管理会社社員による不正行為について
マンション管理新聞(2017年4月25日・5月5日合併、第1037号)の記事からですが、先月に続き管理会社社員による不正行為が行われたようです。
先月は管理会社社員の不正行為をきっかけに、マンション管理組合の監査について記事にしました。
この時の記事の視点は、主として管理組合内部における不正を防止することを主眼として書きました。
監査においては、この視点はとても大切だと考えています。
ただ、それ以上に大前提として、多額の財産を預かる仕事である以上、管理を委託されている管理会社自身がこのようなことが起こらないよう、プロとしての体制を構築してしかるべきですし、当然そのような管理体制が敷かれているべきです。
ところが、管理会社社員による不正行為が後を絶ちません。
少なくとも数千万円、場合によっては数億円以上の資金を預ける管理会社に対して、どうして管理組合はここまで無防備なのでしょうか?
最初のハードルは高いけれど
マンションを選ぶ際には、その管理会社も同時に選ぶことになります。
分譲マンション購入者の多くは、そのマンション購入時には相当考え、悩んだはずです。
また、分譲当初の管理会社から他の管理会社にリプレースされたことのある管理組合においても、その選考には相当の気を使ったはずです。
ところが、数年経つと、その意識は徐々に薄れ、10年も経てば、多くの管理組合では大規模修繕工事のような多額の費用が発生するようなイベントでも起こらない限り意識されることはほとんどなくなってしまいます。
管理会社内部の管理態勢まで問われることはほとんどない
一部の意識高い管理組合を除き、一度選ばれた管理会社を変更することは相当にハードルの高い作業であることから、その見直しが行われることは、よっぽどのアクシデントでも起こらない限り、ほとんどありません。
しかし、よく考えてみていただければわかると思いますが、企業は永続するものではありませんし、その内部態勢も刻々と変わるものです。
多くの場合、そのマンションのフロント担当者が変わるごとに、全くの別の管理会社に委託するぐらいその管理の実態が変わっているということは珍しくありません。
それぐらい、管理会社の管理レベルは、担当するフロント担当者のレベルに左右されます。
ところが、管理組合内部に専門家がいない場合には、フロント担当者の仕事ぶりをチェックする社内システムにまで管理組合から指摘されることは、ほとんどありません。
先日の「Behavioral Economics(行動経済学)」の講義で学んだばかりですが、人はその判断の多くを、直感的な早い思考による判断に委ねていることを改めて実感します。
ちょっと立ち止まってみる
委託している管理会社が、皆さんからの多額の資産を預かるのに適した会社であるかどうかを見直ししてみてください。
私の個人的な感想に過ぎませんが、多くの管理組合の組合員の方にとって、一旦支払い管理組合の収入となった管理費や修繕積立金は、自分の手を離れた「損失」になってしまっているような気がしてなりません。
もちろん、管理組合から各所有者に管理費などが払い戻されることはまずありません。
その意味では、各所有者にとって、一旦管理組合支払った管理費等は支出であり、損失でもあります。
ただ、その「損失」は、適正に使用されないと、さらにその「損失」を拡大させうる「損失」なのです。
ところが、「損失」と認識されるがゆえに、「毒くらわば皿まで」ではありませんが、管理組合はリスク追求的に集団行動しているような気がしてなりません。
具体的には、今回書いているように、一旦選んだ管理会社(リスクテイク)に対して、その他の可能性(管理会社の見直しを行うなど)を公平にみようとせず、ずっとその管理会社を単純に契約更新し続ける選択(リスク追求)をしているような気がしています。
もちろん、管理会社を変更することには一定のリスクがあります。
しかし、そのリスク判断は、永続的に10年以上管理会社を変えないことによるリスクと比べた場合、どちらが大きいかを冷静に判断してのものでしょうか?
まとめ
レポート課題もあって、講義を振り返ることが多く、また行動経済学の話になってしまいました。
しかし、今回の行動経済学の講義内容は、振り返れば振り返るほど、今まで私が体験してきた管理組合の集団行動の方向性と、そら恐ろしいほどまでに一致しています。