管理不全マンションに関するNHKの報道について
昨日(2018.4.4)、「管理不全マンションに関するNHK報道の件」として、3/28の首都圏ニュース報道と、その報道に関するNHKのWeb特集について、マンション管理士会から周知メールがありました。
私自身も何度か分譲マンションがスラム化する可能性があることを書いています。
記事にも書いた通り、将来的にはマンションがその構成員の高齢化に伴い管理不全化し、その結果、分譲マンションがスラム化する可能性があると考えています。
ただ、今回のNHKのWeb特集では、「管理不全マンションが6割」との小見出しがつけられて報道されていたことに、少し違和感を持ったことから、その中身を確認しました。
実務に携わった経験から確かに管理不全化しているマンションが増加している感触はあります。
しかし、老朽化しているとしても「6割」ものマンションが管理不全化しているとまでは感じていなかったからです。
数字が一人歩きしすぎないかが心配
もちろん、NHK報道ですから、この数字が埼玉県の築30年以上の363マンションのうち216マンションからの回答であることは正確に説明されています。
そのため、この数字は埼玉県における老朽化したマンションに限定した調査結果であるとということまではわかります。
さらにもう一歩踏み込んでこの調査を行った埼玉県の結果報告を確認すると、この調査が埼玉県全域を調査したわけではなく、公募により選定した9市(川口市、狭山市、上尾市、草加市、越谷市、朝霞市、志木市、和光市、三郷市)のマンションが対象で、埼玉県にある老朽化したマンションの24%をカバーできていることまではわかりました。
しかし、このサンプリングからすると、埼玉県における高齢化マンションの現状を把握する上では、ある程度の目安になりそうな気はしますが、全国の分譲マンションの傾向を判断する上で適切といえるかどうかまでは読み取ることが難しいように思われます。
分譲マンション管理にかかわるマンション管理士として、老朽化に伴う問題点が明るみになり、この問題に対する理解が進むことは望ましいと考えています。
一方で、維持管理の必要性を盾に高額な修繕費を負担させる管理会社や改修設計事務所、施工業者などに利用される面もあることから、手放しに歓迎できないのが悩ましいところです。
このような数字に関しては、一人歩きさせないために数字の根拠をしっかり把握されることをお勧めします。
長期修繕計画の数的根拠の精度をあげるべき
私は税理士登録を目指していますので、ここで貸借対照表や収支計算書などの会計報告の精度に関して注意喚起したいところです。
しかし、あえてここでは長期修繕計画の数的根拠の精度に関して注意喚起を促したいと思います。
もちろん、全ての管理組合に対して管理組合の会計処理に問題がないとは申しません。
ただ、会計に関しては、それなりに分かる方が居住者に結構いらっしゃいますし、致命的な問題を抱えているようなマンションは少ないと感じています。
一方で、会計に比較すると、長期修繕計画の数的根拠に関しては、ザルとしか言いようがないほど放置されています。
主要な理由は次の3点だと感じています。
・相当な費用と手間暇がかかること
・専門知識を必要とすること
・任期の短い理事では取り組みきれないほど大きなプロジェクトであること
このような問題を乗り越えて、管理組合の目的である建物維持管理にかなうこの部分に正面から向き合う必要があると感じています。
まとめ
わかってはいても、手の付けやすいところからやってしまうのが人情です。
大きな問題に取り組むには、多少回り道だとしても、問題を分解し、一つ一つの作業ハードルを低くすることが、結果として近道になることが多いと感じています。
いきなり長期修繕計画の見直しに取り組むにはハードルが高いかもしれませんが、まずはその必要性に関する意識調査あたりから始めてみられてはいかがでしょうか?
必要性が伝われば、一人では解決が難しい問題でも解決の糸口が見えてくるかもしれません。