修繕積立金とファイナンシャルプランニング

修繕積立金の積立不足については、先日記事にしました。

その修繕積立金を積み立てるための長期修繕計画の問題点についても以前記事にしています。

分譲マンションにおける長期修繕計画や修繕積立金の段階値上げのプランには、ファイナンシャルプランニングにおけるライフプラン、リタイヤメントプランニングの視点が全く欠けているところに課題があります。

 

 

ライフプランとの乖離

ファイナンシャルプランニングにおけるライフプランでは、相談者の教育資金や住宅購入、リフォーム、買換えなどのライフイベントに対して、必要となる資金を検討し、その資金が必要な時期に適切にキャッシュを準備することができるようにキャッシュフローシミュレーション(資金計画)を行います。

これは、個人であろうと、管理組合であろうと同じことのはずです。

ところが、分譲マンション管理組合の長期修繕計画に関しては、この視点が全く欠けています。

支出を検討してはいますが、その収入(修繕積立金の値上げ)は、それを支払う区分所有者のイメージを全く無視し、段階的に、値上げしていく案になっています。

足りなくなれば、安易に借り入れしてしまうため、これでは長期的な安定経営はできず、財政破綻マンションまっしぐらです。

 

支払うのは個人

機械的に必要だから徴収しますといわれても、いきなり準備できるはずがありませんし、区分所有者個々の計画も崩れます。

支払いを後送りにしたい気持ちも十分わかりますが、現実の支払い義務は人情的ではありません。

マンションを維持して住み続ける前提であれば、工事を後送りすることと違い、借金を後送りにするに近い行為です。

そのため、長期的な支出入を考えながら、傷口が浅いうちにケアしていくことは、とても大切です。

特に、高経年化したマンションで修繕積立金が大幅に値上がりする事態は致命的です。

築30年にもなれば、多少の入れ替わりはあっても、平均年齢は70近くなることが想像できます。

このような状況で、修繕積立金の値上げや建替え論議は可能なのでしょうか?

 

見直しのタイミング

理想は、早ければ早いほど良いのですが、現実としては、なかなかそうは行きません。

正直、一番早いタイミングで第1回目の大規模修繕工事を検討するあたり(築10年〜築12年頃)が一般的だと思われます。

やはり工事の具体的な金額を見ることにより、気づきがあると、ここで住民の意識が向く可能性が低くはありません。

ここで立ちはだかるのは修繕基金です。

新築分譲時に集められたこの基金があると、積立金を多少値上げするだけで、第1回目の大規模修繕工事を乗り越え、かつ、その後20年程度の修繕計画をすることができる場合があります。

すると、次に大幅な値上げ議論が起こるタイミングが2回目の大規模修繕のタイミングにズレ込みます。

しかし、このタイミングだと正直、大幅な修繕積立金の値上げは厳しいといわざるをえません。

なぜなら、新築分譲マンション購入者の平均年齢は、一次取得者(一度目の不動産購入)で39.2歳、二次取得者に至っては、57.9歳だからです(国土交通省「平成27年度住宅市場動向調査」

そして、いろいろな統計資料はありますが、おおむね年収のピークは、50代前半といわれています。

結果、2回目の大規模修繕を築24年目(12年サイクル)と仮定すると、多少の入れ替わりはあるかもしれませんが、その世帯主の平均年齢は64歳あたりになってしまいます。

このタイミングでの値上げは不可能ではないにしても、厳しいことになります。

さらにいえば、よほど恵まれた環境にあるマンションを除き、大きな支出と期間が必要となる建替えなどは議論できても、合意に至ることは不可能に近いでしょう。

その時点では、すでに多くの人がリタイヤメントプランニングを終え、多少の備えはあれど、通常、大きな修正は難しい段階に至っているはずだからです。

積極的に維持修繕を選ぶ管理組合もありますが、選択の余地なく、そうならざるをえない組合も出てきます。

さらにいえば、修繕積立金が十分に集められないと、それすらも厳しくなり、スラム化が危ぶまれる事態となりえます。

 

まとめ

打てる手が全くないわけではありませんが、正直、問題になってからでは手遅れ感が否めません。

自らが住むマンションでどのように過ごして行きたいのかというイメージを共有するためには、できるだけ早い段階から共通認識を作るための努力を始める必要があります。