A Written Oath

湘南藤沢の開業税理士・マンション管理士・社会人大学生のブログです

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マンション管理

マンション管理組合の事業継続性について

今日のテーマは、少しずつ議論されるようになってはきているものの、具体的な解決策が見えていないお話です。

そもそも分譲マンションの管理組合は、区分所有建物さえあれば、放っておいても存続してしまいます。

したがって、「組織が存在する」という意味での事業継続性ではなく、今回は「組織が機能する」という切り口から、マンション管理組合の事業継続性をいうものを考えています。

なお、今回はMBA的にいうと、「BCP(事業継続計画)」的な視点ではなく、「ゴーイングコンサーン(継続企業の前提)」的な視点から記事を書いています。

 

そもそも「事業者」として存在しているのか?

先日記事にしたばかりですが、分譲マンションの管理組合は、そもそも「事業者」として意識されていないように思われます。

マンション管理組合の「事業者」としての性格について

多くの区分所有者にとっては、単純に一つの建物を共有する「共有者の団体」でしかなく、終の棲家を共に運営する「共同事業者」という意識は薄いように感じています。

それを非難したいわけではありません。

近年、新築分譲マンションの購入者の平均年齢は上昇し、ついに40歳を軽く超えてしまったようです。

ただし、平行して晩婚化も進んでいますから、購入者のイメージ像として子育て世代が中心であることは、それほど変わっていないと考えています。

この子育て世代は、仕事・家事・子育てと人生の中でも相当忙しい世代のはずです。

現在、私は分譲マンションに居住はしていませんが、4歳の娘を育てる父親ですので、その忙しさは現在進行形で実体験しています。

そのため、地域のコミュニティをないがしろにして良いとまでは考えていませんが、その重要度がはっきりとしない限り、管理組合運営の優先度が低くなるは、個人的には納得の傾向です。

形式的に参加することはできても、専門外である管理組合運営に関して、積極的に時間を取り、勉強し、主導するなんてことは、よほどのことがない限りレアなケースでしょう。

特に新築直後に大きな問題が起こらなかった場合には、団体としてまとまる機運が高まることもありませんので、形式的には存在していても、その実態として「共同事業を行う組織」として存在しているとはいえないと考えています。

 

コミュニティが活発化する傾向が強いのは外部エリアからの流入が多いケース

あえてレアケースに目を向けると、外部からの流入者が多いマンションには、コミュニティが活発化する傾向が見られると個人的に感じています。

これは、逆のケースとして、地域の住み替え的なポジションのマンションの場合には、住民の多くが近隣になにがしかの人的関係性を持っており、すでに個々で相互支援が可能な繋がりが形成されていることから、あえてマンション内で新たなコミュニティを作ろうという機運になりにくい傾向があるのではないかと考えています。

しかし、外部流入の多いマンションでは、近隣に人的繋がりなどを持たない居住者が増えます。

衝突などが起こり、うまくコミュニティが活性化しないケースもあるとは思いますが、地域のコミュニティが元々ないエリアですので、そこでは相互支援の中で新たなコミュニティが育つ余地が十分にあります。

特に新興住宅地や団地型のマンションにおいて、この傾向が強いと感じています。

 

コミュニティが育たないとどうなるのか?

仮にマンション内コミュニティが育たず、単純な利害関係を超えた相互支援ができないと考えると、どうなるのでしょうか?

実際には、営利企業であるはずの株式会社ですら、単純な利害関係で繋がっているのかと問われれば、同族会社や関連関係・関係会社など、そうではないケースが数多くみられます。

それも含めて利害関係といえばそうかもしれません。

ただ、住環境を移すということは、相当の経済力と行動力、決断力が必要です。

若い時にはなかなか気付けませんが、これらを保持し続けることは、とても大変なことです。

そのため、どこに住んでも問題ないというような人以外、住環境を守るということは多くの人にとって必要なことだと考えます。

また、コミュニティが育たなければ、コミュニティが持つ調整機能が働きません。

一つの建物をできるだけ同じ方向に向かって運営してくことが、とても難しくなります。

一応、コミュニティという面からではなく、経済的な利害関係にのみ着目して、資産価値という共通の目的から組織を運営することも不可能ではありません。

投資型ワンルームマンションやリゾートマンションは、この典型です。

しかし、一部にはこの流れにあらがう動きを見せる管理組合もありますが、これらのマンションの多くは資産価値の減少に伴って、管理費滞納率が上昇し、売却による債権回収も見込めなくなることから、組織の維持が難しくなっていきます。

一般の居住用分譲マンションに関していえば、長期的に考えると、都心の一等地を除き、世の多くのマンションは、その資産としての価値が維持されるかどうかが全くわかりません。

すると、資産価値以外の部分で、共同体として活動できる組織を作らなければ、「建物」と「居住者」双方が高齢化してしまうマンションを維持していくことは、難しいのではないでしょうか?

 

「使い切る」という選択肢もある

もちろん、すべてのマンション管理組合が永続的に存続する必要はありません。

ある意味、建物の使用年限が明確になっている定期借地権マンションのように、使えるだけ住み続け、永続的な維持管理は放棄するという選択肢もないわけではありません。

また、このブログの前段でマンションに対して「終の棲家」という表現を使っていますが、現状はあまりそういう状況になっていないこと(自宅での死亡率は低下傾向にある)も、この話につながっています。

今後は在宅医療の体制が整えられる方向にあることから、現状まま推移するとはいえませんが、病院や老人ホーム、介護施設などで亡くなる方が多いことは一つの事実でもあります。

ただし、その場合には、必要な修繕費が集められなくなるにしたがって、修繕が放置されることとなり、経年劣化に伴って雨水漏水や排水管からの漏水事故の多発などにより住めなくなる住戸が増えることから、基本、そのマンションはスラム化の一途をたどります。

その結果、将来的には、現在ある戸建ての空家問題は、解体費用のかかるマンションが放置されるスラムマンション問題へと発展していくことになるでしょう。

 

管理組合にコミュニティ的機能は必要です

結局のところ、「マンションの将来像(ビジョン)を持つのか?」ということが、マンション管理組合の事業継続性を考えることに繋がると考えます。

その時、事業「的」な視点でマンションの維持運営を考えることと同時に、コミュニティ的な活動も必要です。

誤解を恐れずにいえば、共同体には、「同じ釜のメシを食う」的な何かが必要なのだと感じています。

そうでなければ、一つの建物を共有するという「資産共有者」という立場を超えて、「共同事業者」になっていけるイメージが湧きません。

建前論としては、マンションを買ったからには、強制的に管理組合の組合員ですし、管理組合は建物管理の団体であることから、管理組合のコミュニティ機能に関して一定の議論があることは確かです。

しかし、そんな建前論だけで一つにまとまれるのであれば、現在マンションで起こっているような多くの問題は起こらないはずです。

 

まとめ

以前にも書いた通り、これをどのように実現していくのかという処方箋まで具体的に書ければ良いのですが、そこは私もまだまだ手探りです。

私から見たマンションコミュニティについて

しかし、仕事として、マンション管理に取り組むにあたり、この問題を避けて通ることはできないと感じています。