マンション管理組合の会計について
本日の記事は、私が『活躍できるマンション管理士養成塾』の塾生専用コミュニティサイト掲示板で、情報共有のため投稿したものを、まとめ直したものです。
掲示板投稿時に反響があり、有用だったようですので、ブログ用に少し加工し、記事投稿します。
区分所有法
一般的な企業の法律的な位置付けが「会社法」に求められることに対して、分譲マンション管理組合は「区分所有法」という法律に基づいています。
この区分所有法は、民法の原則である、一つのもの(一棟の建物)には一つの権利(所有権)とする「一物一権主義」の例外です。
全てこの原則通りに処理できないため、民法では複数の所有が存在する場合には、「共有」という考え方で対処しています。
しかし、この「共有」の考え方だと、基本的には建物の一室だけを売買したりすることができないことなど、分譲マンションのような「区分所有(一棟の建物などを独立した区画ごとに処分・収益すること)」を実現するには、不都合が生じます。
そこで、一棟の建物や一団の団地などを区分して所有し、管理するための法律として、この「区分所有法」が制定されました。
分譲マンション管理組合
一般に区分所有法の対象は「分譲マンション」なのですが、法律としては商業ビルなどもこの法律の対象となります。
駅前の再開発や、大規模複合用途建物では、この区分所有法を利用して、住宅部会・商業部会と建物を区切って運営するなど様々な活用が行われているのですが、一般的な話ではありませんので、ここでは分譲マンションの管理組合に焦点を絞って話をしたいと思います。
管理組合の会計
そもそも会計とは、「受託者が委託者に対して、その委託された活動の状況を説明すること」です。
そして、会計は一般に大きく2つに分類されています。
企業会計(私会計)
官庁会計(公会計)
しかし、マンションの管理組合の会計は、このどちらにも当たりません。
マンション管理組合の会計については、長らく明確な基準がなかったのですが、現在、次の2つがその指針になると考えられます。
1)平成15年3月 マンション管理センター「マンション管理組合の財務会計に関する会計基準の考え方と課題の整理」
2)平成20年4月 内閣府公益認定等委員会「公益法人会計基準について」
管理組合会計の会計原則
一般には企業会計原則が基準になると思われます。
企業会計原則には、次の7つの一般原則があり、各原則の詳細は会計学的な話になるため、ここでは割愛します。
企業会計の一般原則
公益法人会計の一般原則
これに対して、公益法人会計基準の一般原則では、企業会計との違いから、4つの一般原則のみ採用しています。
管理組合会計の特有原則
さらに、管理組合特有の原則として、次の2つの特有原則があるとされています。
管理組合の会計原則は、法定ではありません。
あくまで考え方であって、そもそも法定された会計処理の原則自体がないのです。
したがって、管理会社が、どのように会計処理していようとも法律違反ではありません。
先に結論を述べると、私見としては管理規約の見直しがされるタイミングで会計処理につき、規程を制定されることをお勧めします。
そうでないと、管理会社にとって都合の良い会計報告がなされるからです。
もちろん、全ての管理会社が自社に都合よく会計処理するわけではありませんし、報告を受ける居住者にわかりにくい会計報告にもすべきではないと考えます。
しかし、「報告するため」の資料である決算書に、「知るべきことがしっかりと記載されていない」ことは、「本来の目的が達成できていない」ということです。
一度、内容について第三者の専門家の確認を受けるなど、精査してみることは必要ではないでしょうか?
まとめ
多くの皆さんのイメージでは、一般企業と同様の処理をしていると考えられていると思います。
実際には、そこに少なくないギャップが生じています。
企業会計に準じる会計処理がなされている方がわかりやすいと考えますので、基本的には、今回ご紹介したマンション管理センターの報告書に準じる会計処理がなされることをお勧めします。