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地元ネタ建築・不動産関連

「立地適正化計画」について

今日(2018.5.26)は、地元である藤沢市を例に、「立地適正化計画」について書きたいと思います。

以前にも記事にした通り、藤沢では住宅がどんどんと建設されていました。

藤沢では住宅がどんどん建っています

今は良いかもしれませんが、空き家問題が深刻になりつつある昨今、そんな新築住宅の建て捨てが続けられるわけがありません。

建物を建てても、人が住むにはインフラが必要です。

そのインフラも高度経済成長期に一気に作られたものであり、トンネル崩落事故の発生や橋梁の劣化など、その維持管理も問題になりつつあります。

そこで、藤沢市は20173月に立地適正化計画を策定・公表し、2018年には都市マスタープランを部分改定し、今後の長期的なまちづくりのビジョンを示しています。

区域図

(「藤沢市立地適正化計画」区域図)

 

都市再生特別措置法に基づく立地適正化計画

過去記事でも触れたことがありますが、国としては少子高齢化の現実を踏まえ、「コンパクトシティ・プラス・ネットワーク」として、政策(改正都市再生特別措置法)的に人が住む場所の誘導を開始しようとしています。

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これは単純に公共施設などを集約する(コンパクトシティ)だけではなく、医療・福祉施設、商業施設や住居等をまとまって立地した上で、高齢者をはじめとする住民 が公共交通によりこれらの生活利便施設等にアクセスできるなど福祉や交通なども含めて都市全体の構造(ネットワーク)を見直そうとするものです。

立地適正化計画

一言でいえば、あらかじめ市民に公共施設やインフラを集約する場所を明示することによって住宅が立つエリアを誘導し、それに合わせて交通網も整備する計画です。

あえて住みなれた不便な場所を選ぶことも可能ですが、やはり住み替えるなら便利な場所のはずです。

その時、このような制度と計画があれば、どこに拠点が集約される予定なのかがわかるという仕組みです。

 

人生100年時代

Management and Planning for Real Estateを受講しました

住生活基本計画における目標の考察がテーマだった、大学院の講義Management and Planning for Real Estateでも感じましたが、やはり制度が社会の変化に追随できておらず、その歪みを是正するべく最善の方法を探っているというのが現在の状況だと思います。

年金制度が始まった当時の男性の平均寿命は65歳、女性でも70歳程度でした。

当時55歳から支給された厚生年金は10年間程度、65歳から支給された国民年金は女性が5年程度受けることしか想定されていなかった制度です。

しかし、いまや国の計画上、人は100年以上生きることが想定されています。

すでに受給開始年齢の引き上げ他さまざまな制度改革が行われていますが、当時の制度がそのまま使えるはずがありません。

そして、年金だけではなく、社会インフラに対する制度も人生100年時代に合わせたものにしなければならないはずです。

もはや、方法を探っているという段階ではなく、むしろ「やれることを全てやるしかない」という状況かもしれません。

 

地方自治体としては支援措置を受けられる

この立地適正化計画を自治体が策定すると、国からの各種補助が受けられる制度になっています。

そのため、地方自治体は老朽化が進んでいる公的施設の改築・移築・集約などを進める上で有利になります。

また宅地を誘導する上でも、緑化事業や公営住宅の整備、空き家対策などへの支援が得られます。

支援措置

このような交付金制度自体の是非はありますが、動機付けがなければ動かないのは、人だけではなく自治体でも同様です。

ただし、交付金目当てだけで事業を動かしてしまうと、制度趣旨を離れ、ハコモノ行政の再来にしかなりません。

この点に関しては、我々市民が行政の動きを注視する必要があると感じています。

 

重要事項説明事項への追加とともに届出の義務化

この策定が行われた結果として、市民生活にまず直接影響があるのは重要事項説明です。

藤沢市では、全域がいずれかの誘導施設の都市機能誘導区域外となるため、市内全域が重要事項説明の対象となっています。

そして、藤沢市では全域が対象ですので、一定規模以上の開発行為や建築行為を行おうとすると藤沢市に届け出る必要があります。

したがって、このような制度があることを知らずに不動産売買が行われることはなくなるはずです。

求められているのは届出にすぎませんので、誘導区域外に不動産を持つことを禁じられているわけではありません。

結果として、藤沢市の立地適正化計画があることを知った上で売買が行われることになるというわけです。

 

まとめ

この制度設計としては、災害対策なども含め、緩やかな集約を意図しているものと思われますが、これがどのような影響するはまだまだ未知数です。

ただ、藤沢市はまだ人口が増加しているエリアであることから、緩やかに集約がすすむ可能性が高い自治体だとは思っています。

しかし、人口移動が緩やかだったとしても、不動産価格面においても同じとは限りません。

住宅誘導区域外に、家を持ちたいと思う人は少ないのではないでしょうか?

またできれば、大規模施設などが誘致される都市拠点地域に住みたいと考える人は多いのではないでしょうか?

すると、その結果として、少子高齢化による人口減少とも合間って不動産価格における二極化・三極化を促進させかねない制度であることは懸念しています。