管理費と修繕積立金の違いとその考え方

定期総会シーズンを控え、大規模修繕などを控えたマンションでは、工事の実施に併せて、修繕積立金の値上げを検討される場合も多いと思います。

以前にも長期修繕計画について記事を書いていますが、今回は管理費と修繕積立金の違いに着目しながら、その取り扱いに対する考え方を整理したいと思います。

 

管理費は純粋な経常的費用

管理費と修繕積立金は、一般に「管理費等」として併せて引き落とされることから、マンション所有者からすれば、どちらもシンプルに「コスト=費用」だと感じられていると思います。

管理費は、最大のコストである管理会社に管理委託費(管理員や清掃員の派遣費用ほか、会計管理業務、フロントマンによる総会・理事会支援業務、各種法定点検費用など)などを支払うためのお金で、一部の特殊な事例を除き、通常、年度毎に費消される費用にしかすぎません。

ただ、管理費=管理委託費という誤解がよくありますので、念のためお断りしておきますが、毎月引き落とされる管理費は、その全額が管理会社に支払われるわけではなく、あくまで管理組合が管理委託費などの経常的費用を賄うために集められているお金です。

 

修繕積立金

これに対し、修繕積立金は、経年により劣化する建物の価値を回復させるために支出する費用です。

したがって、単純な費用ではなく、その支出分マンションの資産的価値を一時期に回復させる性格の支出であり、会計・税務では資本的支出と呼ばれるものです。

ただし、分譲マンションの所有者は、管理組合ではなく、あくまで各区分所有者です。

そのため、管理組合がマンション自体の減価償却を行うことありません(所有者ではないため)が、考え方としては下図の賃貸マンションにおける現状回復に類似しています(国土交通省『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』平成23年8月より引用)

「現状回避をめぐるトラブルとガイドライン」より引用

この図でいう経年変化と通常損耗部分を回復させる費用のために積み立てているわけです。

 

公平な積立方法は均等積立方式

新築時の分譲マンションの修繕積立金はマンション総合調査結果における平均額を下回っていますし、 私の管理会社勤務時代の経験からしても、世のマンションのほとんどは段階増額積立方式を採用しています。

これは、新築時から段階的に修繕積立金を値上げしていくことにより、修繕実施時期に積立金が赤字にならないように計画する方式です。

この方式は、公平な積立方式とはいえません。

なぜなら、分譲マンションの所有者は入れ替わること一般的であり、その際、築年の浅い修繕積立金額が低い時期の所有者と経年が進み修繕積立金が段階値上げされた後の所有者では、その差額分負担に違いが生じるからです。

したがって、国土交通省『長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン、長期修繕計画作成ガイドラインコメント』においては、均等積立方式を基本としています。

この均等積立方式も、計画した年数(通常、25年から30年)の幅でのみ均等額となるだけのため、完全に負担が同じになることはありませんが、それでもその差が小さくなることは間違いありません。

 

修繕積立金の値上げの先送りは修繕費用の借入れを招く

人はどうしても痛みを伴うことを先送りにしたいものですから、修繕積立金の値上げを先送りにする気持ちがわからないわけではありません。

しかし、当然の話ですが、修繕積立金の値上げを先送りしても、必要となる修繕費用や修繕の実施時期まで先送りになるわけではないのです。

そのため、修繕積立金の値上げを先送りにするということは、多くの場合、修繕積立金の積立不足という事態を招きます。

さらにその先には、修繕費用を借入れするという事態に陥ってしまいます。

もちろん、借入れの全てを否定するつもりはありません。

企業においては、借入れはかなり重要な経営手法です。

ただし、借入れを行うという選択は、十分な返済能力があるということが前提です。

非営利組織であるマンション管理組合にとっての借入れは、震災など特殊な要因による突発的な損害を除き、支払利息分のコスト増加要因でしかありません。

 

費用を担う区分所有者の負担能力も考慮しているか?

この問題も以前から記事化していますが、管理費や修繕積立金を支払う区分所有者の負担能力は、永続的なものではありません。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査をみると、賃金に多少の増減はあれど、平均賃金は20年間でそれほど変動していません。

しかし、区分所有者の年齢層は、ほぼマンションの築年数分増加します。

平成28年度の年齢層別の賃金は、下図の通りですが、60代を超えると賃金は急減します(厚生労働省『平成28年賃金構造基本統計調査』より引用)。

平成28年度年齢層別賃金

教育費などの支出減が伴えば、修繕積立金の増額負担にも耐えられるかしれませんが、そのような家庭ばかりではありません。

結果として、大きな修繕支出が必要となる築30年目以降に大幅な値上げを予定すると、その増額に耐えられない世帯が現れ、値上げ案に対する大きな反対勢力となってしまうケースが散見されます。

 

まとめ

結局、適切な修繕が行えないマンションは、当然売却も難しくなります。

資産価値を維持目指すマンションにおいては、できるだけ早い段階で修繕積立金を均等積立方式とすることが望ましいということになります。