分譲マンションの修繕積立金について
先日のマンション管理フェア2016での無料相談において受けた相談に修繕積立金の当初積立額が低すぎるのではないかとの質問がありました。
修繕積立金については、このブログでも何度か記事にしていますが、もう少し掘り下げて書きたいと思います。
修繕積立金の設定に対する2つの異なるアプローチ
一つは、しっかりとした長期修繕計画による修繕費推定からのアプローチです。
もう一つは、修繕積立金の積立て方法からのアプローチです。
後段の考え方は、先日の役員選任に関する考え方と同様、管理組合が主体となって検討すべきことです。
そもそも修繕積立金の積立てに関しては、国土交通省からは均等積立方式(計画期間中、必要修繕費を毎月定額積立てする方法)を基本とすべきと見解が示されています。
しかしながら、修繕積立金の額が問題となる管理組合は、ほぼ均等積立方式ではなく、段階増額積立方式、もしくは一時金徴収を前提とした計画が策定されています。
この部分については、区分所有者ごとに様々な考え方がありえます。
そのため、管理組合として統一した考え方を持つためのコミュニケーションが必要です。
この面からのアプローチに関しては、複雑な論点があるため割愛し、今回は前段の部分の修繕費推定から見たアプローチを主体に書きます。
大前提はしっかりとした長期修繕計画が必要
結論から言ってしまえば、その妥当性を検証するためには、しっかりとした長期修繕計画が必要となります。
ただ、大規模な分譲マンションはともかく、あまり規模が大きくないマンションにとって、長期修繕計画を策定するための費用は決して安いものではありません。
そのため、支出を抑えたい管理組合サイドとしては、どうしても管理会社から提出されている当初の長期修繕計画をベースに修繕積立金の妥当性を検証しがちになります。
しかし、その妥当性を検証したいと考えた修繕積立金の根拠は、そのデベロッパー、もしくはその管理会社が作った長期修繕計画です。
疑いを持った計画をもとに検証を進めても、結局はその大元が正しいかどうかという論点に戻ってきてしまいます。
ただし、以前にも書いた通り、長期修繕計画も完璧ではありません。
これらのような現実がある中、次善策として、平均値などの根拠を求める傾向があると感じています。
次善策とよく使用される参考資料
これから挙げる資料は、あくまで参考資料として活用すべきと考えています。
これは、以前にも記事にしている通り、修繕費はマンションの立地、築年、構造、規模、設備など様々な要素により、大きく変動するものであり、平均値を一概にそのままそのマンションに当てはめられるとは限らないからです。
ただ、修繕積立金の設定自体、長期修繕計画をもとにした推定です。
その劣化の進行度合いや経済の状況、消費税の改正などのような外的要因によっても、必要修繕費は変動してしまいます。
したがって、経営計画などと同様、厳密に計画すべきものとまでは考えていませんが、あまりにアバウトな積み上げで変動が出てしまった場合には、その要因分析が正確にできず、さらに対策もアバウトになりえます。
結局のところ、前提に戻り、専門家の手によるしっかりとした長期修繕計画があるべきと考えます。
しかし、現実問題としては、様々な事情がある中、原則論の正論ばかり言っていても、机上の空論になってしまいます。
実際には、次善策として、そのマンションの長期修繕計画とともに、次の参考資料を活用して修繕積立金の設定が議論されていました。
マンションの修繕積立金に関するガイドライン
まず、参考として検討するべき資料に、平成23年4月に国土交通省から公表された『マンションの修繕積立金に関するガイドライン』があります。
これは修繕積立金の目安を国土交通省がまとめた資料です。
最も公的で直接的な資料で、一定規模ごとの平均値などもわかりますが、事例ごとのばらつきの大きさから、平均値の幅が大きなってしまっており、これだけを参考にすることは難しいと考えています。
マンション総合調査
国により5年ごとにおこなわれている調査で、直近では平成25年度の調査結果が公表されています。
ここでは、戸当たり月額の修繕積立金の平均値などがわかります。
ただし、この数値はアンケートに答えた管理組合のみが対象である上に、どのような規模のマンションの平均値であるのかが明確ではありません。
そのため、この平均値をどう捉えるかについては、議論が分かれる余地があると考えます。
マンション管理新聞
業界紙であるマンション管理新聞が、半年ごとなどに、新築分譲段階や既存・流通段階での管理費・修繕積立金などの調査を行っています。
新築分譲マンションの修繕積立金の目安を知りたい場合には、最も有効です。
まとめ
修繕積立金の設定検討に関しては、これらの資料が活用できます。
ただし、これらの活用に関しても、専門家に相談されることを強くおすすめします。
なぜなら、これらの資料を適切に活用するためには、各資料の根拠や違いをしっかりと理解してアドバイスできる知見や経験が必要だからです。
特に高経年マンションに関しては、建築のみならず、設備修繕も重要となります。
設備関係にも強い専門家に相談されることが望まれます。
そして、高経年化が進むと、定期借地権マンションを除き、建替も視野に修繕計画を検討する必要性が生まれます。
ただ、必要性は生まれるものの、建替はハードルが大変高く、よほど恵まれた立地などでない限り、実現性は低いのが現状です。
そのため、高経年に至ったとしても計画としては建替を前提とせず、修繕により建物を継続利用することを前提に計画することが望ましいと考えています。