マンション管理組合会計の区分経理と分別管理の違いについて
定期総会シーズンであることから、管理会社の見直しを検討している管理組合もあります。
そこで管理会社の入札なども行われるのですが、ここで管理組合役員の方から、管理委託契約における「区分経理」と「分別管理」の違いを正確に理解できていないことに起因すると思われる質問を受けることがあります。
この違いは法律を遵守する上で、プロ同士(管理会社やコンサルタント)は正確に理解しておくべきだと考えますが、適法でありさえすれば、正直、損得の話ではありませんので、それほど神経質になる必要はないと個人的には思っています。
しかし、この件に関して総会などで質疑が出ると、正確な理解に基づかない発言であることがほとんどでした。
そのため、管理会社変更を検討されている管理組合の役員さんや、どうしても気になるという区分所有者の方を想定読者として、本日は記事にしたいと思います。
区分経理
管理組合会計の特有原則である「区分経理の原則」に基づいて行われる会計上の処理のことです。
「管理費会計と修繕積立金会計は、これを区分して経理しなければならないこと」
ここで重要なのは「会計上の処理」であることです。
管理費や使用料を預けておく口座と修繕積立金を積み立てておく口座を分けられている管理組合も散見されますが、これは区分経理ではありません。
区分経理は、あくまで会計上の処理ですので、預金口座を分けなければならない義務はありません。
もちろん、口座を分けて厳密に管理することが悪いわけではありませんが、それを法定の義務のように勘違いされているケースが見受けられます。
もし仮に、その管理組合がその管理費と修繕積立金を厳密に口座ごとに分けて保管していたとしても、それはその管理組合のルールや慣習に基づくものでしかないのです。
分別管理
「分別管理」とだけ銘打つと、証券会社などの分別管理も含んでしまうことから、ここでは、マンション管理適正化法に基づく、「分別管理」のことを意味しています。
その分別管理の方法に関しては、次の3つの方法が規定されています。
・規則第87条第2項第1号「イ」の方法
・規則第87条第2項第1号「ロ」の方法
・規則第87条第2項第1号「ハ」の方法
それぞれの方法についての詳細は、国土交通省の資料に基づいて、次の記事にしていますが、ここで誤解が生じるのは、「収納口座」や「保管口座」の意義に関してです。
マンション管理適正化法の分別管理は、管理組合の財産とその出納を委託されている管理会社の財産とを分別して管理する方法にすぎません。
そのため、管理委託契約書において選択している分別管理の方法によって、「収納口座」の意味は変わります。
しかし、この理解のためには適正化法を知っている必要があることから、実際には、そこまで突っ込んで理解されている方は少数です。
そのため、「収納口座」と聴けば、管理会社名義の口座だと考える人もいれば、管理組合の口座で管理費が預けられている口座だと考える人もいます。
ところが、「収納口座」には、管理組合名義の口座である場合もあれば、管理費と修繕積立金の双方が預けられているケースもあります。
ここで、「説明」は受けていても、「理解してもらっていない」という事態が起こります。
厳密な理解は普段は不要ですが
管理会社を複数転職したことから、様々な手法があることを体験として知っていますが、どの方法が一般的などというものはありません。
適法でさえあれば、どの手法であっても問題はありません。
そのため、平成22年度改正では、誤解を受けやすいネーミングであった「原則方式」などはなくなり、無個性な現在のネーミングに変更されています。
正直、管理会社の専門部署の人間を除き、この全部の手法を正確に理解する必要も全くありません。
しかし、管理会社の入札を行う場合や管理会社の分別管理手法に疑問がある場合などには正確な理解が必要です。
なぜなら、その手法が法律に適合しているかどうかの判断が必要となるからです。
したがって、どうしてもこの部分に関して正確な知識を必要とする場合には、経験豊富なマンション管理士にご相談されることをお勧めします。
まとめ
区分経理はともかく、マンション管理業における分別管理はかなり特殊な知識です。
ただし、適法であって当たり前のことですから、専門家である我々マンション管理士はしっかりと理解しておく必要があると考えます。