マンション管理におけるヴィジョンとミッションについて
昨日(2016.2.8)は、「管理組合運営における経営「的」視点の必要性」について、記事化しました。
この記事中、その必要性に触れた「マンション管理におけるヴィジョンとミッション」について、もう少し踏み込んで、その中身を書きたいと思います。
ヴィジョンとは
英語そのままに訳せば、「将来像」や「未来像」となります。
企業経営においては、「営利企業としての利益を上げつつ、どのような方法で、どのように社会に貢献するのか?」というヴィジョンが一般的だと思いますが、分譲マンション管理組合においてはどうでしょうか?
ある意味、管理組合の目的を規定している管理規約
分譲マンションの管理組合において、企業における定款のような役割を果たしているのが、管理規約です。
この管理規約については、国土交通省から『マンション標準管理規約』が公表されています。
細部については、分譲会社や管理会社ごとにアレンジされており、完全統一されているわけではありませんが、事実上のデファクトスタンダードです。
この標準管理規約では、各種法令と同様に、第1条で管理規約の目的を次のように規定しています。
この規約は、○○マンションの管理又は使用に関する事項等について定めることにより、区分所有者の共同の利益を増進し、良好な住環境を 確保することを目的とする。
しかし、この目的、「標準」として定めていますので、良くも悪くも、とても曖昧です。
どのようなことが「共同の利益を増進」するのでしょうか?
また、「良好な住環境の確保」とは、どのようなものであるのかがわかりません。
管理組合におけるヴィジョンとは、これらを明確化したものと言えると思います。
明確なヴィジョンを持っている人はまずいない
企業経営においてすら、起業スタート段階では、お金を稼げればいいと思っていても、それをどのような方法で、どのように具体的に実現するのかを理路整然と考えている人なんて、まずいません。
事業計画を作らないと、金融機関から融資を受けられないから、書類を作るついでに考える人が多いのではないでしょうか?(笑)
分譲マンションを購入する段階においても、「賃貸ではなく、持ち家にしたい」という目的を達成したいとの想いはあっても、購入後の管理組合運営の将来像を考える人は、まずいないと思います。
実際に住むまでは、どんな人が住んでいるのかもわかりませんし、どのように実現できるのかもわからないはずです。
実際に走りながら考えても問題ない
とりあえず始めてみてから考えても遅くはないと思っています。
起業でもそうですし、このブログにしても、物事のほとんどは走らせながら磨き上げていくことによって、形になっていくのではないでしょうか?
最初から、立派で、大層なヴィジョンである必要もない
最初から意気込みだけあっても空回りしますし、実際のところ、私は子供をもって初めて、「地域」や「防災」が意識できるようになったと思っています。
管理組合の運営も、最初はわからないことだらけで、調べながら、輪番役員を体験しつつ、覚えるはずです。
ただ、はっきりと言えるのは、「幸せになる」ための一環として、マンションという持ち家を選択したはずです。
管理組合のヴィジョンとは、そのつもりが当初あったかどうかはともかく、「共同住宅を購入した人々を相互に幸せにするために、どのようなマンションにしていきたいのか?」を明確化していくことだと考えています。
ミッションとは
先日もご紹介したピーター・ドラッカーの『非営利組織の経営』では、ミッションを「使命」と訳しています。
分譲マンションにおいては、「共同住宅を購入した人々を相互に幸せにするために、どのようなマンションにしていきたいのか?」という明確されたヴィジョンを「管理組合がそのミッションを果たすためにどのような役割を担うのか?」ということになると考えています。
放置することも一つのミッションかもしれません
マンション入居当初は、皆さん忙しくもありますし、共同の目標を達成することよりは、むしろ管理会社に恙無く管理運営を行ってもらって、何も起こらない組織であることが管理組合のミッションになっているのかもしれません。
おおっぴらには言えないことかもしれませんが、実際のところそうではないでしょうか?
ある意味、できるだけ安く丸投げできれば、それでいいのかもしれません。
しかし、これは課題を深刻化させることはあっても、解決することは決してありません。
ただ、問題が発生してからでは遅いこともある
この辺りは、会社経営に似て、会計・経理を安く丸投げしていることによって起こる弊害と同様だと考えていますが、問題が深刻化し、手遅れになるケースがあります。
企業経営においては、倒産や破産ですが、マンション管理においては、「安心・安全」のために購入したはずの持ち家が、「不安・重荷」になる不幸せ生活になるという流れでしょうか?
もちろん、突然そんな状態になるわけではなく、人によりその捉え方が一律ではないもののため、本当に緩慢に起こっていきます。
実際のところ、労力に対して成果が見合うのかどうか、まったくわからない部分もあり、脅すようなアプローチだけで話したいわけではありませんが、「安全で安心できる幸せな共同生活」を実現したいと考えた場合には、避けて通れない問題だと考えています。
具体的な行動目標であるべき
課題に直面することにより、管理組合において、ヴィジョンを共有化でき、ミッションを策定できる段階に至れたのであれば、そのミッションは具体的な行動目標であるべきだと考えています。
管理規約にあるような「共同の利益」とか「良好な住環境」とかでは、具体的ではなく、達成のために何をすればいいのかが、明確にはわからないからです。
自らのマンションにおける「幸せ」「共同の利益」「良好な住環境」とは何でしょうか?
それは「安心」や「安全」を実現できることでしょうか?
それはどのように達成されるべきなのでしょうか?
そして、これらを経営的な視点で数値化できると、より良いのではないでしょうか?
短期的な目標達成も大切
ヴィジョンとして大きな目標を掲げることも大事ですが、同時に、達成できる短期的な目標を一つずつしっかりと達成していくことも大切です。
これは、一つ一つの目標を共同で達成していくことによって、組織の連帯を生み出すからです。
そして、それは単発ではなく、断続的に、定期的に行われれば、より望ましい結果につながると考えています。
まとめ
このヴィジョンやミッションを策定する作業は、単独で起業する起業家ですら、なかなか形にすることが難しい作業です。
分譲マンションにおいて、「居住」、「賃貸」、「空き家」などと利害関係が複雑化する中で、これらをまとめていくのは、さらに難しい作業になります。
そのため、私はマンション管理士という立場からの関わりによって、管理組合が「これらを明確化するプロセス」や「具体的な行動目標を達成」の一助となれるのではないかと考え、起業しました。
以前にも記事化したように、特に小規模マンションにおいては、この問題はさらに深刻だと考えています。
まずは知っていただくことが必要と考えますので、このブログによる情報発信を続けていきたいと思います。