会計と税務にもズレがある「永久差異と一時差異」
今日(2018.4.17)は会計・税務の記事を書きたいと思います。
先日(2018.4.13)は、お金と時間のズレに関して書きました。
この記事は、簿記・会計におけるお金と時間のズレについて書いたのですが、本日の記事は、会計と税務のズレについてです。
会計と税務にもズレがある
税金は、簿記・会計で導き出されたその期間の「儲け」に対してかかるものです。
ところが、この会計上の「儲け」と税務上の「儲け」には、ズレがあります。
代表的なズレの一つに交際費があります。
近年は、特例によって交際費も一定のルールに基づいて経費にすることができるのですが、この特例がない時代には、交際費は経費にならず、会計上よりも税務上では「儲け」が大きくなり、その分税金が多くかかりました。
このように会計上と税務上ではズレが生じることがあります。
そのズレを会計では、税効果会計というもので補正しています。
永久差異と一時差異
別に難しい話がしたいわけではありません。
ズレが生じるパターンや理由には様々があるのですが、そこにはズレがあることを知っているのは大切です。
節税はともかく、少なとも知らずに損をしたくはないですよね?
先ほどの交際費が代表的な具体例ですが、税金が多くかかるようなお金の使い方はしたくないはずです。
近年は特例で一定範囲のみ必要経費にできますが、以前はその効果を狙って税務上では交際費は経費にならなかったのです。
逆に「得をするようなズレがあるのか?」と問われれば、それもあります。
これらのズレを活用することによって、税金が増えることを避けようとすることがタックスプランニングと呼ばれる手法です。
ただし、このズレには大きくわけて2つあります。
一つは、一旦ズレたとしても将来的にはそのズレが元に戻る「一時差異」。
もう一つは、一旦ズレると元に戻ることはない「永久差異」です。
税務では永久差異が大きなポイント
一時差異も確かに問題ですし、やり方によっては節税にも活用できます。
しかし、一旦ズレたとしても将来元にもどるのであれば、多くのは場合には、「いつの時点で税金がかかるのか」という違いでしかなく、先に節税されても後でその分税金が増えるのですから、大きな問題にはなりにくいのです。
これが前回にも少し書きました「課税の繰り延べ」と呼ばれるものです。
しかし、永久差異は違います。
先ほどの交際費を例にとれば、一旦、必要経費として儲けから引いてもらえないこととなると、その分の差額が将来戻ってくることはありません。
そう考えると、交際費は使わない方が良いですよね?
逆に、税金が減ってしまうような永久差異は、もう二度と税金を取ることができないような差異ですので、その差額分の「儲け」からは税金を取ることができなくなります。
税務署としては、そこを見逃すわけにはいきません。
したがって、税務署は税金が下がってしまうような永久差異に関しては、とても厳しくチェックします。
そんなパターンがあるのかといわれれば、当然あります。
ただし、税収を確保しないと国の運営が成り立ちませんので、合法的に節税されすぎても困ります。
そのため、毎年の法改正でそのような穴は少しずつ塞がれてしまいます。
行きすぎた節税は損になる場合が多い
世の中には無限といってもいいほど様々なヴァリエーションがあり、それを法律で一律に縛ることがとても難しいことはご理解いただけると思います。
具体例を挙げるまでもなく、税金も犯罪も法律の穴をつくイタチごっこが続いています。
結果として、穴が塞がれるといっても全ての穴を塞ぐことは非常に難しいため、確かにこのようなズレを活用した節税策はあります。
ただし、一般的なパターンはほぼ穴が塞がれているため、節税策を実施しようとすると、その手法はかなり不自然な手法や極端な手法を取るケースが多く、リスクが大きいと感じています。
そのような無理な節税策を実行すると、その分コストがかさんだり、本来の事業に悪影響を及ぼすことがあったりするからです。
税金が下がっても本業の儲けが減っては本末転倒です。
また、この永久差異を生み出さない節税策は、節税といってもお金と時間のズレを利用した一時差異的なものを活用した手法です。
その場合は、将来そのズレは解消され、原則的には将来にその分の税金がかかることになります。
結果、トータルとしてみれば、その手法を活用するために必要となる費用(手数料など)分、損となっているケースが見られます。
まとめ
おいおい具体例を書くことがあるかもしれませんが、総論としてはこう考えています。
節税に対してネガティブに書いていますが、安易な短期的節税策に対して警鐘を鳴らしたいためであって、当然のことながら、しっかりとした税務戦略を否定するつもりはありません。
むしろ、長期的な視点にたった税務戦略や財務戦略があれば、結果として節税策が織り込まれることから、そのような視点からのアドバイスを受けられることを積極的にお勧めします。
なお、もう少し詳しく知りたい方向けにIFRSと国際税務の視点からの本ですが、私の指導教授であった山田先生のご著書を紹介しておきます。