国土交通省「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」について

先日(2018.5.11)、国土交通省より「マンション大規模修繕工事に関する実施調査」が公表されました。

5月12日の朝日新聞一面で報道されたこともあり、マンション管理・修繕業界では、この話題でかなり賑わっています。

この調査の発端は、昨年の国土交通省より注意喚起と相談窓口周知の連絡があったマンション大規模修繕工事の発注等において、施工会社の選定に際して、発注者たる管理組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントの存在です。

このような存在がいることにより、管理組合等によるマンション大規模修繕工事の発注等の適正な実施の参考となるよう、国土交通省が、大規模修繕工事の金額、工事内訳及びその設計コンサルタント業務の実施内容に関する実態調査を初めて実施し、その内容を公表したのです。

国土交通省のアナウンス通り、これほど大規模にマンション大規模修繕工事の実態調査が行われたことはかつてなかったことから、その意味ではとても貴重な調査ではあります。

しかし、一方で少し扱いに困る調査報告でもあります。

 

発表された集計の切り口が少し残念

この調査報告、調査の切り口が、マンション規模(戸数、床面積)、工事金額、工事対象範囲、設計コンサルタント業務量、設計コンサルタントの業務実施期間から集計が行われています。

しかし、残念なことに築年数に関しては、大規模修繕工事の実施回数においてしか集計が行われていません

よく考えていただければ、わかると思うのですが、大規模修繕工事3回目の築37〜45年ぐらいのマンションと、大規模修繕工事1回目の築13〜15年ぐらいのマンションでは、その建築・設備の仕様は全く異なります。

朝日新聞の記事では、工事額の平均が75〜100万円/戸が最多あったことが見出しとなっていたようですが、こんな仕様が異なるマンションの大規模修繕の平均額を出し、世の中の平均がわかったとしても、具体的に住んでいる・所有しているマンションの大規模修繕工事の目安とするには、逆に平均額すぎて参考になりません。

一応、戸数規模別のデータは提示されていますが、そこに加えて、建築・設備の仕様が似通う年代別の平均額も出して欲しいと感じました。

不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」さんでは、戸当たりの大規模修繕工事額について独自の分析をされており、とても参考になると思います。

大規模修繕工事の回数が進むほど工事額が下がる傾向が見られるとの分析結果を出されていますが、築40年前後の5階建程度の団地型がマンションが多い3回目の大規模修繕工事マンションと、昨今のタワーマンションブームの初期世代が含まれる1回目の大規模修繕工事マンションでは、その工事額に差が出て当然です。

 

今回調査でのポイントは「設計コンサルタントの業務量」

今回の調査結果を踏まえ、国土交通省からは、工事に当たって事前に検討した方がよい主なポイントとして、次の3つが指摘されています。

  • 工事内訳に過剰な工事項目・仕様の設定等がないか。
  • 戸あたり、床面積あたりの工事金額が割高となっていないか。
  • 設計コンサルタントの業務量(人・時間)が著しく低く抑えられていないか。特に業務量のウェートの多くを占める工事監理の業務量が低すぎないか。

ただし、今回の調査が全く参考にならないわけではありませんが、前2つに関しては、築年数や建築・設備の仕様が反映されていないデータであることを踏まえて活用する必要があることに注意が必要です。

そうすると、シンプルに活用できると考えられるのは、最後の「設計コンサルタントの業務量」です。

単純に業務量が多ければいいわけではありませんが、国土交通省も指摘の通り、コンサルタントが本来の役割を果たすためには最低限必要な業務量があります。

また、競争入札に勝つために「値段の安い方が選ばれやすい」マンション管理組合の特性を利用し、安くするために業務量を減らしている可能性も排除しなければなりません。

そのためには、設計コンサルタントの能力が十分であるかどうかも加味して判断する必要があります。

 

まとめ

施工会社を監督したり、より良い工事にするために設計コンサルタントを導入するはずですが、それが施工会社と裏で繋がっていては目的を達成できるかは相手の胸先三寸、運しだいになってしまいます。

この点は確かに注意すべきなのですが、さらにこの設計コンサルタントを管理組合がチェックしなければならないとなると、何のための専門家への依頼なのか、さっぱりわからなくなります。

もちろん、信頼関係とはいえど、一定の相互牽制は必要です。

しかし、そもそも裏切られるかもしれないと思っている状態で依頼するのはナンセンスです。

こんなチェックのためのチェックのような対応は無いに越したことはありませんが、やはり自衛のためには管理組合自身が勉強し、一定程度の事前対策をする必要があると考えます。