消費税について(小規模事業者に係る納税義務の免除)
昨日は、「納税義務者」の規定でしたが、今日は納税義務の免除の規定である「小規模事業者に係る納税義務の免除」の規定について、まとめてみたいと思います。
この規定は、昨日も書きました消費税を預かっているにもかかわらず、納税義務がないために生じる益税の原因となっている規定の一つです。
小規模事業者に係る納税義務の免除
消費税法第9条の第1項に次の通り規定されています。
事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者については、第五条第一項(納税義務者)の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等につき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
この規定のポイントは、次の2つにまとめられると思います。
・基準期間における課税売上高が1,000万円以下である事業者は、その課税期間中(輸入取引を除く)は消費税を免除する。
・別の規定があったら、この規定は適用されない。(あとから別段の定めがいっぱい出てきます:苦笑)
また、それぞれの用語については次の通りです。なお、「課税期間」については、特例規定が少し複雑なので、とりあえずは原則1年の理解でOKです。
基準期間
消費税法第2条十四号に次の通り規定されています。
基準期間 個人事業者についてはその年の前々年をいい、法人についてはその事業年度の前々事業年度(当該前々事業年度が一年未満である法人については、その事業年度開始の日の二年前の日の前日から同日以後一年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間)をいう。
個人事業者は1月1日から12月31日までの1年(「歴年」といいます)で申告を行うことから「前々年」です。
法人の事業年度ごとに申告を行う必要があり、事業年度は基本1年間なのですが、変更することが可能なこと等のため、例外であるカッコ書きを無視すれば、基本は「前々事業年度」です。
ただし、試験対策としてはその例外部分がポイントとなりますので、理解と暗記が必要になります。
基準期間における課税売上高
消費税法第9条の第2項から第3項に次の通り規定されています。
2 前項に規定する基準期間における課税売上高とは、次の各号に掲げる事業者の区分に応じ当該各号に定める金額をいう。
一 個人事業者及び基準期間が一年である法人 基準期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額(第二十八条第一項に規定する対価の額をいう。以下この項、次条第二項、第十一条第四項及び第十二条の三第一項において同じ。)の合計額から、イに掲げる金額からロに掲げる金額を控除した金額の合計額(以下この項及び第十一条第四項において「売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額」という。)を控除した残額
参照条文も多く長い規定ですね。
また、国税部分のみを対象としているので、地方消費税税部分を除いた「63分の80」という数字が出てきています。
このままではさっぱりわからないと思いますが、ベースは次の通りにまとめられます。
[基準期間が1年である場合]
「国内課税売上高(税抜)」-(「国内売上返還等(税込)」-「国内売上返還等の消費税相当額」)
そして、基準期間が1年でない場合には、これを12ヶ月に換算する規定となっています。
課税資産の譲渡等の対価の額の合計額
課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額を含まないものとする。以下この項及び次項において同じ。)とする。ただし、法人が資産を第四条第四項第二号に規定する役員に譲渡した場合において、その対価の額が当該譲渡の時における当該資産の価額に比し著しく低いときは、その価額に相当する金額をその対価の額とみなす。
まとめ
今日は、特に税理士試験受験を目指す人を読者想定して記事化しました。
今後、消費税に関する記事は、自分自身の復習も兼ねて、税理士試験受験者向けにしていく予定です。
受験予備校では、条文をもう少しコンパクトにまとめた「暗記集」が作られているのですが、試験本番では条文番号をもとに出題されることもあり、全てを覚えられないにしても、ある程度は頭の中で条文と暗記集とをリンクさせておかないと対応できなかったり、動揺したりすることがあります。
そのため、自己満足かもしれませんが、今後も必要に応じて条文をひっぱりつつ、解説していきます。