マンションの維持修繕からみた建築系資格について
先日(2016.7.8)、マンション管理業者の団体である(一社)マンション管理業協会の資格である「マンション維持修繕技術者」について記事にしました。
この資格を取得したのは2007年で、もう9年も前になります。
この後、マンション管理業界を2011年に離れ、税理士試験を受験し始めたこともあり、国家資格(後で日商簿記検定2級を受験したことを思い出しました。「国家資格」に限定しておきます)としては、税理士試験以外には受験していません。
建築士には憧れがあります
やはり建築系の資格といえば、一級建築士です。
私がマンション管理業界に入った当初約4年間は修繕工事担当者であったことや、その後もフロント担当と兼任でマンションの修繕に関して調査や見積もりなどを通じて工事にも携わっていたことなどから、今でも建築士には憧れがあります。
しかし、受験資格のうち、学歴制限(経営学部出身で建築系学部出身ではないため、二級建築士から受験が必要)による実務経験年数(二級建築士受験にも建築に関する学歴がないことから7年以上)の長さに圧倒され、建築士受験を目指すことは不可能でないにもして、とても難しい状況でした。
憧れはあっても必要と言えるか
ただ、憧れはありつつも、直ちに必要な資格とまでは思っていませんでした。
それは、建築士の業務が、ごく小規模な建築物を除き、主として建物を新築するために必要な設計・工事監理業務に偏っていることによるものです。
もちろん、維持修繕に詳しい方も中にはいらっしゃいますし、新築現場を経験されている方は、マンションを一からつくる工程を経験していることから、そこには一日以上の長があります。
しかし、一級建築士を取得していることが直ちにマンションの維持修繕に詳しいことには直結しないと考えています。
それぞれに専門分野がある
私がいま目指している税理士でもそうですが、資格を取得したからと言って、その資格が網羅するすべての分野をカバーしているわけではありません。
特に一級建築士は、新築の建築設計・施工管理主体の資格試験です。
もちろん、全くカバーしていないとまでは思っていません。
ただ、一級建築士であることが、直ちにマンションの維持修繕に関して必要な知識・経験を持っていることを意味しないと考えています。
業際による課題もある
この他、建築業界の中には、「建築(意匠・構造)」と「設備(空調・給排水衛生・電気等)」という大きな業際があります。
基本、建築系の技術者は、設備系の工事は行わないのです。
逆に設備系の技術者は、設備工事に付随して多少の内装造作はするものの、足場を立てるような大規模な建築系工事を行うことはまずありません。
それぞれに専門家を呼んでこれればいいのですが、大規模な案件を除き、予算規模その他の問題から、常に専門家を呼ぶことは難しいはずです。
そして、設備系の問題は、小規模のマンションにとって重要な課題である場合が少なくありません。
そうであるにもかかわらず、「建築設備士」という設備系の建築資格があることもあり、一級建築士は主として建築系の技術者なのです。
施工管理技士
建築士以外にも有資格者として名前が挙がる国家資格として「施工管理技士」があります。
特にマンション管理業界では「施工管理技士」の取得が励行される傾向にあります。
これだけが理由ではないかもしれませんが、その理由の一つとして、施工管理技士の資格が「経営事項審査(経審)」の技術力の評点となることに由来していると聴いたことがあります。
この経審とは、本来、公共工事入札に参加する事業者を客観的に数値化するための審査なのですが、会社の経営成績や技術力を比較する上で、民間の工事入札においても活用されています。
そのため、「施工管理技士」資格者を多数抱えることが他社との競争の上で有利に働くことにより、「施工管理技士」資格の取得が推奨されやすい環境にあると考えています。
なお、この資格は、現場施工の管理のための資格であり、特に維持修繕に限って勉強するわけではないため、マンションの維持修繕に直接役に立つとまでは言えません。
ただ、建築系の資格の中では、学歴制限が厳しくなく、建築系学歴以外であっても、1.5倍の実務経験は要求されるだけで受験資格が得られることから、大卒者であれば、2級施工管理技士は、1年半の実務経験で受験することができます。
私が2級の建築(仕上げ)と管工事の施工管理技士資格を取得したのは、この受験資格のハードルを越えることができたことによるものです。
なお、1級は建築系学歴がない場合には大卒者で4年半の実務経験が必要あり、当初の4年間以後は専業で建築工事には携わってこなかったことから、私は受験資格を満たすことができず、1級施工管理技士は受験できていない状況です。
まとめ
マンション管理業界から見た建築業界ではありますが、このような見え方があります。
建築業界に限らず、その分野が広範な範囲を含んでいる場合には、往々にしてこのような業界特有の事情が存在しています。