「マンション管理士」とは?
管理業界出身の私は「マンション管理士」という業界資格試験に合格しています。
目指している「税理士」と対比しながら、マンション管理業界について、まとめてみたいと思います。
マンション管理士
「マンション管理士」という資格は、平成12年12月に議員立法から成立した「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下、「適正化法」)」に規定されている名称独占資格です。
適正化法第2条(定義)に次の通り規定されています。
(前略)登録を受け、マンション管理士の名称を用いて、専門的知識をもって、管理組合の運営その他マンションの管理に関し、管理組合の管理者等又はマンションの区分所有者等の相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うことを業務(他の法律においてその業務を行うことが制限されているものを除く。)とする者をいう。
これに対して「税理士」は、税理士法第1条(税理士の使命)に次のように規定されています。
税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。
また、税理士法第2条(税理士の業務)で、次の独占業務があると規定されています。
税理士は、他人の求めに応じ、租税に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
マンション管理士は名称独占業務ですので、税理士のような独占業務がありません。
したがって、登録して名乗れるだけの資格でしかありません。
もちろん、合格率8.4%(平成26年度試験)という資格ですので、それなりの知識がないと名乗れない資格ではあるとも言えます。
『活躍できるマンション管理士養成塾』に参加していますが、私は登録を更新していないため、名称独占資格である「マンション管理士」を名乗ることできない状態です。
直近の来年1月〜3月開催の登録講習を受講し、再登録したいと考えています。
マンション管理業
適正化法は次のような内容となっており、第二章に規定されるマンショ管理士の資格のほか、第三章で「マンション管理業」という登録制度と、業界側の資格制度として「管理業務主任者」を規定しています。
管理業務委託契約において行うこととなっている「重要事項説明」など、この部分の規定は、「宅地建物取引士(旧:宅地建物取引業務主任者)」の制度を参考しているとは言われており、とてもよく似ています。
第一章 総則
第二章 マンション管理士
第一節 資格
第二節 試験
第三節 登録
第四節 義務等
第三章 マンション管理業
第一節 登録
第二節 管理業務主任者
第三節 業務
第四節 監督
第五節 雑則
第四章 マンション管理適正化推進センター
第五章 マンション管理業者の団体
第六章 雑則
第七章 罰則
このように、一つの法律の中に、「マンション管理士」としての管理組合の補助と、管理組合からの委託を受けて管理事務を行う「マンション管理業」の2つが規定されています。
そして、一定の要件を満たして登録することによって、「マンション管理業」を行うことができるようになります。
また、登録した「マンション管理業者」は、その事務所ごとに「管理業務主任者」を置かなければなりません。
税理士も同様に、「税理士となる資格を有する者」が登録を行わないと「税理士」とはなれません。
そのため、独占業務を行えるようになるためには登録が必要となります。
マンション管理適正化推進センター(マンション管理センター)
適正化法において次のように定められているのが、「マンション管理適正化推進センター」です。
現在、「公益財団法人マンション管理センター(以下、「センター」)」が、国土交通大臣よりその指定を受けています。
国土交通大臣は、管理組合によるマンションの管理の適正化の推進に寄与することを目的とする一般財団法人であって、次条に規定する業務に関し次に掲げる基準に適合すると認められるものを、その申請により、全国に一を限って、マンション管理適正化推進センターとして指定することができる。
そして、業務には次の事項が規定されています。
一 マンションの管理に関する情報及び資料の収集及び整理をし、並びにこれらを管理組合の管理者等その他の関係者に対し提供すること。
二 マンションの管理の適正化に関し、管理組合の管理者等その他の関係者に対し技術的な支援を行うこと。
三 マンションの管理の適正化に関し、管理組合の管理者等その他の関係者に対し講習を行うこと。
四 マンションの管理に関する苦情の処理のために必要な指導及び助言を行うこと。
五 マンションの管理に関する調査及び研究を行うこと。
六 マンションの管理の適正化の推進に資する啓発活動及び広報活動を行うこと。
七 前各号に掲げるもののほか、マンションの管理の適正化の推進に資する業務を行うこと。
この他、「センター」は、適正化法に規定される「指定試験機関」と「指定登録機関」の指定も受けており、適正化法に規定するマンション管理士にかかる事務の全てをこのセンターが行っています。
「税理士」においては、「指定試験機関」部分を「国税審議会」が、「日本税理士会連合会(以下、「連合会」)」が名簿登録を行っています。
ただ、適正化法では、あくまで国土交通大臣が行う登録事務を指定機関に行わせているだけですが、税理士法では名簿自体を「連合会」が備える規定になっていますから、同じことをやっているようでも、位置付けがまったく異なりますね。
マンション管理業者の団体(マンション管理業協会)
適正化法第五章に次の通り規定されており、いわゆる業界団体というものに相当します。
「一般社団法人マンション管理業協会(以下、「協会」)」がその指定法人とされています。
税理士でいえば、税理士法に規定される「税理士会及び日本税理士会連合会」に相当すると思われます。
やはり、苦情の解決などを業務として挙げられている「協会」と、「使命及び職責に鑑み」指導、監督することとなっている「税理士会」では、やっていることは同じようなことだったとしも、位置付けや姿勢などの部分で意義が異なっています。
まとめ
このように法律を規定しても、違反者はいます。
マンション管理業者では、『国土交通省ネガティブ情報検索システム<マンション管理業者>』によりその処分歴などのネガティブ情報が検索可能です。
税理士は、国税庁のホームページ『税理士に対する懲戒処分等』で、その情報が公開されています。
どの業界も適正化を図っていくための独力は必要だと思います。
しかし、独占業務とともに「使命」がある税理士業界と、「マンション管理業」という登録制度と「管理業務主任者」という資格だけに留まらず、管理組合の補助者として「マンション管理士」までが規定されなければ、マンションの管理を適正化できない業界には、大きな違いがあると感じています。