分譲マンションの管理組合と消費税について
先日、マンション管理組合に対する、法人税法上の取り扱いについて記事を書きました。
今回は予告通り、消費税法上での取扱いについて書きたいと思います。
消費税でもみなし法人
消費税は、別に法人でなくても個人でも税金を支払っています。
しかし、税金を納める義務は、支払った人ではなく、預かった人にある税(間接税)です。
そのため、その税金を納める義務は、消費税を預かった「事業者」にあります。
消費税では、事業者を「個人事業者及び法人」と定義しています。
したがって、法人化していないマンション管理組合は個人事業者ではありませんので、「法人とみなす」ことによって、原則として、消費税を納める義務があることになっているのです。
なお、消費税の納税義務に関しては、税理士試験受験者向けですが、次の記事にしています。
消費税がかかる収入
法人税では収益事業を区分経理することによって、その部分にのみ税金がかかる計算を行いますが、消費税では管理組合の事業全体に対して消費税の計算を行います。
ただし、基本的に消費税を預かっているのは、消費税がかかる「国内において事業として対価を得て行われる資産の譲渡等(非課税取引を除く)」のみです。
通常、管理組合の場合、収益事業による収入以外の管理費・修繕積立金・区分所有者以外の第三者を対象としない各種使用料収入に関しては、営業による対価ではないため、消費税がかかりません。
結果として、その収入の多くを占める管理費等で消費税をほとんど預かっていないことから、収入に対する預かった消費税の割合はそれほど大きくはなく、したがって支払う消費税額は、事業規模からすれば小さくなります。
免除規定があります
管理組合も一般企業と同様に消費税を納める義務が免除される制度の適用があり、その売上げ規模が一定以下の管理組合は、納税義務がありません。
そして、ほとんどの管理組合は、その売上げ規模を超えないと考えられるため、結局は消費税を納めなくて良くなる可能性が高いと考えています。
ただ、その収益事業の規模が非常に大きく、免除を受けられる規模を超えてしまっている場合には、消費税を納める必要があります。
その場合であっても、法人税の申告を行っているはずですから、税理士に依頼せず管理組合自身で申告しているようなレアケースを除き、申告を依頼している税理士が申告必要性の有無を確認してくれているはずです。
そのため、管理組合が消費税の納税義務を心配する必要はほぼないと考えます。
それでも納税義務が生じた場合には
管理組合が消費税を納めることとなった場合には、次のような注意点があります。
預かった消費税のほとんどを納めることになります
消費税の納税額は、預かった消費税から支払った消費税を引くことになって計算されています。
そのため、預かった消費税の全部を納めるわけではないのです。
しかし、国、地方公共団体、これらに準ずるとされる消費税で特別に規定されている法人(管理組合法人はこの法人に該当)及び人格のない社団等には、預かった消費税から差し引くことができる支払った消費税の額を少なく計算する特別な制度があります。
この制度により、収益事業に対応する支払った消費税の一部しか、預かった消費税から控除できません。
申告期限が延長できません
法人税は申告期限を延長できる制度があるのですが、消費税にはその制度がありません。
人格のない社団等は、申告期限が2か月で納付も必要です。
まとめ
通常、よほど大規模なマンションで収益事業を行わない限り消費税を納めることにはならないはずです。
しかし、昨今タワーマンションのような大規模マンションが都心では増加傾向にあります。
そのような大規模マンションで収益事業を実施する際には、消費税の納税義務が生じる可能性が高くなりますので、消費税の納税義務に関して注意が必要です。