管理組合理事長に対する職権と業務の過剰集中について

マンション管理に携わるようになって約20年になりますが、私が知る管理組合においては、理事長に職権と業務が過剰に集中する例が多かったように感じています。

もちろん、一概にはいえない部分もありますが、傾向としては、大規模なマンションになるほど、管理組合に意欲的に参加・協力してくださる方が増えることにより、業務の分散が可能でした。

むしろ、大規模マンションを少数の理事会役員だけで運営することは不可能に近いため、そもそも設立時から管理組合の建物管理的機能だけではなく、町内会や自治会的機能も果たす組織として立ち上げ、もしくは、その機能を取り込み、組織としての運営を指向することもあります。

 

標準管理規約では

ただ、マンション標準管理規約では、単棟型に限らず、管理組合理事会の機能のみしかフォローしていません。

その他の特別委員会は組織することができることになってはいますが、具体的な記載はありません。

したがって、一部、あらかじめ特別な必要性が想定できる複合型・大規模団地型のような例外を除けば、当然のことではあるのですが、設立時には、あくまで「標準」としての機能を果たすものでしかありません。

すると、中小規模マンションの管理規約をマンション標準管理規約の通りに作成すると、理事会の機能のみしかフォローされず、必要に応じて特別委員会を組織する形となります。

もちろん、それが単に悪いわけではありません。

しかし、この形式だと、総会決議によって付託された事業を委任された理事会にその役割が集中します。

 

理事会役員の職務

次に、各役員の機能に関して、積極的に理事会役員がその職務を割り振らないと、すべて理事会を開催して決定するか、理事長に一任されるケースが増えます。

管理組合役員の役職としては、理事長、副理事長、理事、会計担当理事、監事の5つが標準管理規約で規定されています。

副理事長は理事長を補佐し、理事長に事故あるときはその職務を代理する職責で、特に理事会で職責を付与しない限り、通常の理事と同じ職務しか果たしていません。

会計担当理事は、管理費等の収納、保管、運用、支出等の会計業務を行うこととされていますが、自主管理のような場合を除き、管理会社に全部委託している管理組合においては、特別な職責を担っていることの方がまれでした。

監事は、管理組合の業務の執行や財産の状況について監査することが職責ですから、理事会役員とともに、業務を執行する立場にありません。

結局のところ、理事会で能動的に職務を割り振らなければ、理事長がその理事としての職責の多くを担うことになります。

すると、管理組合の運営に対して多くの知見、経験があるような一部の例外を除き、理事長は未経験者ですから、管理会社を頼る傾向が強まります。

知識も経験もないのに、管理会社を使うことができるような人は企業においてもよっぽどの職責を担う方だけで、分譲マンションに住まう人の一般的な住民イメージとは、かけ離れています。

これでは、管理会社にイニシアチブを握られてしまうことの方が一般的な流れではないでしょうか?

このほか、事前に総会や理事会で上程されなかった事案・事故などが発生した場合には、理事長が独自に判断しなければ、ならなくなるようなケースも発生しえます。

従来の標準管理規約では、そのような緊急事態を想定したものにはなっていませんでした。

ただ、昨年マンション標準管理規約の改正がありました。

あくまで災害レベルの緊急事態を想定したものではありますが、改正に伴い、コメントとして緊急事態などを想定した対応がフォローされました。

 

この他の対策

具体的には、以前出席したマンションコミュニティ研究会にて、RJC48の應田治彦さんが発表されていた管理組合の法人化による代表理事の複数化などがあります。

確かに、法人化しない管理組合においては理事会の機能や理事長の職権を一時的に委任することや、専門委員会に付託することは可能ですが、直接的に分散化させることはできません。

しかし、法人化すれば、複数の代表理事を選任することにより、分散化や相互牽制機能を持たせることが可能になります。

ただ、法人化は改選のたびに登記費用がかかったり、原則、法人市県民税を負担したりする必要があるなど、コスト的なハードルがあります。

コストや手間を考えると、中小規模のマンションでどこまで分散化を図るべきかは難しいところですが、少なくともこのような選択肢があることぐらいは知っておくべきだと考えています。

 

監事による牽制

理事長への職権の集中に関しては、過剰業務による負担感という問題とともに、理事会を牽制する機能としての監事の役割の重要性が再認識されています。

従来の標準管理規約では、監事に理事会出席義務はありませんでした。

したがって、改正後の標準管理規約をモデルとして管理規約を設定した管理組合は、これから竣工するマンションではありえますが、竣工済みの一般的な分譲マンションの管理規約では、監事に理事会出席義務がないのが普通です。

しかし、今後は改正に則って作成された管理規約を用いる管理組合では、監事は理事会に出席し、意見を述べなければならないことになります。

業務監査を行う必要があるからこそ、このような改正が行われたわけですが、理念はわかるものの営利企業ではない管理組合の組織において、どこまで実効性のあるものにできるかは謎です。

もちろん、このような部分で我々マンション管理士の活躍の余地があるとはいえます。

ただ、すべてのマンションに専門家を配置し、そのフィーを管理組合が負担できるイメージもありませんので、これも中小の管理組合の実情に即した改正とはいいがたいと感じています。

さらにいえば、職責を重くしすぎ、具体的な判例などが出てしまうと、今度は役員や監事に就任する人がいなくなってしまうという問題にも発展しかねません。

理想と現実のバランスをいかにとるのか、その部分では、我々マンション管理士が規約改正などに関し、アドバイスできることがあると考えています。

 

まとめ

管理組合の規約改正に関しては、この切り口からだけでも、このぐらいの論点があります。

そのため、素案検討のための理事会協議や、素案の取りまとめ、総会前の事前説明会などを考えると、けっこうなステップが必要となります。

そして、この作業を行うことは、与えられた規約ではない、独自の規約を持つ作業です。

ただ、一般的な分譲マンションにおいては、まず管理会社に対するお任せ管理を脱することが重要です。

したがって、その次のステップとして、ぜひご検討いただければと考えます。