A Written Oath

湘南藤沢の開業税理士・マンション管理士・社会人大学生のブログです

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マンション管理

高経年マンションにおける専門知識と第三者性の必要

昨日(2018.4.1 4)は、マンション管理士としての業務支援サポートで、管理組合の定期総会に隣席していました。

私自身の顧問契約ではありませんが、業務支援提携している方と管理組合との顧問契約締結に関する業務支援のためです。

結論、全会一致とはいきませんでしたが、賛成多数で決議され、管理組合との1年間の顧問契約が締結されることとなりました。

 

専門家との顧問契約を必要とする理由

総会でのご意見を伺っていて印象的だったのは、顧問契約の必要性に関して、疑問を呈されていた方が「なぜ管理組合の役員だけや管理会社の助けだけでできないのか」をしきりに質問されていたことです。

質疑に答えられていた役員の方からは、集約すれば2点のポイントの必要性を訴えられていました。

専門知識の欠如

一つは、管理組合としての専門知識の欠如です。

管理組合内部において、専門委員会設立による有志の協力も募られたそうですが、1年間の理事会役員任期中に実質的な動きができなかったことなどから、管理組合内部のリソースでは対応が難しいことを説明されていました。

結果として、長期修繕計画の見直しほかの管理組合課題が専門知識の欠如により先延ばしとなってしまっているとのことでした。

第三者性の必要性

反対意見の中には、専門知識によって管理組合を補助するのは管理会社の仕事でもあり、契約業務に重複があるとの主張がありました。

その点に関しても様々なが意見がありましたが、要約すると、管理会社自身が見積もりを提出する中、管理会社に対して管理業務の一環として管理会社以外からの相見積もりの提出を求めることには第三者性がないため、管理会社とは異なる立場の顧問を導入することによって、双方の意見から管理組合が判断できるようになることを理由として挙げられていました。

 

大企業の戦略と中小企業の戦略

顧問契約反対者の方のご意見は、会社が持つリソースだけで競争優位を確保できる大企業の戦略を要望されているのではないかと感じました。

もちろん、管理組合内部のリソースだけで、管理組合が直面する様々な問題・課題に対処できる管理組合もあります。

管理組合の理想としては、そうあるべきとも考えますが、そのためには管理組合運営には専門知識も含めた相当のマンパワーが必要となります。

一部の大規模マンションなどを除き、このような恵まれた環境にある管理組合はそう多くはないのではないでしょうか?

 

また、正直払われたとしても大した額が支払われるわけでは管理組合理事は、マンション所有上での権利・義務である以上、本来的な意味からは異なるかもしれませんが、ある種のボランティア活動といえると考えています。

そのボランティア活動が専門知識を必要とするものでないのであれば、区分所有者同士の理想的な相互協力関係といえると思います。

しかし、専門知識を必要とする活動に関してはどうでしょうか?

その知識を身につけるためには、少なくないお金や時間、労力など様々なコストが支払われているはずです。

専門知識を身につけていらっしゃる方が自発的に協力するのでもない限り、それを持たない方がそれを持つ方にボランティア活動を要求するのは正当な要求といえるでしょうか?

ましてや、今回の管理組合ではその専門知識を持つ方がいらっしゃらない状況でした。

このような場合には、管理組合はその足りないリソースを外部に求め、専門家の導入を検討せざるをえません。

 

他方、反対者のご意見をごもっともと感じる部分もあります。

確かに、一面の事実として、外部者に依頼する分お金という意味において管理組合の負担が増える面があります。

しかし、ここは専門家としての腕の見せどころでもありますが、少額の工事や専門性が高すぎて特定の業者しか実施できないような工事のような例外を除けば、スケールのある工事には、多かれ少なかれコストダウンの余地があります。

もちろん、コストダウン主体となって適切でない修繕となってしまっては本末転倒ですので、コストダウンを主目的として専門家を導入すべきではないと考えます。

このような大企業的運営が難しい管理組合に関しては、大企業的運営ではなく、中小企業が選択するような運営戦略を目指されることが適していると考えます。

 

まとめ

管理組合運営に関して、反対意見を主張される方の一部に、大企業的な理想を主張する方がいらっしゃいます。

間違っているとは言い切れない主張ではあります。

しかし、それを実現するためには前提となる様々なリソースが必要です。

専門家の導入だけが解決法のすべてはありませんし、むしろそれが問題になることもあります。

ただし、理想だけでは現実の問題や課題は解決しません。

結果として、一種の現実逃避である問題の先送りという管理組合の病に囚われてしまうぐらいであれば、専門家の導入をご検討いただくことも一つの選択肢と考えます。