管理組合を法人化するケースについて
先日から数回に分けて管理組合に対する税金に関して記事を書きました。
管理組合は収益事業(駐車場の外部賃貸や携帯基地局収入など)を行っていない限り原則法人税がかからないのですが、管理組合を法人化すると収益事業を行っていなくても、申請により免除される場合を除いて、税金がかかるようになります。
税金が免除されたとしても、登記費用はかかりますし、財産目録の整備など管理組合としての業務も増えます。
法人化するケースは少ないと考えています
国土交通省の行った平成25年度マンション管理総合調査によれば、調査に回答した2,324管理組合のうち、280が管理組合法人でした。
実に12%もあります。
私が管理会社に在籍していた時の肌感覚からすれば、これは相当多いと感じます。
その理由は、推測でしかありませんが、この調査に回答した管理組合は、相当意識が高く活発な活動をしているところだけが対象となっていると考えています。
具体的な推測理由の一つして挙げられるのは、アンケートに回答した管理組合のうち、48.5%が理事会を月1回以上の頻度で開催していると回答しています。
私の経験上、大規模な管理組合を除き、ほとんどは2か月に1回以下の頻度でしか理事会を開催していません。
そのため、アンケートに回答している管理組合は、平均的な管理組合像とは異なるものになっている可能性があると考えています。
理由の一つは不動産の所有
管理組合が法人化する理由の具体的な理由の一つは、管理組合による不動産の所有です。
具体的には建物(集会室など)やマンション敷地の隣地などを管理組合で所有することが必要となるケースがあります。
この場合には、通常の管理組合のままでは不動産登記ができないため、法人化するしかありません。
特に、マンションコミュニティ研究会代表の廣田信子先生が先進的な事例として挙げられる西京極大門ハイツは、マンション価値の維持向上のため、条例の改正により高さ制限で同規模の再建築ができなくなったことに対する対抗策として、隣地スーパーの店舗整理・売却の動きにあわせて、買い取りを行っています。
理事長負担の分散
こちらの理由は、RJC48の應田治彦さんが自らのマンションでの事例として6月度のマンションコミュニティ研究会での発表の際、お話がありました。
団地型のマンションやタワーマンションなどのような大規模物件では、どうしても理事長に多くの責務が集中します。
その分散化を図る手法として、法人化による代表理事の複数選任を活用しているとのことでした。
また、法人化すると管理組合法人による訴訟が可能になります。
逆に言えば、法人化しないと、理事長が管理組合を代表して訴訟することになり、大変な負荷が理事長一身にかかってしまいます。
このような理事長負担の分散化ははかるため、法人化することもあります。
この他のメリットは考えにくい
全くないとまで言うと語弊がありますが、これら以外に法人化するメリットは少ないと考えます。
過去には、借り入れのために法人化して権利関係を明確化する方が有利な時代もありましたし、銀行預金を法人名義にできることが理事長の個人財産との分別について有利となるような話もありましたが、現在はマンションを取り巻く諸制度がかなり整備され、法人化しなくてもこのようなことが問題になることは聞かれなくなりました。
実際、管理組合運営に関して法人化が活用できるような事例はほとんどないのではないでしょうか?
そのため、せっかく法人化してもメリットが少ないという理由から、数年して解散登記するケースがあるとマンション管理新聞でも記事になっています。
まとめ
特に法人化をお勧めしているわけではありません。
しかし、今回挙げたようなケースに該当する場合には、法人化を有効活用すべきケースがあります。