A Written Oath

湘南藤沢の開業税理士・マンション管理士・社会人大学生のブログです

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マンション管理

管理組合監査における大きなチェックポイント2つ

昨日(2018.5.22)は、この時期が3月決算におけるマンション管理組合の総会シーズンであり、新旧役員交代の時期でもあることから、役員になったら知っておいて欲しいことを記事にしました。

分譲マンション管理組合の役員になったら知っておいて欲しい3つのこと

分譲マンション管理組合の定期総会は、事業年度終了の日から3ヶ月以内におおむね開催されていることから、この時期には総会を控えて、監事による監査も行われています。

マンション管理組合の監査について

今日は、この監事による監査の中でも、特に重要と思われるポイントを記事にしたいと思います。

 

会計監査におけるチェックポイント

以前にも記事にした通り、管理組合監事による監査のチェックリストは、マンション管理会社の業界団体である(一社)マンション管理業協会がそのホームページで公開してくれていますので、監査の概略としては、このチェックリストにしたがって、監査していただければと考えます。

もちろん、監事一人では、書類がどこに保管されているかわからない可能性などもありますので、この監査を実施するときは、事前に管理会社フロント担当者に連絡した上で、このチェックリストにしたがって監査する旨を伝え、管理会社担当者立会いのもと実施してください(フロント担当者は忙しいので嫌がる、もしくは日程が合わない等で拒否するかもしれませんが:苦笑)

しかし、管理会社も専門業者ですので、多少のミスはあったとしても、いまどき致命的なミスをしていることは、あまりないと考えています。

そのため、このチェックは形式的なものになりがちです。

ただし、会計監査でのチェック上、最重要な点として、残高証明と預金通帳の確認に関しては、注意が必要です。

毎年監査をしているにもかかわらず、管理組合理事長や管理会社フロント担当者による使い込みがなくならないのは、この部分のチェックが甘かったことに起因しているケースがほとんどだからです。

信頼しているからと、チェック自体をしていないケースもあるので、そこは論外なのですが、特に注意して欲しいことは、残高証明書による残高確認だけではなく、預貯金の通帳コピー(できれば原本だが、不正防止のため管理会社から持ち出せないケースもあるため)と総勘定元帳の預貯金の動きが一致していることを確認することです。

多くの使い込み事例において、残高証明書を偽造したり、決算の直前にお金を振り込んだりすることによって、残高の辻褄合わせをされていることにより長期間気づかないケースがあるからです。

一応、残高証明と通帳コピー双方が改ざんされるケースも想定できることから、この手法でも完璧に出納状況をチェックできるとまではいえないのですが、そこまでやろうとすると、改ざんはできても色々辻褄の合わないところが出てくるのが普通ですから、長期的に使い込みに気づかないということは避けれるはずです。

 

業務監査におけるチェックポイント

正直、先ほどのチェックリストを使用してチェックしても管理組合監事による業務監査で明確な不正が見つかることは少ないと考えています。

多少、管理会社の業務怠慢などは見つかるかもしれません。

しかし、致命的な業務上の問題点が見つかるかといえばそうではありません。

もし仮に、そのようなことがあったとしても、監事の仕事は不正を正すことではなく、その事実を総会に報告することです。

業務内容に不備が見つかった時は、その事実を報告し、今後そのようなことが起こらないように、総会で問題提起するところまでが監事の仕事です。

ただし、注意して欲しい点が一つあります。

資料がないところに着目して欲しいのです。

私が知るケースにおいてですが、大きな不正が行われている場合、書類を偽造・改ざんする方向よりも、資料を残さないようにする方向で対策されているケースが多かったからです。

具体的にいえば、特に義務化されていない総会議事録以外の「理事会議事録や専門委員会打合せ記録などが保管されていない」、「審議の結果(金額や実施業者など)だけは残っているが、その理由や決定方法などについて触れていない」、「工事完了報告書がない」などです。

世間を騒がせている事例においても「記録がない」という手法で責任追求を逃れる対策が行われましたが、これと全く同じことが管理組合でも密かに起こっているのです。

世間を賑わせている方では、「実は記録がありました」と後日資料が出てくるケースがあとを絶ちませんが、管理組合の事例では、記録を残すのは不正を行なっている本人だったりするので、証拠隠滅は容易ですし、後日資料が出てくることもありません。

そして、証拠がなければ、後から原因究明することは難しいのです。

そのため、必要と思われる資料を残すことがルール化されていないければ、その提言も含め毎期毎期のチェックで必要な資料が残っているかどうかを確認することが大切です。

ただ、勘違いして欲しくないのは、別に犯人探しをすることは監事の仕事ではありません。

他方で、過去にそのような事実があったのであれば、今後そのようなことが起こらないように資料管理を徹底したり、どの程度の資料を残すのかについて総会でコンセンサスを取れるように報告したりすることまでは、監事の仕事ではないでしょうか?

 

まとめ

管理組合の監事は、普段決まった仕事がなく、総会前に決算報告書を見るだけの簡単な仕事と思われているケースが少なくありません。

しかし、改めて考えるまでもなく、不正発見や不適切な業務に対する再発防止といった、けっこう重たい部分を任されている仕事です。

そして、繰り返しになりますが、監事の仕事は、不正を正すことではなく「総会で報告すること」です。