分譲マンション管理における長期修繕計画について

先般のプレゼンコンテストで発表したのは、この長期修繕計画における「修繕積立金の徴収月額の目安」についてでした。

これをテーマにプレゼンを行ったのは、管理費とともに、毎月徴収される費用であることから、すべての居住者にとって関わりがあり、また長期修繕計画にまつわる業界内での経緯を、できるだけシンプルに養成塾生にも情報共有したいと考えたことによるものです。

「長期修繕計画をどう作るのか?」などはガイドラインもあり、テキストでもそれなりに勉強できると思いますが、現在の業界状態がどのような流れから生じたものなのかまでは伝わっていないような気がしましたので、あくまで私からの観点でしかありませんが、記事としてまとめてみたいと思います。

 

長期修繕計画とは

ここでは分譲マンションにおける長期修繕計画に限定しますが、「適切な時期にその建物を維持していくために必要となる比較的規模の大きい修繕を計画的に行えるようにするための計画」と言えます。

そして、この計画は、月々集める修繕積立金の額を決定するための基礎資料として作成されます。

 

竣工直後の修繕積立金は?

20年以上前、分譲マンションでは、長期修繕計画を策定する義務や作成を促す指針などがなかったため、あまり作成されていませんでした。

また作成されていたとしても、標準化されていなかったことから、内容が適正かどうかを検討することも難しいものでした。

そのため、修繕積立金は、当時は驚くほど適当に設定されており、私がかつて修繕積立金の値上げを行うために総会出席した管理組合では、修繕積立金が月額500円ということもありました。

ただ、この状況は少しずつ改善されています。

 

はっきりとした目安として私が最初に目にしたのは、旧住宅金融公庫が策定していた『旧公庫マンション維持管理基準(平成13年4月2日付け住公規程第21号)』です。

この基準により、竣工後5年未満のマンションでは、旧公庫の基準を満たすためには、戸あたり月額6,000円以上の修繕積立金の徴収が必要となりました。

 

当時、これが業界のデファクトスタンダードだったと思います。

もちろん、これは法定基準ではありませんので、すべてのマンションにおいてこの基準以上の額が徴収されていたわけではありません。

この金額を基準に、開発会社や販売会社の演出しようとするグレード感に応じて1,000円から3,000円程度のプレミアが上乗せされ、竣工直後の修繕積立金が設定されていました。

しかし、この基準には抜け道があり、「修繕積立一時金」などと呼ばれる販売時に一括して徴収される金額を60ヶ月按分で加算できたことから、当初の設定が、月額6,000円に満たないマンションも相当数あったと思います。

適正に計画すれば、一般的には、月額6,000円程度では不足しますので、あとは長期修繕計画上の見積額に合わせて、段階的に値上げする計画とされているはずです。

 

なぜ竣工時の修繕積立金の額は低いのか?

言うまでもなく「販売」のためです。

今では修繕積立金の必要性の認知が高まり、あまりに低額だと不安感を産むため、以前ほどではなくなりましたが、販売上の問題から低く抑えることが一般化しています。

住宅ローンの金額とともに毎月支払う金額は、少なければ少ないほど、販売するターゲット層を広げることができるためです。

また、管理会社としても積立金を高く設定してしまうと、これも月額費用となる管理費を原資として支払われ、自社の売上となる「管理依託費」を高く設定することができません。

 

マンション管理標準指針

旧公庫の基準により、長期修繕計画は20年以上の期間を持って策定されることとなりましたし、月額の積立額も、以前よりは高く設定されるようになりました。

ただ、実際に必要となる額には、まだ不足しています。

そのため、「マンション管理士」の資格創設や「マンション管理業」が法定されることとなった「マンション管理適正化法」の施行に伴い、法整備が行われた結果、平成17年12月に国土交通省で「マンション管理標準指針」が策定されています。

この指針によれば、長期修繕計画は竣工時には30年以上、既築の計画では25年以上の計画とすべきことが定められました。

また、非常にわかりにくい形ながらも、規模に応じた修繕積立金の額の目安も示されました。

しかし、これをもってしても、あくまでガイドラインであることから、義務はなく、また経済の停滞といった環境もあり、修繕積立金の額は上昇していません。

 

漏れている項目はないか?

長期修繕計画を策定していても、その内容がしっかりと精査されていないと有用な計画とは言えません。

特に、竣工時に30年以上としていることから、知る限りにおいて長期修繕計画は30年で作成されています。

しかし、その期間では、築36年程度が修繕サイクルとなっている「建具類の取替え工事」や、3回目の大規模修繕工事に必要と言われている「全面塗膜剥離」などの計画が網羅されていません。

この他にも、「アスファルト舗装の敷き直しなど外構周り修繕」や「一部の設備工事」に見落としが散見されますので、ご注意ください。

 

どれほどの額が必要なのか?

結論から言えば、正確にはわからないのです。

中短期における精度は十分にありますので、長期修繕計画は適正に作成し、その期間は、築36年目から築40年目が網羅される計画にすべきと考えています。

これが目安であることは間違いありません。

しかし、計算することができない物価上昇を無視したとしても、長期的には正確だとは言い切れない問題があります。

 

それは、「実際にその築年に至ったものがない材料や設備がある」という問題です。

昨年、20階建て以上の超高層マンションの大規模修繕工事が業界内で話題になっていました。

これは、人が住んでいる状況で、かつ、このような形状の修繕工事実績がほとんどないことによるものです。

加えて、同様の理由から、機械式駐車場があるマンションでは、その修繕コストが過少に見積もられているケースが散見されます。

しかし、実績がない以上、基準とできる目安がほとんどないことから、一方的な間違いとも言い切ることは難しいと考えています。

 

この問題の他にも、技術の進歩に伴って、高額になるばかりではなく、メンテナンスコストが下がる方向でも建築材料が変化しているという状況もあり、一方的に高くなるというわけでもありません。

したがって、想定計上額があることも踏まえ、個別性を反映した適切な長期修繕計画を作成した上で、技術の進歩や経済状況に合わせた随時見直しが必要となります。

 

まとめ

私見ながら、長期修繕計画の作成には、このような流れと課題があると考えています。

そして、この課題に、単純な解決策はないと思っています。

なぜなら、居住者の方に意識を持ってこの課題に取り組んで頂き、随時見直しを行いながら、適正な計画を保ち続ける必要があると考えるからです。

 

現状、全く問題のない管理組合もあると思います。

しかし、現状把握できていない状態であれば、そこには見えないリスクが潜んでいる可能性が十分にあります。

「年金問題」のように政府に「お任せ」した結果、将来世代にツケ回ししているようなことにならないよう、一度、お住いのマンションの長期修繕計画を、しっかりとご覧になっていただければと考えます。

 

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