課税売上割合が著しく変動した場合の調整対象固定資産に関する仕入れに係る消費税額の調整

本日は、「控除の特例」ではなく、条文の流れにそって「仕入れに係る消費税額の控除の調整」の一つである「課税売上割合が著しく変動した場合」について、まとめてみたいと思います。

 

この規定に関しては、試験対策としては、時間不足で最後まで計算できないことも多いため、合否への影響は意見が分かれるところだと思います。

ただ、平成22年度改正の影響により、少なくとも納税義務判定としては、しっかりと理解しておく必要がある規定だとは言えると思います。

なお、平成22年度改正部分については、『消費税について(新たに設立された法人に係る納税義務の免除の特例)』の解説時に、簡単にご紹介しています。

 

この平成22年度改正では、自動販売機を利用した消費税還付による節税スキームを防止しようとしたことが有名です。

この改正では、完全にはこの節税スキームを防止できなかったことから中途半端感は否めないのですが、単純にはできなくなったり、改正に合わせて、制度趣旨を完全に逸脱した租税回避行為として、見せしめ的追徴課税などが行われたりと話題に事欠きません。

今日は、改正事項の前段となる「控除の調整」の基礎部分について、解説します。

 

※下記の参照条文については、分かりやすさを優先し、条文番号の内容への置き換え、一部省略等を行っています。

 

課税売上割合が著しく変動した場合

第33条1項に次の通り規定されています。

事業者(消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が国内において調整対象固定資産の課税仕入れを行い、又は調整対象固定資産に該当する課税貨物を保税地域から引き取り、かつ、当該課税仕入れ又は当該課税貨物に係る課税仕入れ等の税額につき比例配分法により仕入れに係る消費税額を計算した場合(当該調整対象固定資産に係る課税仕入れ等の税額の全額が控除された場合を含む。)において、当該事業者(相続により当該調整対象固定資産に係る事業を承継した相続人、合併により当該事業を承継した合併法人及び分割により事業を承継した分割承継法人を含むものとし、消費税を納める義務が免除される者を除く。)が第三年度の課税期間の末日において当該調整対象固定資産を有しており、かつ、第三年度の課税期間における通算課税売上割合が仕入れ等の課税期間(当該調整対象固定資産の課税仕入れの日又は保税地域からの引取りの日の属する課税期間をいう。)における課税売上割合(「課税売上割合に準ずる割合」の規定の適用を受けた場合には、同項に規定する承認に係る割合。)に対して著しく増加した場合として政令で定める場合に該当するときは第二号に掲げる合計額から第一号に掲げる合計額を控除した金額に相当する消費税額をその者の当該第三年度の課税期間の仕入れに係る消費税額に加算し、当該通算課税売上割合が当該課税売上割合に対して著しく減少した場合として政令で定める場合に該当するときは第一号に掲げる合計額から第二号に掲げる合計額を控除した金額に相当する消費税額をその者の当該第三年度の課税期間の仕入れに係る消費税額から控除する。この場合において、当該加算をした後の金額又は当該控除をした後の金額を当該課税期間における仕入れに係る消費税額とみなす。

 第三年度の課税期間の末日において有する当該調整対象固定資産(以下「保有調整対象固定資産」という。)の課税仕入れに係る消費税額又は保有調整対象固定資産である課税貨物に係る消費税額(附帯税の額に相当する額を除く。)(以下「調整対象基準税額」という。)に当該仕入れ等の課税期間における課税売上割合を乗じて計算した消費税額の合計額(仕入れ等の課税期間において当該保有調整対象固定資産に係る課税仕入れ等の税額の全額が控除された場合には、調整対象基準税額の合計額)

 調整対象基準税額に通算課税売上割合を乗じて計算した消費税額の合計額

 

これも長い規定ですね。

解説を受けないと、全く意味不明な条文で、意味ごとに、ブロック化して覚えないと覚えにくい規定の一つだと思われます。

まずは、各用語の意義を飛ばして、内容だけ説明します。

括弧書き部分などを除いて分解すると、まず適用要件として、次の4つを満たす必要があることがわかります。

1)「課税事業者が、調整対象固定資産の課税仕入れを行い、又は調整対象固定資産に該当する課税貨物を保税地域から引取り」

2)「当該課税仕入れ、又は当該課税貨物に係る課税仕入れ等の税額につき、比例配分法により仕入れにかかる消費税額を計算した場合で」

3)「当該課税事業者が、第三年度の課税期間の末日において、当該調整対象固定資産を有しており」

4)「第三年度の課税期間における通算課税売上割合が、仕入れ等の課税期間における課税売上割合に対して、著しく増加、又は著しく減少した場合」

 

