間(当該課税期間の翌課税期間以後の課税期間のうち政令で定める課税期間を含む。以下「不適用被災課税期間」という。)につき「簡易課税制度」の規定の適用を受けることの必要がなくなつた場合において、当該不適用被災課税期間につき「簡易課税制度」の規定の適用を受けることをやめることについてその納税地を所轄する税務署長の承認を受けたときは、当該事業者は「適用を受けることをやめようとするとき」の規定による届出書を当該承認を受けた不適用被災課税期間の初日の前日に当該税務署長に提出したものとみなす。この場合においては、「2年継続適用」の規定は、適用しない。

 第二項から第五項までの規定は、前項の規定の適用がある場合について準用する。この場合において、第二項中「前項」とあるのは「第六項」と、「受けることが必要となつた」とあるのは「受けることの必要がなくなつた」と、「選択被災課税期間」とあるのは「不適用被災課税期間」と、第五項中「選択被災課税期間」とあるのは「不適用被災課税期間」と読み替えるものとする。

 

こちらは「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」に関する特例規定です。

「選択届出書」の場合の規定を準用して、一部の違いを除き、ほぼ同じことを規定して、「2年継続適用」の制限を適用しないこととしています。

なお、この特例を受けるために提出する届出書名は「災害等による消費税簡易課税制度(不適用)選択届出に係る特例承認申請書」と言います。

(こういうレアケース用の届出書名を問われることもあるようですので、参考として載せておきます)

 

まとめ

帳簿、請求書等の保存期間等』の前書きでも簡単に書きましたが、税法自体は、我々の義務に関する事項を定める、権利に対する制限規定です。

憲法には税に関しては、次の通りの定めがあります。

日本国憲法第30条【納税の義務】 「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」

日本国憲法第84条【課税の要件】 「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」

 

これら憲法の定めから『租税法律主義』という考え方があり、そこから派生して、「予測可能性」というものがあります。

突然、明日から消費税10%だと言われたら、いろいろ準備ができなくて困りますよね?

だからこそ、税法はあらかじめ法律を改正し、通常、一定の期間をおいてから施行されるのです。

 

事業計画などに基づいて、ある程度の将来予測の元に行われた届出に対して、災害などのやむを得ない理由から被害を受け、想定外の事態が生じたにもかかわらず、原則通りの税金を課すのは、あまりに酷ですよね?

災害支援的な意味も含め、災害を受けた場合として、ここまでの規定が用意されています。

試験問題とは別にして、実務上で、このような事態が巡ってきた際には、お客様へ提案できるよう、こんな話もあったなぐらいに思い出していただければと考えます。