A Written Oath

湘南藤沢の開業税理士・マンション管理士・社会人大学生のブログです

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マンション管理建築・不動産関連管理見直し

「プロフィットファースト」ではなく、「インカムファースト」もあり

昨日(2018.5.2)は、分譲マンション管理組合における長期修繕計画と修繕周期の長期化について記事化しました。

分譲マンションの長期修繕計画と修繕周期について

修繕サイクルを長周期化することによって、修繕コストを削減していく考え方はとても重要です。

しかし、それでもなお欠けていると思われる視点があることから、今日はその点について書きたいと思います。

 

積み上げ計算の長期修繕計画

長期修繕計画は、そのマンションにおいて必要と考えられる修繕工事を全てピックアップし、それぞれの部位や設備機器、附属施設の耐用年数に応じた修繕頻度で工事を実施した場合にかかる費用を積み上げ計算したものです。

ただ、この長期修繕計画も万能ではなく、日本での分譲マンションの歴史が住宅として見れば浅いこともあって実績がない修繕工事に関しては机上計算にしか過ぎず、一般的には25年から30年程度の期間しか見積もりしていないことから、期間外の工事費が計上されていない状態での試算でしかないことなどの課題があります。

分譲マンション管理における長期修繕計画について

しかし、昨日の記事でも書いた通りこの長期修繕計画の計画期間が長期化したことや世間における修繕積立額不足の認知が広まったことにより、分譲マンションにおける修繕積立金の平均額は、相当上昇してきました。

そして、次の段階として、この長期修繕計画の修繕サイクルの見直しが着目されつつあります。

 

確かにコスト削減も重要ですが

利益団体ではない分譲マンションの管理組合にとって、コスト削減は一つの命題です。

しかし、それよりも問題なのは、居住者の世帯構成が大きく変化しない結果としての「高経年化した際の収入不足」です。

修繕積立金とファイナンシャルプランニング

以前にも記事にした通り、分譲マンションが高経年化した際、世帯構成が変化しないと収入ピークを超えた区分所有者に修繕積立金の増額をお願いしなければならなくなります。

裕福な所有者が多い分譲マンションでは問題にならないかもしれませんが、そんなマンションばかりではないはずです。

また修繕積立金は、各所有者からみればコストですが、管理組合からみれば修繕積立金は使う目的が固定化された修繕団体としての収入です。

なんでも早くすればいいというわけでもありませんが、この収入を増やしにくくなるということが、結果として、早く取り組めば安く済む工事の実施を遅らせ、給排水管の全面更新などといった根本問題からの解決への取り組みを遅くし、さらにコスト増を招くという事態への悪循環に繋がっていると感じています。

 

営利企業においてはプロフィット(利益)ですが、管理組合にとってはインカム(収入)

私の知る税理士先生方限定かもしれませんが、最近、『PROFIT FIRST お金を増やす技術――借金が減り、キャッシュリッチな会社に変わる』という書籍が話題です。

企業にとっての計算上の利益は、「売上-費用」として計算しますが、そうではなく「売上-利益=費用」として、売上から逆算して先に利益を確保しようという考え方や手法が勧められている本です。

計算上はどちらも同じ結果になるはずですが、企業経営上は大きな結果の違いに繋がります。

個人事業主として起業した私自身そう感じていますし、多くの中小企業に対してアドバイスをしている税理士の先生方もそう感じておられるようです。

行動経済学の講義でも深く学びましたが、人は不合理な生き物です。

Behavioral Economicsの講義最終日

合理的に行動すると仮定をおいても、そんな風には行動していません。

ただし、この本は営利企業における企業の話です。

管理組合において「利益」というものを仮定することは不可能ではないかもしれませんが、現実的でもないと考えます。

一方で、管理組合においては、「収入」である管理費・修繕積立金を固定して考えることは可能ではないでしょうか?

通常、多少の入れ替わりはありますが、大幅に構成員が変動する管理組合は少数派です。

仮に変動がないものと仮定すれば、居住者における平均的な世帯収入のイメージから拠出できる管理費・修繕積立金の上限額の想定も可能なはずです。

極論かもしれませんが、分譲マンションの管理組合は収入サイドを固定して考え、居住者が負担できる費用の限界から「どのように運営していくのか?」を考えていく方が現実的なアプローチではないかと考えています。

 

まとめ

具体化するには超えなければならないハードルが多々ありますが、区分所有者が固定していると仮定すると、これがもっとも現実的な数字を割り出す目安となるはずです。

数字が一人歩きするだけではいけませんが、管理組合における数字の見える化はもっと進展すべきと考えています。

これは、数字が見えていないことによって行動に繋げられていない面が少なくないと感じているからです。