そして、上記の要件を満たした場合には、次の金額を、「第3年度の課税期間の仕入れに係る消費税額」に加算し、又は控除し、その加算後、又はその控除後の金額を、その課税期間の「仕入れに係る消費税額」とみなす規定となっています。

・課税売上割合が著しく増加した場合 「第二号の合計額」から「第一号の合計額」を控除した金額に相当する消費税額の合計額

・課税売上割合が著しく減少した場合 「第一号の合計額」から「第二号の合計額」を控除した金額に相当する消費税額の合計額

 

この規定は、100万円以上支出するような資産に対して、仕入れた時点のみの課税売上割合で仕入れに係る消費税額を計算してしまうのではなく、大きく課税売上割合が変動してしまうような事業者については、一定の調整を行って、仕入れに係る消費税額額を平準化するものです。

なお、政令で定めている「課税売上割合が著しく変動した場合」の規定は、長くなりすぎるので、ここでは割愛します。

 

 

調整対象固定資産

第2条十六号に次の通り規定されています。

調整対象固定資産 建物、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産でその価額が少額でないものとして政令で定めるものをいう。

 

細かいところを省けば、いわゆる固定資産と呼ばれるものです。

試験で出題傾向の高いものについては、資格予備校で解説を受けると思います。

読み落としが減りますので、注意して覚えておくといいと思います。

 

調整対象固定資産の範囲

施行令第5条に次の通り規定されています。

当然覚えきれないので、各号に定める全ての事項を覚えるのではなく、第1項に規定されている太字下線とした意義の部分を暗記することになります。

結論は、100万円以上の固定資産ということになります。

棚卸資産以外の資産で次に掲げるもののうち、当該資産に係る課税仕入れに係る支払対価の額の百八分の百に相当する金額又は保税地域から引き取られる当該資産の課税標準である金額が、一の取引の単位(通常一組又は一式をもつて取引の単位とされるものにあつては、一組又は一式とする。)につき百万円以上のものとする。

 建物及びその附属設備(暖冷房設備、照明設備、通風設備、昇降機その他建物に附属する設備をいう。)
 構築物(ドック、橋、岸壁、桟橋、軌道、貯水池、坑道、煙突その他土地に定着する土木設備又は工作物をいう。)
 機械及び装置
 船舶
 航空機
 車両及び運搬具
 工具、器具及び備品(観賞用、興行用その他これらに準ずる用に供する生物を含む。)
 次に掲げる無形固定資産

 鉱業権(租鉱権及び採石権その他土石を採掘し、又は採取する権利を含む。)
 漁業権(入漁権を含む。)
 ダム使用権
 水利権
 特許権
 実用新案権
 意匠権
 商標権
 育成者権
 公共施設等運営権
 営業権
 専用側線利用権(鉄道事業法 (昭和六十一年法律第九十二号)第二条第一項 (定義)に規定する鉄道事業又は軌道法 (大正十年法律第七十六号)第一条第一項軌道法 の適用対象)に規定する軌道を敷設して行う運輸事業を営む者(以下この号において「鉄道事業者等」という。)に対して鉄道又は軌道の敷設に要する費用を負担し、その鉄道又は軌道を専用する権利をいう。)
 鉄道軌道連絡通行施設利用権(鉄道事業者等が、他の鉄道事業者等、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構又は国若しくは地方公共団体に対して当該他の鉄道事業者等、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構若しくは独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構の鉄道若しくは軌道との連絡に必要な橋、地下道その他の施設又は鉄道若しくは軌道の敷設に必要な施設を設けるために要する費用を負担し、これらの施設を利用する権利をいう。)
 電気ガス供給施設利用権(電気事業法 (昭和三十九年法律第百七十号)第二条第一項第一号 (定義)に規定する一般電気事業若しくは同項第五号 に規定する特定電気事業又はガス事業法 (昭和二十九年法律第五十一号)第二条第一項 (定義)に規定する一般ガス事業若しくは同条第三項 に規定する簡易ガス事業を営む者に対して電気又はガスの供給施設(同条第五項 に規定するガス導管事業又は同条第八項 に規定する大口ガス事業の用に供するものを除く。)を設けるために要する費用を負担し、その施設を利用して電気又はガスの供給を受ける権利をいう。)
 熱供給施設利用権(熱供給事業法 (昭和四十七年法律第八十八号)第二条第三項 (定義)に規定する熱供給事業者に対して同条第四項 に規定する熱供給施設を設けるために要する費用を負担し、その施設を利用して同条第一項 に規定する熱供給を受ける権利をいう。)
 水道施設利用権(水道法 (昭和三十二年法律第百七十七号)第三条第五項 (用語の定義)に規定する水道事業者に対して水道施設を設けるために要する費用を負担し、その施設を利用して水の供給を受ける権利をいう。)
 工業用水道施設利用権(工業用水道事業法 (昭和三十三年法律第八十四号)第二条第五項 (定義)に規定する工業用水道事業者に対して工業用水道施設を設けるために要する費用を負担し、その施設を利用して工業用水の供給を受ける権利をいう。)
 電気通信施設利用権(電気通信事業法 (昭和五十九年法律第八十六号)第九条第一号 (電気通信事業の登録)に規定する電気通信回線設備を設置する同法第二条第五号 (定義)に規定する電気通信事業者に対して同条第四号 に規定する電気通信事業の用に供する同条第二号 に規定する電気通信設備の設置に要する費用を負担し、その設備を利用して同条第三号 に規定する電気通信役務の提供を受ける権利をいう。)

