A Written Oath

湘南藤沢の開業税理士・マンション管理士・社会人大学生のブログです

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社会人大学院関連

NTTドコモ事件

先週週末に予習したケースのうちの最後の一つ、この週末に講義が行われるNTTドコモ事件です。

まだ慣れないので「事件」と書くと刑事事件を思い出すため、何やら殺人事件や傷害事件でも起こったように感じます。

結論、このケースは納税者勝訴となったので、NTTドコモは無罪となり、加算税などの罰則は適用されていません。

※キャッチアップ画像は「TAINS(日税連検索データベース)」の検索結果を引用しています。なお、予習記事は、一学生が書くことに過ぎませんので、法令の解釈その他情報の正確性を保証できかねます事をご了承願います。

 

NTTドコモ事件

今はもう懐かしいPHSに関する設備について、少額減価償却資産(10万円未満の資産の一括償却制度)に当たるかどうかが争われました。

NTTドコモは、「エントランス回線」と呼ばれる1つ7万2800円の設備を、個々の「エントランス回線利用権」という権利として、この少額減価償却資産制度を適用し、総額111億5135万8400円の費用を単年度で損金に算入すると申告したのです。

課税当局は、ダメだと否認しました。

電話施設に関する権利は、「電気通信施設利用権」という耐用年数20年の減価償却資産に当たると主張しています。

 

収益を生み出す源泉であるか否か

NTTドコモ側が勝訴したことは先に書きましたので、なぜ最高裁判所が、そう考えたのかがこの訴訟のポイントです。

最高裁判所の判示では、「当該資産が収益を生み出す源泉としての機能を発揮することができる単位を基準にその取得価額を認定すべき」とされています。

その資産1個で収益を生み出せる「機能」を発揮できるかどうかが基準で、この「エントランス回線」には、その機能があると判決しています。

 

でも少し疑問に思う

判決の詳細を読み込んで行くと、確かに1個の設備があれば、通話が可能になり、収益を生み出す可能性があることは間違いないと思えます。

しかし、「減価償却」は、その資産が将来にわたって生み出す利益との対応関係から、その費用を一括で計上せずに、期間配分するという「費用配分の原則」に則った会計処理だったはずです。

理論的には、会計には「経理自由の原則」があり、会計処理する方法は企業サイドがある程度自由に決定できてしまうため、税法では、それに一定の制限をかけています。

そうでないと自分の有利なように好き勝手に経理(会計処理)してしまい、同じ資産を買っても人によって納めるべき税金が変わってしまうという現象が起こり、公平な制度とは言えなくなるからです。

ところが、このケースでは昔は巨額な設備がなければ運営できなかった「電気通信施設利用権」という減価償却資産が技術の進展により、PHSでは、ついに10万円に満たない資産を組み合わせれば実現できる事業となってしまいました。

少額減価償却資産制度は、少額の資産にまで全て減価償却することは事務処理・管理することが大変だから、「企業会計上の重要性の原則を考慮し、課税上、減価償却によって費用配分をするほどの重要性がないものについて、簡便な処理を許容する」という制度のはずです。

この総額111億円も投じられたPHS設備は、減価償却によって費用配分するほどの重要性がないものなのでしょうか?

おそらく、このPHS設備は課税当局が主張した20年とまでいかなくても10年ぐらいは使ったはずです。

最高裁判所が判示した通り、収益を発生させる源泉として機能したのであれば、その費用もその収益に対応すべきと思えてしまいます。

ただ、技術革新が日進月歩の昨今、その費用がいつまで収益に対応するのかはわかりません。

公平性を保つために減価償却に一定の基準を設けることは致し方ないように思えますが、その基準が、鉄筋コンクリート建物の減価償却期間が47年(なんのメンテナンスもなしに47年も使い続けられないし、逆にメンテが適切であれば、100年以上でも使えるはず)だとかは、実態との乖離が著しいと感じてしまいます。

 

まとめ

こんな予習をとりあえず行ってみました。

前半5つのケースは、今晩、見直しをして過不足や修正点の確認などを行う予定です。

そして、いよいよ明日は初講義、とても楽しみです!