電気代削減に関する相談を受けました!
分譲マンション管理組合理事の方より、管理会社より紹介された業者からの電気代削減提案について、ご相談を受けました。
まずはメールで資料を頂き、電話で要点のみ回答しましたが、しっかりと内容を伝えるため、理事会役員向け無料勉強会の開催を提案しています。
今回ご相談いただいた内容は、他の管理組合でもよく見受けられる事例であることから、本日のブログ記事としたいと思います。
ちょっと専門用語を並べてしまうことになりますが、できるだけ噛み砕いて説明するよう心がけたいと思います。
管理会社から紹介を受けた会社が提案したプランについて
電気代削減方法として、2点提案しています。
1点目は、「電子ブレーカー」導入とセットで、春より新規受付が停止されるプランとしてご紹介した「おまとめプラン(低圧高負荷契約)」を提案し、基本料金の削減を提案しています。
2点目は、削減効果が高く、投資コストに対して回収期間が短い器具等に絞ったLEDへの交換による電気代削減を提案しています。
これらは一般的な省エネ削減メニューで、これ自体が悪いということではありません。
しかし、次の問題点があり、削減提案としてベストとは言えない可能性があると考えています。
基本料金を下げる電気代削減について
これは、「契約容量を下げること」により、「基本料金を下げる」電気代削減策です。
高圧以上の動力契約は省略し、東京電力の「低圧電力契約」に限定して解説しますと、基本料金を決定するための契約容量の決定方法には、2種類あります。
一つ目は、「負荷設備契約」で、新築時においては、ほぼこの契約になっていると思われます。
一定の計算式によって算定するのですが、ざっくり説明すると、「繋いでいる設備を全部一気に動かしてもブレーカーが落ちないような容量」で契約する方式です。
2つ目は、「主開閉器契約」です。
こちらは、「ブレーカー契約」とも呼ばれ、契約容量の計算方法などについては、東京電力のホームページで、このような資料が公開されています。
これも細いところをざっくり省くと、「一気に全てを使わない」、もしくは「上手な使い方をする」との約束で、ブレーカーを入れて、契約容量を制限し、基本料金を下げる契約です。
どちらが安くなるかといえば、断然、「主開閉器契約」です。
ただ、ここには使用していると「ブレーカーが落ちる」リスクがあります。
そのため新築時から導入していることはまずなく、このリスクを回避するため、実際に建物が建ってから、実際に使っている電気量を測定した上でないと提案されないのです。
さらに、今回の提案では、「おまとめプラン(低圧高負荷契約)」を併用し、「電灯契約」と「低圧電力契約」とを一契約にまとめ、下げた契約容量による「基本料金」とした上に、「おまとめプラン(低圧高負荷契約)」の安い「電力量料金」単価を活用した電気代とする提案となっています。
ご参考までに、「従量電灯」「低圧電力契約」「おまとめプラン(低圧高負荷契約)」の料金プランを、次の通り並べてみました。
なお、イメージ単純化のため、あえて「力率」などは省いています。
また、「電気料金の基本」は、こちらの記事で解説しています。
比較してみた!関東における東京電力新旧電気料金メニュー(前編)
電子ブレーカーによる電気代削減について
みなさんがご存知の一般的なブレーカーは、「バイメタル」という2種類の金属貼り合わせて作った温度感知によるブレーカーです。
定められた容量より多くの電気を使用していると、「バイメタル」が過熱し、一定以上の温度になると反応してブレーカーが落ち、電気が遮断される仕組みになっています。
電子ブレーカーは、この「バイメタル」を利用したブレーカーよりも、電子制御で流れる電流を精密に測定し、日本工業規格(JIS)に定められた範囲を超える電流を流さないことができます。
そのため、「バイメタル」ブレーカーよりも、細かい刻みでブレーカー容量を設定できたり、設定した容量に対してJIS規格で定められている上限一杯まで電気を流すことができたりします。