 第九条第二項に規定するゴルフ場利用株式等
 次に掲げる生物(第七号に掲げるものに該当するものを除く。)

 牛、馬、豚、綿羊及びやぎ
 かんきつ樹、りんご樹、ぶどう樹、梨樹、桃樹、桜桃樹、びわ樹、くり樹、梅樹、柿樹、あんず樹、すもも樹、いちじく樹、キウイフルーツ樹、ブルーベリー樹及びパイナップル
 茶樹、オリーブ樹、つばき樹、桑樹、こりやなぎ、みつまた、こうぞ、もう宗竹、アスパラガス、ラミー、まおらん及びホップ

十一  前各号に掲げる資産に準ずるもの

 

その他の用語の意義

第33条2項に次の通り規定されています。

比例配分法とは、「個別対応方式」ロに規定する課税売上割合(以下「課税売上割合」という。)を乗じて計算する方法又は「一括比例配分方式」に定める方法をいい、第三年度の課税期間とは、仕入れ等の課税期間の開始の日から三年を経過する日の属する課税期間をいい、通算課税売上割合とは、仕入れ等の課税期間から第三年度の課税期間までの各課税期間において適用されるべき課税売上割合を政令で定めるところにより通算した課税売上割合をいう。

 

比例配分法

「個別対応方式」のロに規定する「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じる」方法と「一括比例配分方式」の2つです。

どちらも課税仕入れ等の税額に課税売上割合を乗じていることで共通しています。

 

第三年度の課税期間

結論としては、調整対象固定資産を仕入れた課税期間から3年後の課税期間です。

その他の期間に関する規定と同様に、法人の事業年度が変更できることから、このように長い定義となっています。

 

通算課税売上割合

調整対象固定資産を仕入れてから3年間を通算した課税売上割合のことです。

この割合を計算で使用して、調整を行います。

 

 

控除しきれないとき金額があるとき

第33条3項に次の通り規定されています。

「課税売上割合が著しく変動した場合」の規定により同項第一号に掲げる合計額から同項第二号に掲げる合計額を控除した金額に相当する消費税額を当該第三年度の課税期間の仕入れに係る消費税額から控除して控除しきれない金額があるときは、当該控除しきれない金額を課税資産の譲渡等に係る消費税額とみなして当該第三年度の課税期間の課税標準額に対する消費税額に加算する。

 

この規定は、『仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の仕入れに係る消費税額の控除の特例』にも出てきました「控除過大調整税額」の一つです。

以前に引き過ぎたから追加して払ってくださいという規定です(苦笑)

その年度の「支払った消費税額」から控除しきれない金額は、その年度の「預かった消費税」に加算して、その分の消費税額を納めることになります。

 

 

まとめ

減少した場合を例に、少し極端ですが、調整対象固定資産のみに着目して図示すると、下図の通りです。

計算としては、3年間トータルで「課税資産の譲渡等の対価の額の合計額(100万円)」÷「資産の譲渡等の対価の額の合計額(300万円)」=33.33…%の「課税売上割合」となりますので、「調整対象固定資産(324万円)」に対する消費税等(24万円:8%)に課税売上割合(1/3)を乗じて、8万円になります。

 

sample1_If_taxable_sales_ratio_was_significantly_change

 

 

基本形の説明は以上です。

まずはこの基本形をしっかりと理解した上で、資格予備校で与えられる問題集に取り組み、反復練習して身につけて頂くことをお勧めします。