管理会社に運営を依存するとどうなるのか?

昨日(2017.3.11)は、管理会社を管理者に選任する管理者型管理が少しずつ広がりを見せていることについて記事にしました。

そして、今日も同じくマンション管理新聞(2017年2月25日、第1031号)の記事からですが、一面は元管理会社社員が管理組合の資産を着服・横領していた事件から、管理会社への丸投げ危険性について書きたいと思います。

 

よくある丸投げへの第一歩は、管理への無関心

このような事態に陥るきっかけは、マンション管理への無関心から始まります。

ただ、心配していたから必ず発見できるというわけでもありません。

しかし、設立時はともかく、大規模修繕のような多額の費用を支出する以外のことに関して、組合員は次第に関心を失っていきます。

その大規模修繕ですら、管理会社はそこから利益を得るために、支出が必要となる「正当な理由」をひねり出してきます。

結果として、建築に関する専門家等がいない限り、組合員は管理組合の運営を管理会社に依存する傾向が強まります。

一般的に問題となるのはは、その費用の妥当性です。

そこを主婦のお財布感覚や一般企業の経費感覚、公的機関の予算主義では、検証することは難しいのです。

結局、その実質ではなく、形式主義に陥ることから、その中身はよく検証されず、反論が難しいという理由から支出されることになります。

政治に似て、わからなかったり、責任が持てなかったりするところから、無関心になってしまうことは、とてもよくわかります。

 

深刻さを増すのは会計・経理への無関心

この問題の根っこには、専門的に学んだ人しかわからないと思われていることにあります。

ただ、ご存知の方であれば、自明のことですが、管理組合の会計や経理はそれほど難しいものではありません。

よほどの規模でもない限り、お小遣い帳にちょっと毛が生えた程度のものに体裁を与えているだけです。

この問題の本質は、経理処理や決済方法への無関心です。

本来、どのような事実があって、その支払いや収入に繋がったのか、しっかりと証拠(伝票や帳票など)を残し、手続きに公正性や客観性を持たせる必要があります。

ところが、ここがないがしろにされるケースが後を絶ちません。

昨日ご紹介した札幌市の調査においては、マンション管理適正化法においてその保有が原則禁止されているキャッシュカードを作成し、しかも一人の人物が、通帳・印鑑・キャッシュカードを保管・管理しているケースが、回答のあった381組合中、2組合で報告されています。

これを管理会社が行うと、管理組合の支払いを代行する会社と、管理費や修繕費など支払いを受ける会社が、同一の管理会社という、自己契約のような状態が生じます。

通常は、ここに理事会や理事長という牽制機能が働くのですが、これを丸々放棄することになります。

複数人数での管理によって、相互牽制体制を構築しているケースならばともかく、ここまでいくと、おそらく形式的ではない、実質的問題(保管してくれる人がいない、関心がある人がいない)があるのでしょう。

これは、認知症などで財産管理に後見人を選任すケースに似ています。

しかし、成年後見制度の場合は、家庭裁判所への報告や監督人の選任などという一定の監視制度があります。

マンション管理組合では、このような法定の制度がなく、内部機関設計のみで対応することになることから、このような監視が効かない事態が発生してしまいます。

 

無関心と企業利益の結合

管理会社への丸投げが起こるのは、こう言った無関心と管理会社にとっての利害が一致することによるものです。

別に管理会社の一挙手一投足を疑って欲しいという話ではありません。

業務や会計の公正さを保つ限度において、相互牽制が効く体制を維持することだけが必要なのです。

管理に関する専門的知識が不足しているのであれば、我々マンション管理士という存在もいます。

もちろん、ここにおいても、専門家だからと理解の丸投げまでしてはいけません。

管理会社と同様、信頼がおけることと業務に対する責任は切り分け、あくまでアドバイスとしてその意見を受けて、管理組合、ひいては理事会として決断を行う必要があります。

なぜなら、理事会役員は、管理組合の総会によって委任された責任があるからです。

上場企業の経営者が、その判断は「コンサルタントがしました」、なんていえるはずがないのと同様に、全く同じではないにしても、理事会役員がその責任において業務は行われるべきものです。

それが難しい事態にまで及んではじめて、管理者型の管理を選択し、専門家や管理会社を選任すべきでしょう。

ただ、管理者型の管理を選択する場合、事例も少なく、まだまだ課題がある制度ですから、しっかりとリスクとコストを比較考量した上で導入されることとお勧めします。

 

まとめ

最悪、第三者の専門家に依頼するのならともなく、無関心と管理会社の利害とを一致させてしまうと、今回の事件のように、管理会社の社員に好きなようにされてしまいます。

一応、管理会社の責任を追求できれば、その被害が補填されることはあります。

しかし、しっかりと管理を行っていなかったのに、その被害や証拠を明確に示すことは可能でしょうか?

全容を解明できず、はっきりしないものは泣き寝入りせざるをえない事態も十分起こりうると考えます。

そのため、管理会社はその社員が行ってしまったことに対する完全な保険とはならないことにもご注意ください。