A Written Oath

湘南藤沢の開業税理士・マンション管理士・社会人大学生のブログです

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消費税税理士試験

非課税資産の輸出等を行った場合の仕入れにかかる消費税額の控除の特例

本日からは、「仕入れに係る消費税額の控除の特例」に関する規定について、解説したいと思います。

昨日までの規定は、「預かった消費税額」から差し引くことができる「支払った消費税額」計算の原則規定でした。

しかし、今日からは原則に対する特例規定となり、原則とは異なる取扱いがされるものについて解説していくことになります。

 

この違いは、試験問題でも問われる場合があります。

ここまでの解説を読んでいただいた方にはお分りいただけると思うのですが、「仕入れに係る消費税額の控除」の規定は、とても長い上に、関連規定も多い規定です。

そのため、ちょっと問題を出しただけでも試験時間内に解答しきれないぐらいに「法令の根拠」を書かなければならなくなることがあります。

したがって、解答範囲の絞り込みのため、ときどき「控除の特例」のみに絞って、解答要求されることがあります。

 

解答要求事項をしっかりと把握することは、試験の基本ですが、制限時間の中、読み取りが散漫になりがちです。

(私はよく見落としましました!:笑)

そのため、解答要求事項に印をつけて、見やすくするなど、対策をするとともに、インプットの時点で、現在の理解を進めている規定が、消費税法の規定の中で、どのような位置を占めているのかに留意することは大切ですので、今後もご注意ください。

 

※下記の参照条文については、分かりやすさを優先し、条文番号の内容への置き換え、一部省略等を行っています。

 

 

非課税資産の輸出等を行った場合の仕入れにかかる消費税額の控除の特例

規定の名前だけですでに長いですね。

これは、第31条1項に次の通り規定されています。

事業者が国内において「非課税資産の譲渡等」のうち「輸出取引等」に該当するものを行つた場合において、当該非課税資産の譲渡等が輸出取引等に該当するものであることにつき、財務省令で定めるところにより証明がされたときは、当該非課税資産の譲渡等のうち当該証明がされたものは、課税資産の譲渡等に係る輸出取引等に該当するものとみなして、「仕入れに係る消費税額の控除」の規定を適用する。

 

通常の「非課税資産の譲渡等」については、下図の通り、事業者は、結果として最終消費者として消費税を負担することになります。

Multi-stage_cumulative_deduction_Tax-free_sales

 

以前に「消費税について(取引分類)」にて「輸出免税等」について、国内において行う「課税資産の譲渡等」のうち、「輸出取引等」に該当するものを行った場合には、消費税が免除されることを解説しました。

これは、国内の税金である消費税を、海外に転嫁しないために設けられている規定です。

「輸出取引等」に該当するものについては、「仕入れに係る消費税額の控除」の規定が適用されることから、「輸出取引等」しか行っていない場合には、「預かった消費税額」から「支払った消費税額」を差し引いた額の還付を受けることができます。

 

Exports_such_as_tax-exempt_assets

 

しかし、「輸出免税等」の規定では「課税資産の譲渡等」のみを対象としており、「非課税資産の譲渡等」を輸出した場合については、対象外となっていました。

そこでこの規定では、国内において行う「非課税資産の譲渡等」のうち、「輸出取引等」に該当するものについても、「課税資産の譲渡等に係る輸出取引等」とみなして、「仕入れに係る消費税額の控除」を適用することにより、結果として、上図の「輸出免税等」と同じになります。

 

 

資産を輸出した場合

「国内における非課税資産の譲渡等のうち、輸出取引等に該当するもの」の他、第31条2項に次の通り規定されています。

 事業者が、国内以外の地域における資産の譲渡等又は自己の使用のため、資産を輸出した場合において、当該資産が輸出されたことにつき財務省令で定めるところにより証明がされたときは、当該資産の輸出のうち当該証明がされたものは、課税資産の譲渡等に係る輸出取引等に該当するものとみなして、「仕入れに係る消費税額の控除」の規定を適用する。

 

この規定も、先ほどの「国内において行う非課税資産の譲渡等のうち、輸出取引等に該当するもの」と同様に、「国内以外の地域における資産の譲渡等又は自己の使用のため、資産を輸出した場合」には、「課税資産の譲渡等に係る輸出取引等」とみなして、「仕入れに係る消費税額の控除」を適用しています。

これは、国内において購入した課税資産である設備などを国外に輸送して、自社の国外工場で使用する場合など、その資産消費が国外で行われるものである場合には、輸出しているものと考えて、「輸出取引等」と同様の処理を行っています。

 

 

非課税資産の輸出等を行った場合の課税売上割合の計算の方法等

施行令第51条に次の通り規定されています。

有価証券及び支払手段並びに金銭債権の輸出は、「非課税資産の輸出等を行つた場合の仕入れに係る消費税額の控除」 に規定する輸出取引等及び資産の輸出に含まれないものとする。
 「仕入れに係る消費税額の控除」に規定する課税売上割合の計算については、国内において行つた非課税資産の譲渡等のうち輸出取引等に該当するものの対価の額は、課税資産の譲渡等の対価の額の合計額に含まれるものとし、国内において行つた資産の譲渡等に係る対価の返還等の金額のうち当該輸出取引等に該当するものに係る部分の金額は、輸出取引等に係る対価の返還等の金額に含まれるものとする。
 課税売上割合の計算については、資産の輸出に該当するものに係る資産の価額に相当する金額は、資産の譲渡等の対価の額の合計額及び課税資産の譲渡等の対価の額の合計額にそれぞれ含まれるものとする。
 前項に規定する資産の価額は、当該資産が対価を得て輸出されるものとした場合における当該資産の本船甲板渡し価格(航空機によつて輸出される資産については、これに準ずる条件による価格)とする。

 

まず第1項において、「有価証券」、「支払手段」及び「金銭債権」の輸出は、この規定の対象から除かれています。

この規定によって、国内と国外でこれらの輸出入を行うだけで、課税売上割合を意図して操作できてしまう弊害をなくしています。

 

次に第2項において「非課税資産の輸出等」を行った場合の課税売上割合の計算方法が規定されており、「課税資産の譲渡等の対価の額の合計額」に含まれるとありますので、分数式にすると下図の通り分子にのみ加算されます。

 

 

Taxable_sales_ratio_sample2

 

第3項では、「資産の輸出」をした場合の課税売上割合の計算方法が規定されており、「それぞれ」に含まれるとありますので、分数式にすると下図の通りとなります。

 

Taxable_sales_ratio_sample3

 

第4項では、「資産の輸出」における「資産の価額」は、簿価等ではなく、「本船甲板渡し価格」と規定されています。

「本船甲板渡し価格」は、「FOB価格」などとも呼ばれ、関税定率法の規定に準じて算出される価格のことで、試験では金額を与えられますので、その価格を算出できる必要はありません。

 

 

まとめ

この規定は、理論・計算ともに問われる重要論点です。

また、この規定は、特に読み取りが難しくなりがちで、正確に解答できるようになるのは、本試験直前かもしれません。

しかし、合格レベルの受験生は、本試験ではこの辺りはしっかりと解答を作ってきます。

「ここ試験で出ますよ」と言われるような論点は、すぐにできてなくても諦めず、反復練習を心掛け、取り組みましょう!

 

そして、ここまでたどり着く受験生は、貴方だけではなく、きっとみんな苦労しています。

諦めず、粘り強く続けることが成功への近道だと考えます。