すると、契約容量を、計算上ギリギリ目一杯まで下げることが可能になるのです。
ただ、この契約容量を設定できる能力、実は、しっかりと調査すると、そこまで目一杯コントロールできなくても、「バイメタル」ブレーカーで、十分メリットが出せる場合があるのです。
もちろん、「電子ブレーカー」導入が、もっとも適切な場合もあります。
しかし、電子ブレーカーの値段は、その中身(オムロン製や三菱電機製、韓国製などいろいろあります)に応じて様々ですが、調査費用なども込みで、30万円から50万円ぐらいで売られているはずです。
電子ブレーカーを導入すれば、電気代削減のメリットが出ること自体はほぼ間違いありませんが、その投資回収コストをしっかりと考慮しないと、もっとも適切な提案であるかどうかの見極めができないのです。
しかも、電子ブレーカーは電子機器ですので、「バイメタル」ブレーカーが40年ぐらいほぼメンテフリーで使えることに対して、10〜15年ぐらいの寿命しかないと言われています。
LEDへの交換による電気代削減について
こちらは、主として「電気使用量を下げること」により、「基本料金」と「電気量料金(燃調調整費・再生可能発電促進賦課金含む)」の双方を削減できます。
LEDは蛍光灯や白熱灯に比べて、はるかに少ない電力しか消費しません。
これにより、必要となる契約容量も小さくなりますし、器具を使用しても、少ない電気で点灯させることができます。
しかも、蛍光灯(定格寿命3,000〜12,000時間)や白熱灯(定格寿命1,000〜2,000時間)よりも、はるかに長寿命(定格寿命40,000時間程度)で、さらには点灯管(「グロー球」とも呼ばれるアレ)も不要です。
したがって、電球代がかからないことに加え、交換手間がなくなり、人の手間が一番高価となる昨今、管理上の手間がかからないことは、ランニングコスト削減にとても大きなメリットがあります。
しかし、今回相談を受けた管理組合に提出された資料によれば、「投資コストに対して回収期間が短い器具等に絞ったLED」しか提案していないとのこと。
現地調査をしていないため、はっきりとは言えませんが、明らかにほとんど使用しない「倉庫内」「管理室内」「各種設備室内」などの照明器具を除けば、ほとんどの照明器具を「LED球」交換又は「LED照明器具」に変更し、使用電気量を下げるべきと考えます。
なぜなら、電気使用料金は、長期的には値上がりする方向にあると思われることから、現在の使用料金単価だけで判断すべきではないと考えるからです。
これは、「太陽光発電の買い取りなどがまだまだ拡大基調にあることから、長期的には再生可能エネルギー発電促進賦課金の値上がりが見込まれること」や「原油価格の値下がりにより現在はマイナス調整となっている燃調調整費も、政治的な不安定な中東諸国が産油国である以上、いつ何時、上昇に転じるかわからないこと」などによります。
追記
原文:一定の計算式によって算定するのですが、ざっくり説明すると、「
→正式には「お客さまのご使用になる電気機器をあらかじめ設定し
原文:しかし、電子ブレーカーの値段は、その中身(オムロン製や三菱電機製、韓国製などいろいろあります)に応じて様々ですが、調査費用なども込みで、30万円から50万円ぐらいで売られているはずです。
→しかし、電子ブレーカーの値段は、事業者によって変わり、調査費用なども込みで、30万円から50万円ぐらいで売られているはずです。(中身(オムロン製や三菱電機製、韓国製などいろいろありますとは、使用する部品のことなので、この表現だと、電子ブレーカーにオムロン製や三菱電機製、韓国製などがあると勘違いされる。)
原文:なぜなら、電気使用料金は、
→電気料金は、自由化で値下がりするのに、「
なぜなら、電気使用「量」に比例する別の料金があり、それは、長期的には値上がりする方向にあると思われることから、「量」を下げるLED化は、そのメリットも織り込むべきで、現在の使用料金単価だけで判断すべきではないと考えるからです。
また、器具交換の必要なLED化は、工事が必要になるわけで、