A Written Oath

湘南藤沢の開業税理士・マンション管理士・社会人大学生のブログです

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マンション管理

マンション標準管理規約(単棟型)改正点のポイント

昨日(2016.3.15)は、改正があったことと、業界内で話題となっていたコミュニティ条項に関することを話題としました。

国土交通省 報道発表資料ページマンション標準管理規約(単棟型)が改正されました
昨日(2016.3.14)、国交省の報道案内として、マンション管理士会よりメール連絡がありました。 今回、「マンション標準管理規約」の...

検索から国土交通省への解説ページにたどり着きにくいのか、昨日はマイナーな話題にもかかわらず、相当数の検索流入がありました。

念のため、直接確認されたい方向けに、国土交通省の「報道発表資料」と「公表リンク先」2つのリンクを貼っておきます。

人によって着目するところが異なると思いますが、今回は「コミュニティ条項」以外の部分で、私が気になったポイントについて解説したいと思います。

 

管理費等の滞納に対する措置

該当する管理規約第60条に「管理組合は、納付すべき金額を納付しない組合員に対し、督促を行うなど、必要な措置を講ずるものとする。」との一項が追加され、コメントをさらにフォローする「別添3」資料として回収措置のフローチャートまで添付されています。

悪化の一途をたどっている管理費滞納問題について、管理組合(理事長)の回収責任を明確化しつつ、その方法にまで踏み込んで解説しています。

それだけこの問題が深刻であり、これはそれに対応して理事長の責務を重くしたものと捉えています。

この他、私の経験上では、「できる」規定であったことから、法的措置にまで及ばない限りにはあまり行われてこなかった遅延損害金請求に関して、「請求しないことについての合理的事情がある場合を除き、請求すべきもの」とされ、より厳しい姿勢で臨むべきことを提示しています。

 

区分所有者が行う工事に対する制限に関する考え方

大幅にコメント部分が追加された上に、コメントをさらに補足する「別添2」資料として公表されました。

従来から専有部分内の修繕工事であっても、好き勝手には工事できないように、事前に書面で届け出た上での承認制となっていました。

しかし、その「修繕等」の範囲は明確ではなく、どこまでが承認が必要な工事なのかははっきりとはわからない部分がありました。

そのため、統一されたルールがないまま、管理組合、管理会社ごとにそれぞれ独自に判断していたはずです(そもそもこの承認申請自体の存在を知らず、勝手に工事をしているケースなどもあるはずですが:苦笑)

ようやく、この不統一に一定の方向性が打ち出されました。

しっかりとルール運用していた管理組合では別段問題ではないと思われます。

ただ、あまりルールが徹底されていなかった管理組合においては、今後経年が進むとともに問題になる可能性がある課題でした。

 

外部の専門家の活用

私はあまり導入推進派ではないのですが、高齢化などによる役員のなり手不足解消の一助として、「マンションの管理の適正化に関する指針」に盛り込まれると共に、規約・コメントにも反映されました。

実際、どれだけ活用されるのかは未知数ですが、基本はコミュニティ活性化の観点からは、管理者を外部者にするべきではないと考えています。

しかし、過去の経験を顧みれば、中には様々な事情からそれが難しくなるマンションがあることも理解できます。

また、個人的には、ある程度の規模がある管理組合では監事による監査が形骸化しがちであるため、監事を外部専門家に委託し、継続性のある第三者チェックが機能する管理組合を目指す方向性はあってもよいのではないかと考えています。

 

駐車場の使用方法

第15条「駐車場の使用」に関して、コメント部分が大幅に追加されました。

先日も私の所有マンションでの駐車場転貸について話題にした申告義務に関して、ここでもコメントでフォローされていました。

駐車場の解約申し入れがありました
先日、賃貸している所有マンションの機械式駐車場について解約申し入れがありました。 所有マンションを購入した経緯については、以...

収益事業に該当するかどうかの判断に関して、国税庁より次の見解が出ていることが示されています。

この他、駐車場附置率が100%でない場合に、その公平性を図るために「定期的な入替え制」が追加されています。

しかし、これを実際にやったことがある方ならわかると思うのですが、小規模なマンションならともかく、大規模なマンションではその実行の難しさはかなり非現実的なレベルになります。

 

災害等の場合の管理組合の意思決定

震災の経験から、災害等の緊急時においては、理事長単独で総会又は理事会の決議によらずに、敷地及び共用部分等の必要な保存行為を行うことができるように改正されました。

また、コメントでは、その決定できる範囲についても例示し、総会や理事会を開催することが困難な状況であれば、その度合いに応じて、かなり柔軟に理事長のみや理事会で決することができることを示しています。

こんな事態が起こって欲しくはありませんが、防災・減災対策としては、ここまで踏み込んだ議論を行い、管理組合としてどのように対処するのかの合意形成を諮っておくことが有用であることは間違いありません。

 

まとめ

改正されたからと言って必ず導入しなければならないということはありませんが、このような改正があったことをご存知いただきたいと考えました。

今まで指針がなく管理規約に反映することが難しかったものが、この改正により検討しやすくなったことは、とても歓迎すべきことだと思っています。