A Written Oath

湘南藤沢の開業税理士・マンション管理士・社会人大学生のブログです

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マンション管理経理・会計実務

管理組合主導の会計にしたいなら、確認しておきたい3つのこと

管理組合会計ネタの第3弾です。

今回は、管理会社主導にしない会計報告にするため、管理組合として確認しておいた方が良い思われる3つのポイントについて、解説します。

 

会計年度

企業に関しては会社法に規定があり、短縮はできても、1年を超える事業年度(管理組合にいう会計年度、管理組合法人においては事業年度で同じ)を定めることができません。

管理組合には、標準管理規約に「会計年度」という期間(毎年◯◯月◯◯日から翌年◯◯月◯◯日まで)の定めがあり、また、毎年1回は集会(標準管理規約でいう「総会」のこと)を開催しなければならないとの区分所有法の規定(第43条)があります。

 

区分所有法の規定の微妙なところは、1年間という期間の指定ではないことから、正確に1年以内ではなくても、多少の前後はあっても一定時期に年に1回開催していれば、法律違反とはいえないことです。

厳密に適用してしまうと、多少開催月がずれただけで法律違反になってしまうため、このような規定となっています。

なお、管理者が選任されていない管理組合にはそもそも招集義務が生じないため、集会を招集しなくても法律違反にはなりません。

また、標準管理規約において、総会開催期限は、「新会計年度開始以後2ケ月以内」とされています。

 

このため、通常1年を超える会計期間は発生しないと考えることができます。

しかし、現実には、新築時において附則などの例外規定をおき、販売期間が長期にわたることを見越して1年超の会計期間(総会による役員の選任と重要事項説明会を行えば、1年を超える管理業務委託契約を締結することは可能)を定める場合や、決算期の集中回避や適正化法に基づく管理業務委託契約の締結サイクルとの整合性などから、管理会社都合で決算期をずらす場合に、意図せず1年を超える会計年度を設定してしまう場合があります。

このような場合には、総会を年1回以上開催しないケースを総会決議などで決定してしまうと、規約上の違反とはなりませんが、区分所有法の規定に違反することになりますので、必ず1年以内で年度を区切って決算報告をしてから会計年度を変更されることをお勧めします。

 

この他、管理会社によっては、「新会計年度開催以後2ケ月以内」とされている総会開催期限を3ケ月程度に設定しています。

これは管理会社の都合であって、法定のものではありません。

(組合側に事情がある場合は致し方ありませんが、規約の設定を気にせず、勝手に3ヶ月目以降に開催しているケースすらあります・・・)

 

なお、申告期限の延長申請で1ケ月の延長は一応可能ですが、税務上は原則2ケ月以内の申告期限となっていますので、少なくとも申告がある管理組合は2ケ月以内とされることをお勧めします。

 

リースとレンタル

この二つ違いに全く気付かず、運用しているケースが散見されます。

 

<リース>

新品の商品の長期契約で、通常解約精算条項などの存在により事実上の購入・割賦販売に近い契約形態。

 

<レンタル>

レンタル会社の在庫に応じて、期間に合わせた使用が可能になる契約形態。

 

書類上、「リース」と書かれていても、実態はレンタル契約であったり、逆のパターンもありえます。

契約書の存否含め実態の確認が必要です。

会計上は、大きく次の2つの分類が行われています。

 

<ファイナンス・リース取引>

細かい要件規定が別にありますが、その実態がお金を貸し付けて、商品を買わせている取引。

 

<オペレーティング・リース取引>

例外規定があり、一概にはいえませんが、その契約実態が賃貸借契約と考えられるもので、月々の賃借料として支払いをしている取引。

 

横文字でわかりにくいと思われるかもしれませんが、その本質はシンプルで、借入購入なのか、多少条件はあっても途中解約可能な取引なのかによって、ある種の割賦販売として処理するか、通常の賃貸借取引として経費処理するのかで区分されています。

 

そして、もし、その取引実態がファイナンスリース取引であるならば、それは借り入れとして貸借対照表上、表記されるべきなのですが、会計基準がありませんので、これがなされていない管理組合がほとんどです。

もちろん、会計基準が存在しませんので、どのような会計処理がされていようとも違法ではありませんが、「管理組合にとって、マンション財政の実態を正確に把握できるようになっているかどうか?」という視点で考えれば、当然に負債計上されるべきと考えます。

なお、企業会計上は「リース取引に関する会計基準」にその詳細が規定されています。

 

月次会計報告

まず、マンション管理適正化法に定める分別管理方式について、解説します。

重要事項説明を受けていても皆さんがしっかりとは理解していない部分だと考えています。

平成22年度改正によって法定された分別管理方式は、次の3つです。

 

収納口座(規則第87条6項1号)

区分所有者等から徴収された修繕積立金・管理費等を預け入れ、一時的に預貯金として管理するための口座。

口座名義は、管理組合、管理業者のいずれでも可

但し、翌月末日までに管理事務に要した費用を差し引いた残額を、保管口座に移し換えなければならない

 

保管口座(規則第87条6項2号)

区分所有者等から徴収された修繕積立金を預け入れ、または収納口座から管理事務に要した費用を差し引いた残額を移し換えて、これらを預貯金として管理するための口座口座名義は、管理組合でなければならない

 

収納•保管口座(規則第87条6項3号)

区分所有者等から徴収された修繕積立金・管理費等を預け入れ、預貯金として管理するための口座。口座名義は、管理組合でなければならない

 

また、分別管理の手法等として、次の3つの手法があります。

以前の方法との比較も含め、国土交通省の「説明資料」によれば、次の通りです。

 

規則第87条第2項第1号「イ」の方法(資料6頁)

for-accounting-of-condominium-management-association-3-2

 

規則第87条第2項第1号「ロ」の方法(資料7頁)

for-accounting-of-condominium-management-association-3-3

規則第87条第2項第1号「ハ」の方法(資料8頁)

for-accounting-of-condominium-management-association-3-4

 

管理会社からこの資料のコピーをもらって知っているという方もいらっしゃるかもしれませんが、ここからが注意点です。

「規則第87条第5項」の規定の説明は受けられていますでしょうか?

 

for-accounting-of-condominium-management-association-3-5

これは、管理業者に会計の月次報告を義務付ける規定になっています。

理事長経験者の皆さんはこの会計資料を、毎月、翌月の末日までに受け取って(メール等での送信承認を受けている場合は、書面でなくとも良い)いましたでしょうか?

大手の管理会社などで分業実施されている場合を除き、中小の管理会社ではこれを怠る担当者が見受けられます。

 

まとめ

第3弾ということで、少し難しめの話も入れてみました。

得意分野ですので、書き出すとまだまだネタはあるのですが、どんどんマニアックになっていってしまうため、管理組合会計ネタは、今回はこの辺りまでにしておきたいと思います。

 

管理会社のことをいろいろ書きましたが、別に担当者がサボっていると思っているわけではありません。

私の経験上、やりきれないぐらい案件や問題を抱えていることが多いのです。

(できなくても仕方ないという意味ではありません)

担当者に全く責任がないとまでは思っていませんが、本質的にはその責任は契約主体者である管理会社にあるのではないしょうか?