長期損害保険契約について
定期総会シーズンに突入することから、定時総会で起こるあるあるの一つ、マンション管理組合における長期保険の付保に関して、記事にしたいと思います。
地震保険を付保している管理組合では長期保険契約が多いはず
損害保険は、長期契約する方が保険料は下がります。
そのため、資金繰りに余裕のない管理組合を除き、長期契約する方が、マンション管理組合は得をするのが基本です。
なぜなら、積立部分がある場合を除きますが、長期の損害保険は中途解約による解約手数料が発生しません。
そのため、解約清算によって損するということが、ほとんどありません。
そして、今年1月に地震保険の料率が改定されました。
改定により、料率が下がった地域もありますが、多くの地域で料率が値上げされました。
そうすると、値上げ前に長期保険にしておけば、昨年までの料率で保険料を最長5年間固定化できます。
したがって、もともと長期保険としていた管理組合は除き、今年の総会において地震保険を長期保険化している管理組合は多いと想定できます。
なお、長期保険を付保する際には、長期化した保険期間中に長期修繕計画上の大きな支出がないかどうかや、給水ポンプ故障などの緊急的な修繕にあてるための費用を残すなどの資金計画が必要ですので、ご注意ください。
しかし、事業計画で事前承認をとっていないケースが散見される
長期保険に関しては、本来は「事業計画」において事前に長期保険を付保することに関して総会承認を得るべき事項です。
管理組合の事業計画は年度ごとに承認を得るものですから、言うまでもなく、長期保険は年度を超えた費用の支出であり、通常の事業計画や予算案では、その支出は予定されていないと考えられます。
したがって、長期保険を付保する場合は、事前に事業計画に盛り込むか、契約前に臨時総会で承認を得ることが原則となります。
ところが、長期損害保険契約に関して、総会承認を事前に得ていないケースが散見されます。
この理由としては、定時総会時に保険料率の改定を見逃し、保険契約更新時に管理会社の保険部門などが気づき、慌てて提案しているケースが多いように感じています。
その結果として、臨時総会を開催する期間も取れず、理事会承認だけで保険付保し、定時総会に至っているようです。
この理由として、前段で書いたことの他、次のようなことがよく説明されます。
・長期契約をする方が管理組合に値下がりする分明らかに有利であること。
・損害保険会社の破綻可能性はありますが、預金保険法(いわゆるペイオフ)により、そのほとんどが保護されること。
臨時総会を開かないまでも丁寧な事前説明は行うべき
確かに、管理組合が明らかに損をしたり、大きなリスクを背負う契約ではないかもしれません。
管理組合として得する面もあることから、ある面では、この機会を見逃すことは損失であるともいえます。
しかし、固いことをいえば、親切心であったとしても委任された事業年度の事業を超えた範囲外の行為が含まれます。
臨時総会を行うまでではなかったとしても、区分所有者には契約前に事前周知し、後日の総会で追認をとりたい旨を説明しておくべきでしょう。
まとめ
長期損害保険を資産計上することすら気づかない管理会社のフロント担当者がいる中で、事前に長期保険契約を事業として計画しておくことは難しいかもしれません。
もし、仮にそうだったとしても、契約前に区分所有者に周知すること程度はできるのではないでしょうか?