管理者型のマンション管理が広がっています
少し前のマンション管理新聞(2017年2月25日、第1031号)の記事からですが、札幌市2015年度の「分譲マンション管理実態調査」の調査結果によると、管理者型のマンション管理がより一層進展しているようです。
制度的には色々議論がある手法ですが、現場ではその得難い実務上のメリットが先行して導入に繋がっているようです。
「管理者への管理会社の選任が11.7%」の意味
築25年以上の民間分譲マンション1,184組合にアンケート調査を実施して、回収状況は、381組合(32.2%)とのこと。
また、見出しとした管理者への管理会社の選任11.7%は、この項目に回答のあった265組合中の31組合の回答(11.7%)ということであり、回答した管理組合の属性(どのような管理組合かということ:実需・投資・リゾート等)が見えないため、世間一般に広がっているとまではいえないと考えています。
ただ、アンケートに回答している以上、活発な管理組合運営をしているか、アンケートに協力的な管理会社に配布されたとみることはできます。
なぜなら、運営がしっかりしていない管理組合や、活動が不活発な管理組合では、アンケート項目に的確に回答することができないと考えられるため、このアンケート結果に反映されるとは思えないからです。
しかし、このように限定があると考えた回答であったとしても、前回調査よりも増加しているという事実からすれば、管理会社の管理者選任が進んでいる傾向は伺えます。
実態を正確に知ることは難しいですが、投資型やリゾートの分譲マンションでは、この傾向は強いはずです。
選任が進む理由は実態として管理会社が管理しているから
この調査では、理由までの調査は行われていません。
したがって、この見出しとした理由は、元管理会社社員であった私の私見に過ぎません。
ただ、おそらく間違ってはいないと思います。
理由は、特に投資型のマンションで顕著ですが、「投資」というポジションで購入している区分所有者からですれば、分譲マンション所有は、投資から分配が目的であって、その事業運営に携わることではないからです。
昨日も記事にした通り、投資型ワンルームマンションを主要な管理先とする管理会社に勤務したこともありますが、総会招集通知を配布しても、区分所有者が一人すら現れない定時総会が幾度となくありました。
区分所有法の立法趣旨やマンション標準管理規約が想定している「標準」的なマンションではない管理組合に、そのルールを適用しているわけですから、形式と実態が乖離するのは、当然です。
不動産の所有は「金融投資」ではなく、「事業投資」
現在、REITなどに置いて不動産を投資対象として金融商品化する制度がありますが、昔はありませんでした。
そのため、不動産を対象とした投資に関して、他の手法が使われたことは理解できます。
しかし、不動産所有のメリットを活用するの一つである経費計上による所得の減少は、不動産投資のリスクをその個人が負担していることによるものです。
もちろん、これ以外にも付随するメリット(キャピタルゲインなど)があることから、それだけがメリットというわけではありませんが、そのトータルメリットは、不動産が潜在的に持つリスクの全てを上回っているものでしょうか?
金融商品としての不動産ではなく、「事業」として行うリスクをしっかりと把握できていないことに問題はないのでしょうか?
この問題は、サブリース契約による賃貸アパート経営と同種の問題です。
リスクを事業者に移転していると思っているだけで、実際にはより深い潜在リスクを背負っている可能性があります。
投資型分譲マンションにおける第三者管理は、この「事業」としての建物共用部分運営リスクを、さらに管理会社に費用を払って成り立たせている手法です。
キャッシュフローは黒字かもしれません。
また、そこで赤字が出ても、損益通算すれば、税金は多少取り戻せるかもしれません。
しかし、その不動産事業単体での収支をみた時、その出資に対するリターンはトータルでプラスなのでしょうか?
まとめ
株主が専門経営者を役員として選任し、経営を委任することは理解できます。
出資を限度としてリスクを負い、それを経営の専門家に委託しているだけですので、そのリスクとリターンは、まだ財務会計報告のルールも整っていることから、まだ定量化が可能です。
しかし、投資型分譲マンションの管理組合運営を、管理者に管理会社を選任してまで行うことに、コストメリットはあるのでしょうか?
もう買ってしまった以上、面倒なことは業者に丸投げしたい実情と気持ちはわかります。
ただ、そうだとすると、少なくともその投資型ワンルームマンションは、収益を生み出す資産ではなく、所有に付随する義務とリスクのみの負債と化してはいませんでしょうか?