フロント担当者から見た業務処理の要領とポイントについて(維持又は修繕に関する企画又は実施の調整)
この連載の第3弾となります。
3つある基幹事務のうちの最後の一つである「本マンション(専有部分を除く。)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整」について、まとめてみたいと思います。
この業務、管理会社の担当者からすれば、大規模修繕他工事受注業務にほかならず、フロント担当者以外に技術系工事部門がいれば、そちらが営業ノルマを持つこともありますが、基本的には、お客様のための工事ではなく、管理会社の売上のための業務となっていると感じています。
営利企業である以上、管理会社サイドでは、長期修繕計画や修繕積立金の積立状況から逆算して売上計画を見込んでおり、管理組合サイドが、管理会社に業務を丸投げするほど、そこに便乗して売上・利益を確保すべく、管理会社は動きます。
そして、会社には当然に事業計画があり、フロント担当者や工事担当者は、自身のノルマクリアなどのため、そうせざるを得なくなっていきます。
工事の受注に関しては、理事会・総会・修繕委員会の各開催が増え、理事会・総会支援業務とかぶる部分が多く、技術的なところは、フロント担当者が、直接携わる部分ではありません。
本日の記事は、注意点のまとめというよりは、ネガティブには書いていないつもりですが、ある意味、私の業界体験に伴う愚痴的記事となります(苦笑)
本マンション(専有部分を除く。)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整
「長期修繕計画の作成」業務が、どの程度、定額依託費の中に含まれているかによって、管理会社としての業務は変わります。
平成17年12月にマンション管理標準指針が出されるまでは、「長期修繕計画の作成」は、5年ごとの見直しであり、特別に調査・診断費用が必要であることから、おおむね定額管理委託業務から外されていました。
しかし、マンション管理に係る法制の見直しが進む中、特別な調査などを要しない「計画の見直し」程度は、定額管理業務に含まれるようになり、次第にフロント担当者の業務へと変化しつつあります。
これは、私が業界に入った20年近く前と異なり、修繕に関する知識が一般化し、技術専門職でないと扱えない部分が相当少なくなってきていることによることと、標準的な方法が確立されてきたことによるものだと考えています。
建築系の工事は、これでも問題は少ないと思いますが、しかし、設備に関してはマンションごとの個別性が強く、また初期計画が長くても通常30年であることから、30年を超えた辺りで検討されるべき設備系修繕が網羅されていないことにより、まだまだフロント担当者単独で扱うには、難しい部分も多いと感じています。
そのためか、見直しが行われるごとに、設備系の修繕がほとんど計上されていない長期修繕計画が散見されます。
従って、フロント担当者は、設備系の修繕に関して、必ず専門職や設備系協力業者さんのバックアップを受けて、長期修繕計画の見直しを行うことが必要です。
ここで問題なのは、管理会社内に設備系専門職スタッフが少ない実情にあります。
これは、大規模修繕などの建築系工事に対して、設備系は手間がかかって儲からない職務だからです。
実際、管理会社で設備系社員を抱えられる規模の会社は少ないはずです。
さらに、私自身、最初の管理会社で設備系(2級ですが、「管工事施工管理技士」を取得しています)も担当することができる技術系社員として育成されましたが、分譲、賃貸、ビル合わせて600棟管理する支店での工事担当は、平日は普通に工事管理ある上に、週末は理事会・総会で、夜中は緊急センターから電話が鳴るというトリプルアタックでした。
20代の若さと勢いだけで、頑張っていた気がします(正直、乗り切れていたとは言えません・・・)
私は工事担当として、ほぼ4年勤務しましたが、このような状況では、社員は続きませんし、なかなか育ちません。
もちろん、勉強にはなりましたが、もう率先してやりたいとは思えません。
今は分業化が進んで、業務をこなせる余地があるかもしれませんが、その分、お役所的業際区分による無責任体質が、弊害として現れがちです。
最後に
思いつくままに書いてみて、全く「まとめ」になりませんでした(苦笑)
あくまで私が体験したものでしかありませんが、管理会社にはこのような傾向があると思っています。
そのため、管理会社に「ノウハウ」や「知識がある」とイメージを持たれている方には、「人によっては」そういうこともありますが、「管理会社」という組織にあるわけではないということをお伝えしたいと考えました。
ただ、「組織」としての強み、「規模」の力、「蓄積された資料」や「人や専門業者、メーカーを動かせる力」など、管理会社をうまく活用する余地は、多々あります。
イメージにお金を払うのではなく、実態に即して、適した使い方をするという考え方が、お互いを救うのではないかと思っています。
そして、管理会社のフロント担当者にとっても、その「立ち位置」を伝えることは、結構、使える考え方ではないでしょうか?