熊本地震でマンションが受けた被害について
購読しているマンション管理新聞にて、分譲マンション管理会社の業界団体である(一社)マンション管理業協会が、会員受託物件の被災状況の取りまとめを行っていることを知りました。
今回の地震は震度7という大きな余震の後に本震(マグニチュード7.3)が来るというかつてない形態の地震であり、耐震性が期待されるマンションにおいても想定外の被害を受ける地震だったとの報道から、どれほどの被害だったのかについて詳細報告が知りたいと考え、マンション管理業協会のホームページ上で公表されている調査結果に目を通しました。
大破したマンションは現在の報告では1棟のみ
この調査は分譲マンション管理会社の団体であるマンション管理業協会の会員が受託してる物件のみの集計です。
また、自主管理の物件などは当然含まれていませんし、被災者多数の現状の中、あくまで速報値として一定の目安になると考えました。
母数は、協会が実施している管理受託動向調査の平成27年度九州地区の管理棟数7,610棟を基にしています。
そのうち回答があったのは、7,610棟中の5,973棟であり、78%の回答率となっています。
そして、その内訳は、大破が1棟(0.02%)、中破5棟(0.08%)、小破151棟(2.53%)、軽微53棟(0.89%)、被害なし5,763棟(96.48%)となっています。
これをさらに中心地である熊本県のみに限定すると、回答数が572棟中の294棟(51.39%)で、大破が1棟(0.34%)、中破5棟(1.7%)、小破113棟(38.43%)、軽微37棟(12.58%)、被害なし138棟(46.93%)となります。
熊本県に限定してしまうと、速報値とはいえ、まだ半数ほどしか回答がなく、一般住宅に比べ耐震性が高いと言われるマンションであってもかなりの被害を受けていることがわかります。
参考として、阪神淡路大震災時の被災状況は次の通りでした。
新耐震 大破0.5%、中破1.6%、小破6.7%、軽微39.7%、被害なし51.5%
旧耐震 大破2.8%、中破2.1%、小破7.0%、軽微33.4%、被害なし54.7%
受けた被害の基準や目安について
今回の基準は、保険などで使用されるものや、危険度認定などとは別の日本建築学会によるものです。
5段階で評価されており、「崩壊」、「大破」、「中破」、「小破」、「軽微」の5つです。
現時点の分譲マンションにおける報告では、まだ「崩壊」という「柱・耐力壁が大破壊し、建物全体または建物の一部が崩壊に至ったもの。」という被害報告はないようです。
こうは言っても、各評価については言葉ではなかなか伝わらないと思います。
そこで一つ、被害額の目安をご紹介すると、不動産情報サービス会社である東京カンテイが阪神淡路大震災の事例を基に試算した機能的(住居として住む機能)損失の復旧額として、大破900万円/戸、中破250万円/戸、小破150万円/戸、軽微45万円/戸というものがあり、これによって2008年に首都圏、近畿圏、中部圏の想定被害額を試算しています。
この他にも被災すると、資産(売買上の価値)としての経済的損失が発生し、被害額は更に大きいとされていますが、まずは自らが住む機能を回復させることが最優先だと思いますので、ここでは機能的損失額のみを挙げています。
被災後について
地震は、これだけの経済的被害をマンションに及ぼしますが、戸建て住宅と比べてしまうと、まだ被害は小さいのです。
また、被災すると避難所に集まるイメージがあるかもしれませんが、ほとんどの避難所では被災者全てを収容できるだけの余裕がないのが実情です。
そのため、多くの自治体の被災後対策では、分譲マンションの住民は居住が不可能でなければ、自宅マンションで待機することが期待されています。
そうすると、救援物資が届くまでは、インフラが寸断されていたとしても、マンション内にとどまって生活できる状態を準備しておく必要があることになります。
まとめ
私自身、周りに偉そうに言えるような準備を日頃からしているわけではありませんが、自らの状況に応じた備えをしておくことは必要だと感じています。
いきなり大きなことはできませんが、首都圏直下型地震や東南海地震の発生が予想される中、身近なところからでも少しずつ備えたいと思います。