A Written Oath

湘南藤沢の開業税理士・マンション管理士・社会人大学生のブログです

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マンション管理

管理組合が継続するためには新陳代謝が必要

一昨日から驚くほどの強風で春一番が吹いていますね。

その風はまだ冷たいですが、空と日差しからは春を感じます。

今日の青空

さて先日、近隣に新規オープンしたヤオコーをネタに、私が住む藤沢市の人口に関して、増加率は鈍りつつあるものの居住者の入れ替わりが進んでいる(新陳代謝)が進んでいることについて記事にしました。

ご近所にヤオコーができました

人というか生物に例えると分かりやすいと思うのですが、単細胞などのシンプルな生命体を除き、高度な活動を行う生き物は新陳代謝なしに長生きすることは難しいのです。

分譲マンションは生き物ではなく、建物という物体ですが、その建物は区分所有者という生き物の経済力によって維持・運営されています。

そのため、新陳代謝が進まなければ、建物の老朽化と共に、その所有者の老いも進み、永続を期待できなくなることは、わかりきったことのはずです。

しかし、意外にそのことは普段意識されていません。

この原因には、日本社会自体が、そのような分譲マンションの終焉に直面した事例が少なく、その経験(社会知)が共有化されていないことにあると考えています。

 

人はおおむね過去の体験をもとにしか判断できない

中には聞いてきたようなことをだけをもとに行動できる人がいるかもしれませんが、基本は、自らの経験をもとにしか行動できないのが人間ではないでしょうか?

もちろん、本(私は大好きです)などを通じた疑似体験によって、学ぶことも可能ですが、本だけの知識を頼りに決断することは少ないはずです。

「3軒建てないと満足する家が建てられない」という話が大昔にありましたが、現在の社会情勢では多くの方にとってマンションは、ほぼ「一生に一度の大きな買い物」でしょう。

したがって、複数回の不動産購入経験を持ち、自らの体験をもとに購入判断できることは、かなりのレアケースです。

この人生上の大きな決断を自らの体験(周りの決断事例など)以外で行うことは難しいでしょう。

さらに、不動産価格が高騰する昨今、購入資金の全てを自らまかないきれず、2割以上の方は親からの贈与を受けているとのアンケート結果もあります。

加えて、夫婦それぞれから資金が出ている場合も含めると、その割合はもっと高いはずです。

シンプルな自己の体験だけではない判断が下されると考えると、その判断は保守的(過去の経験に基づくもの)にならざるをえません。

結論、購入判断の多くが、不動産が資産となった時代の体験に基づいて行われています。

 

不動産市場は、大きな転換点を迎えつつあります

しかし、不動産市場は現在、大きな転換点を迎えています。

これは、昨今声高に叫ばれている少子高齢化に伴う人口の縮小によるものです。

加えて、空き家問題もあります。

日本全体として考えると、日本では住宅が有り余っているのです。

この余っている状態にもかかわらず、まだ毎年90万戸(2015年、国土交通省「建築着工統計調査報告書」)程度の家がたち続けています。

この90万戸のうち、約1割が新築の分譲マンションです。

皆さんもご存知の通り、日本の総人口はついに昨年2016年にピークを迎えたといわれています。

実は、核家族化の影響などがあり、人口が減少しているにもかかわらず、まだ少しだけ世帯数が増加しているため、住宅ニーズのピークは少しずれるのですが数年の差であり、誤差の範囲です。

住宅は、突然朽ちてなくなるものではありませんので、解体しなければ、そのまま残ります。

そして、解体はタダではできません。

利用価値のない建物を解体するために費用を出すのは惜しまれます。

さらに、解体して更地してしまうと、住宅の固定資産税が優遇されている措置の影響で、更地の方が、固定資産税が高くなるというおまけ付きです。

特に分譲マンションはRC造やSRC造の建物ですので、簡単には解体できません。

当然、解体費用も高くなります。

 

新陳代謝ができないのであれば、マンションにも終活が必要

私も大前提としては、分譲マンションを長く維持運営し、安心できる住まいづくりのご協力がしたいと思っています。

しかし、マンションの価値が将来ほとんどなくなってしまい、ランニングコストや修繕コストが、住まう価値を上回ってしまう状態となることが高い確度予測されるのであれば、その時には、人生にも終活があるように、マンションにも終活があっても良いのではないかと考えています。

この問題の難しいところは、住み続けたいと考える人には資力がなく、転居すら難しくなってしまうことにあります。

そのため、余力があるうちに、長期的な展望を持ち、そこに備えた体制作りをしておかないと、住み続けたい人には住み続けることが難しいマンションになり、手放したい人には手放すに手放せないマンションになりかねないという危険性があります。

この意味では、以前ご紹介した定期借地権マンションが参考になります。

こちらは期限がくれば、基本転居し、建物は解体する前提となっていますので、選択の余地なく終活が必要となります。

永続を前提としない分譲マンションをどのように考えるか?

 

まとめ

所有者・居住者の新陳代謝ができるのかどうかという視点から、お住まいマンションの将来像について考えていただきたくて記事にしました。

戸建てにも難しい部分はありますが、マンションに比べれば、まだ解体して精算できないわけではありません。

しかし、分譲マンションは、利害関係者が戸建てよりもさらに複雑となり、権利関係を整理するだけでも時間がかかります。

加えて、簡単には解体できないのです。

将来的にはこの問題に対応するための何らかの措置が取られると予想はしているのですが、国の財政の立て直しが迷走している現状を考えると、早い段階で有効な施作を打てるかどうかには疑問があります。

結局、困るのは分譲マンション所有者の皆さんです。

建替えを目指すのか、継続を目指すのか、終活を目指すのか、方向性は違えど一つ屋根の下に暮らすからには、少なくとも、合意形成を図ることができる環境づくり程度は必要なのではないでしょうか?