分譲マンション大規模修繕の市場規模について
購読しているマンション管理新聞(2017年1月15日、1027号)にて、国土交通省から発表された2016年度上期受注分の建築物リフォーム・リニューアル調査報告に関して、管理組合発注による工事「受注」高が記事になっていました。
かなり過去の話になりましたが、管理会社の営繕担当者であったことから、この辺りは気になります。
単純に考えれば、マンションが増えれば増えるだけ、工事受注高が正比例で伸びていくはずです。
しかし、2008年度からのグラフが記載されていましたが、一直線に受注高が増えているわけではありません。
特に直近の2016年上期(4〜9月)は、6055億円で、前年比で約1.5%の減少となっています。
直近のピークは2013年度上期
2013年度は1兆4,911億円のリフォーム・リニューアル工事を管理組合が発注しています。
2013年度でも特に上期(4〜9月)だけで、8,375億円を売り上げていました。
これは、いうまでもなく、消費税率改定(5%→8%)の影響でしょう。
一般には、2014年4月1日(施行日)から、新税率(8%)が適用されましたが、工事など引き渡しに時間がかかる受発注に関しては、契約日を基準とする特例(経過措置)があり、施行日半年前の2013年10月1日(指定日)までに、契約を締結した場合には、その工事引渡しが施行日を過ぎたとしても、旧税率(5%)が適用されました。
そのため、よくいう消費税の駆け込み需要が、まさにここに影響して、最大の工事受注高となったと考えられます。
大規模修繕工事の検討は年単位
分譲マンションの大規模修繕工事の検討は、その予備調査などを起点に考えると、工事契約までの期間だけでも通常2年程度を見込みます。
もちろん、多少は短縮することはできますし、規模が小さければ、意思統一や検討も短期間で済むこともありますので、常に2年かかるというわけではありません。
規模や検討会議の開催ペースなどにも左右されるとはいえ、よほど小規模なマンションでもない限り1,000万円は超える見積もりとなる工事ですから、その検討には、少なくとも1年半程度の期間はかかるのが普通です。
したがって、これを、消費税などを理由として、前倒しや後送りにすると、その影響は2〜3年にわたって続くという結果は、普通に想像できます。
ましてや、近年は震災やオリンピックの影響といわれる建設工事費の高騰があることから、どうしても実施しなければならない管理組合以外は、工事を避ける傾向は強いでしょう。
そのため、消費税率改定に伴う駆け込み需要の影響ともあいまって、2年以上経過した現在でもその工事需要が回復していないことは、私としては当然の結果と感じています。
そもそも大規模修繕は一律12年サイクルで良いのか?
おおよそ世間の標準となっていると考えられる「長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」他、世のテキストの多くは、RC造建築物の標準的な修繕サイクルを12年としています。
この是非について、技術的な論点から意見したいわけではありません。
ただ、経済的事実として、このサイクルを金科玉条に死守することが難しいという事態が、顕在化しつつあると感じています。
では、一律12年を守れないとして、どのようにすれば良いのでしょうか?
現在、このことに関して具体的なガイドラインはありません。
そのため、この対応や対策に関しては、個々のマンションの事情に応じて、専門家の立場から、個別的なアドバイスが求められているようになってくる(もしくは、既になっている)と考えています。
もちろん、補修しなければ、危険な状態の場合には、予算という制約はありながらも、危険度や必要度に応じた最低限の修繕措置は必要です。
この視点からは、今後、このリフォーム・リニューアル工事の市場規模は、単純増加にはならない可能性があり得ると考えています。
まとめ
基本的には、マンションの増加に伴い、工事の必要性という意味での市場規模は全体として増加し続けると考えています。
しかし、今回挙げた消費税率の改定や工事費高騰だけに限らず、様々な要因から市場はかなり歪んでいると感じていました。
そのため、今後もこの業界・市場の動きを技術面なども含め複合的な視点で注視していきたいと考えています。