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消費税税務関連

消費税(高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除等の特例)

昨年4月の改正事項ですが、今月末に申告期限を迎える3月末決算法人の申告から適用されるため、ここで記事にしておきたいと思います。

なお、記事を読んでいただければわかりますが、この規定により納税義務者となるのは、翌事業年度(平成29年4月以降の事業年度、すなわち来期)からですので、ご注意ください。

 

高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除等の特例

過去に税理士試験受験での学びをまとめた記事をかなり書きましたが、消費税の納税義務に関わる規定はとても複雑になってしまっています。

税理士試験消費税法関連記事のまとめ

これは、改正されるたびに、イタチごっこのようにその改正事項の抜け道をつく節税手法が横行したからです。

そして、この改正では、次の「第12条の4」が新設されました。

(高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例)

第十二条の四  事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が、第三十七条第一項の規定の適用を受けない課税期間中に国内における高額特定資産(棚卸資産及び調整対象固定資産のうち、その価額が高額なものとして政令で定めるものをいう。以下この条において同じ。)の課税仕入れ又は高額特定資産に該当する課税貨物の保税地域からの引取り(以下この項において「高額特定資産の仕入れ等」という。)を行つた場合(他の者との契約に基づき、又は当該事業者の棚卸資産若しくは調整対象固定資産として自ら建設、製作又は製造(以下この項において「建設等」という。)をした高額特定資産(以下この項において「自己建設高額特定資産」という。)にあつては、当該自己建設高額特定資産の建設等に要した政令で定める費用の額が政令で定める金額以上となつた場合(第二号において「自己建設高額特定資産の仕入れを行つた場合」という。))には、当該高額特定資産の仕入れ等の日(次の各号に掲げる高額特定資産の区分に応じ当該各号に定める日をいう。)の属する課税期間の翌課税期間から当該高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間(自己建設高額特定資産にあつては、当該自己建設高額特定資産の建設等が完了した日の属する課税期間)の初日以後三年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間(その基準期間における課税売上高が千万円を超える課税期間及び第九条第四項の規定による届出書の提出により、又は第九条の二第一項、第十条第二項、第十一条第二項若しくは第四項、第十二条第二項から第四項まで若しくは第六項、第十二条の二第一項若しくは第二項若しくは前条第一項若しくは第三項の規定により消費税を納める義務が免除されないこととなる課税期間を除く。)における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、第九条第一項本文の規定は、適用しない。

 高額特定資産(自己建設高額特定資産を除く。) 当該高額特定資産の仕入れ等に係る第三十条第一項各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日
 自己建設高額特定資産 当該自己建設高額特定資産の仕入れを行つた場合に該当することとなつた日
 前項に規定する高額特定資産の仕入れ等が特例申告書の提出に係る課税貨物の保税地域からの引取りである場合における同項の規定の適用その他同項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

相変わらず、素敵に長い条文ですね。

もう全く読む気がしません。

しかし、過去の記事にも書いた通り、次の通り、括弧書きを飛ばし条文をブロック化すると、かなりわかりやすくなります。

業業者が、

第三十七条第一項の規定の適用を受けない課税期間中に → 簡易課税制度を選択していない課税期間中に

国内における高額特定資産の課税仕入れ

又は

高額特定資産に該当する課税貨物の保税地域からの引取りを行つた場合には、

当該高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の課税期間から

当該高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後三年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては

第九条第一項本文の規定は、 → 免税事業者の規定は

適用しない

仮にその法人が平成28年4月1日に高額特定資産を取得した場合には、下図のように、他の規定(課税売上高が1,000万円以下である場合など)により納税義務が免除される場合であっても、翌事業年度以降は、消費税の納税義務者となります。

具体例

 

特定高額資産の課税仕入れ

ここで重要なのは、「何が特定高額資産の課税仕入れに該当するのか?」です。

これは、消費税法施行令第25条の5に次の通り規定されています。

(高額特定資産の範囲等)

第二十五条の五  法第十二条の四第一項 に規定する政令で定めるものは、次の各号に掲げる棚卸資産及び調整対象固定資産(以下この項において「対象資産」という。)の区分に応じ当該各号に定める金額が千万円以上のものとする。

 対象資産(次号に掲げる自己建設資産に該当するものを除く。) 当該対象資産の一の取引の単位(通常一組又は一式をもつて取引の単位とされるものにあつては、一組又は一式)に係る法第三十条第一項 に規定する課税仕入れに係る支払対価の額の百八分の百に相当する金額、同項 に規定する特定課税仕入れに係る支払対価の額又は保税地域から引き取られる当該対象資産の課税標準である金額
 自己建設資産(対象資産のうち、他の者との契約に基づき、又は事業者の棚卸資産若しくは調整対象固定資産として自ら建設等(法第十二条の四第一項 に規定する建設等をいう。以下この条において同じ。)をしたものをいう。) 当該自己建設資産の建設等に要した法第三十条第一項 に規定する課税仕入れに係る支払対価の額の百八分の百に相当する金額、同項 に規定する特定課税仕入れに係る支払対価の額及び保税地域から引き取られる課税貨物の課税標準である金額(当該自己建設資産の建設等のために要した原材料費及び経費に係るものに限り、当該建設等を行つた事業者が法第九条第一項 本文の規定により消費税を納める義務が免除されることとなる課税期間又は法第三十七条第一項 の規定の適用を受ける課税期間中に国内において行つた課税仕入れ及び保税地域から引き取つた課税貨物に係るものを除く。次項において「仕入れ等に係る支払対価の額」という。)の合計額
 法第十二条の四第一項 に規定する政令で定める費用の額は、同項 に規定する自己建設高額特定資産の建設等に要した仕入れ等に係る支払対価の額の累計額とし、同項 に規定する政令で定める金額は、千万円とする。

細かいところを除いて、ざっくりいってしまえば、1,000万円以上の棚卸資産や調整対象固定資産です。

 

併せて簡易課税制度選択届出書の提出の制限を受けます

消費税の納税義務や調整対象固定資産の制度をご存知の方ならお分かりだと思いますが、併せて簡易課税制度選択届出書の提出の制限も受けます。

中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例(簡易課税制度)

詳しい手法は割愛しますが、そうでなければ、工事業者などは延払基準と簡易課税制度を組み合わせることにより、多額の節税が可能だからです。

 

まとめ

調整対象固定資産に関する規定などは以前からありましたので、実務上大きな影響はないと思います。

ただ、納税義務がないと考えていたタイミングで、実はこの規定の適用を受けるケースだったというのでは目も当てられません。

1,000万円を超えるような大きな仕入れに関して気付かないということはまずないと思いますが、そのような仕入れがあった場合には、この規定が適用される可能性があることにご留意ください。