ちょうど昨年の今日熊本地震の被害に関して記事を書いていました
ちょうど昨年の今日(2016.5.4)、マンション管理新聞の記事から、熊本地震でマンションが受けた被害について書いていました。
そして、先日のマンション管理新聞(2017年4月25日・5月5日合併、第1037号)では、その熊本地震の被害に関して、現時点での復興状況が記事となっていました。
罹災証明書による分譲マンションの被害は全壊19棟ですが
マンション管理新聞の記事によれば、分譲マンションの全壊は19棟でした。
ただし、この被害評価は、昨年9月にご紹介した国土技術総合研究所(国総研)の委員会報告でのRC造建築物の評価(「倒壊・崩壊」10棟)とは異なる基準により認定されています。
もちろん、「分譲マンション」と「RC造建築物」という対象範囲に違いがあります。
また調査範囲(「熊本市でも被害が大きかったエリアを中心に調査された国総研委員会報告」と「熊本市が発行した罹災証明書」)の違いもあるとは思います。
しかし、「分譲マンション」よりも、「RC造建築物(賃貸マンションやビル、公共施設なども含む)」はより大きい母集団であることから、仮に「罹災証明書の全壊」と「日本建築学会の倒壊・崩壊」が同じレベルの被害状況の評価であるとすれば、数字は、後者の数字の方が大きくなるはずです。
ところが、結果が逆転しているということは、この二つの基準は大きく違うものであるということがわかります。
各基準の違いに注意が必要
各基準の評価方法の詳細な違いは、一級建築士など評価をされる方の解説をご参照いただく方がより正確だと考えますので、ここでは割愛しますが、この評価の違いは、各マンションに大きな影響を与えます。
罹災証明書の被害認定
まずマンション管理新聞で記事となった罹災証明書の評価は、公費解体制度や災害救助法に基づく住宅応急修理制度を利用できるかどうかの基準となっており、この評価の違いで自治体から得られる助成の金額や内容が大きく異なってしまいます。
そして、建物解体・処分費用は、RC造建物を再建する場合に大きな負担となりますし、修繕にあたって、共用部分や専有部分の区別なく、一世帯あたり最大57万6千円を限度として修理費用が補助されるかどうかも、当然その負担感が大きく変わります。
したがって、この被害判定は、管理組合の意思決定に大きな影響を与えています。
地震保険の損害認定
次に管理組合の判断に大きな影響を与えるのが、地震保険の損害認定です。
今年の1月から保険料の値上げとともに、地震保険のこの損害認定の区分が、3区分から4区分に変更されています。
しかし、昨年の熊本地震の際には、旧区分の3区分で被害認定が行われていました。
旧区分の損害認定については以前にも少し記事で触れていますが、旧3区分の場合、「全損(100%)」「半損(50%)」「一部損(5%)」でした。
括弧書きの数字を見てもらえば明白ですが、一部損の5%と半損の50%では、保険金額に45%もの差があります。
また、被害が大きく全壊に近い場合、半損の50%と全損の100%には50%の差があります。
保険会社から支払われる保険金額が倍も違うのですが、この損害認定も、管理組合の復興への意思決定に大きな影響は与えます。
なお、現在では、4区分(「全損(100%)」、「大半損(60%)」、「小半損(30%)」、「一部損(5%)」)となり、以前に比べれば、その差は少しマイルドになりましたが、それでも一つ区分が違えば、保険金額が大きく異なります。
被災建築物応急危険度判定
この危険度判定の認定は、今までの被害認定や損害認定とは全く意味が異なりますが、その判定結果によって、その建築物を継続して使用できるかどうかに大きな影響を与えることから、この判定結果も、管理組合に大きな影響を与えます。
この判定は、「地震による二次災害を未然に防止するため」に行われるもので、「危険(赤紙)」、「要注意(黄紙)」、「調査済(緑紙)」の3区分で評価されます。
あくまで応急的なもので、この評価が「危険」と判定されたからといって、前段2つの評価とはなんら関連しません。
しかし、「危険(赤紙)」と判定された場合、建物を継続的に使用することは難しくなります。
まとめ
このように地震被害に対する評価には様々な基準と評価、影響があります。
そのため、この全てを普段から正確に理解するまでの必要は特にないものの、これらが管理組合の復興に大きな影響を与えることを知っておくことは大変重要だと考えています。