一口に管理組合といっても色々あります
多くの分譲マンション管理組合が決算迎え、総会開催の準備を進めている時期であることから、今週はそれに備えての記事を書いてきました。
改めていうまでもないことなのかもしれませんが、一口に管理組合といっても、様々な形態のマンションがあり、それぞれに課題や問題も異なります。
世の中にある全てのマンションを網羅することはできませんが、どのようなマンションがあるのかをある程度知っておくこともマンションそれぞれの問題を考える上で、「お役に立つこともあるのでは?」と考え、今日は区分所有者の団体である管理組合やマンションの類型について書きたいと思います。
各定義
定義が色々混じってしまうと混乱すると思いますので、一つずつ解説していきたいと思います。
区分所有法上の定義
区分所有法では、「建物の区分所有」として、第1条で次のように規定されています。
第1条 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。
区分所有法は、1棟の建物を区分所有させることができるようにする法律ですので、別に住戸だけではなく、店舗や事務所、倉庫であっても区分所有することができます。
そのため、住戸以外の店舗や事務所だけで構成される再開発ビルなども含まれます。
適正化法上の定義
区分所有法は、住宅に限らない全ての「区分所有建物」を対象としていますが、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下、「適正化法」)」では、「マンション」を第2条1項1号で、次のように定義し、その範囲を絞り込んでいます。
適正化法にいう「マンション」は、「人の居住の用に供する専有部分があるもの」と限定されています。
ここで一般的なイメージに近いマンションになりました。
ただし、「二以上の区分所有者が存する建物」となっていることから、賃貸マンションは含まれず、分譲マンションだけを「マンション」としています。
そして、「管理組合」は、第2条1項3号で次のように規定されていることから、「人の居住の用に供する専有部分のある建物等の管理を行う区分所有建物の団体や管理組合法人」だけが管理組合とされています。
三 管理組合 マンションの管理を行う区分所有法第三条若しくは第六十五条に規定する団体又は区分所有法第四十七条第一項(区分所有法第六十六条において準用する場合を含む。)に規定する法人をいう。
この定義からすると、長屋的な建物であるタウンハウスやテラスハウスも区分所有建物である場合には、この定義上、マンションに該当し、それを管理する団体も管理組合ということになります。
しかし、以前にも記事にした通り、国土交通省から発表されるマンションストックの数は、「中高層(3階建て以上)・分譲・共同建で、鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート又は鉄骨造の住宅」の戸数であることから、2階建て以下のタウンハウスやテラスハウスは含まれていないことがわかります。
このように、一口で「マンション」、「管理組合」といっても定義を確認しないと、イメージと異なっていることがあることがわかります。
そして、分譲マンションに対して人が持つイメージは様々です。
「子供の頃から大型団地に住んでいた」方と、「戸建てに長らく住んでいた方が初めてタワーマンションを買って住む」方とでは、同じマンションでも全く違うイメージを持っているはずです。
形態の違いから
国土交通省から発表されているマンション標準管理規約は、「単棟型」「団地型」「複合用途型」とマンションの形態の違いにあわせて3種類公表されています。
単棟型は、一般的な住居専用一棟ものの分譲マンションを対象としています。
これに対して、団地型は、住居専用の建物が複数棟ある他、共用の集会棟などが存在するマンションを対象しています。
団地型のマンションでは、住戸しかない団地であったとしても、建て方(壁式PCとRC造など)の違いや、同じ建て方をしていても災害や不等沈下によるダメージの受け方の違いなどで、負担割合が一律で良いのかどうかという問題が起こったりしています。
ましてや、商業施設など用途の違う建物が混在などしている場合には、その商業的価値、修繕・ランニングコストの違いなどから、大きな問題に発展することもあります。
複合用途型は、よくある1階にだけ店舗が入っており、その上階は住戸になっているようなマンション(いわれる「下駄履マンション」)を主な対象としており、大規模な再開発等によるものなどは、この複合用途型を参考としつつも物件ごとに異なる実情を考慮して管理規約を定めることが望まれています。
単棟型や団地型は、よくある一般的な分譲マンションとしての問題が起こりますが、複合用途型は、建物としての構造も複雑で、規模によっては特定建築物定期調査報告や自家用電気工作物点検が必要になるなど、分譲マンションとしての性格を持つ上に、ビル管理の側面も大きくなってきます。
分譲目的の違いから
分譲マンションには、居住用という括りは同じでも、実際に区分所有者が住むことを想定して販売される実需目的のマンションだけではなく、投資用の分譲マンションもあります。
特に首都圏・近畿圏はこの投資用の分譲マンションが多く、2017年の住宅着工統計からすると、東京都区部においては、2割弱程度がこの投資用の分譲マンション(専有面積30㎡未満の住戸を投資用としてカウント)でした。
ワンルームマンション規制などにより一時期よりは減ったとはいえ、ストックとしては相当な規模に達しているものと考えられます。
ワンルームマンションを主として管理する管理会社に勤務していた経験からすると、一般的な分譲マンション管理組合のような活動が行われていないケースがほとんどであったことから、この辺りの実態はあまり解明されているとはいえません。
また、もともと実需向けに販売された分譲マンションであっても、購入後すぐに賃貸に出される分譲マンション(いわゆる「分譲賃貸マンション」)も少なくないことから、分譲マンションにおいても賃貸居住者との間でその住まい方の違いからトラブルに発展するケースが増加する傾向にあると感じています。
私は、所有している分譲マンションを賃貸として貸し出しているので、この分譲賃貸マンションに該当します。
その他にも、リゾート型の分譲マンションもあります。
リゾート型の分譲マンションの問題は、その市場価値に集約されると考えています。
市場価値があれば、その保有コストが問題になることは少ない(不要になれば売れる)のですが、市場価値がなくなってしまうと、売却ができなくなり、手放すことすらできないという問題を引き起こします。
マンションコミュティ研究会の勉強会で、この問題を乗り越えるべく、管理組合が宅建業免許を取得してその専有部分の売買を行った事例の発表がありましたが、大変参考になりました。
ここまでのことはなかなかできないと思いますが、これができないのであれば、そもそもこのような事態に陥らないような対策が必要なはずです。
まとめ
この他にもマンションとしての形体(開放廊下型、スキップフロア、階段室、内部廊下型のタワーマンションなど)の違いなどもありますが、一口にマンションといっても大枠としてはこれぐらいの違いがあります。
これは我々専門家サイドの方が注意すべきことなのかもしれませんが、「マンション」、「管理組合」という言葉一つとってもこれだけ違うわけですから、多数の人が区分所有し、居住するマンションにおいては、そのイメージを統一する自体が一つの難題であることを肝に命じる必要があるように思われます。