分譲マンションの「資産上の価値」について
昨日(2016.2.14)、分譲マンションの資産価値について、概要を書きました。
今日は、3つ挙げた分譲マンションの価値のうち、「資産上の価値」について書きます。
この価値は、さらに次の3つの価値に分けて考えることができると思っています。
一つは、「貸すことによって収入を得ることができる経済的価値」。
二つ目は、「金融機関などの評価を受けて、借り入れできる担保価値」。
3つ目は、「税務上の評価」です。
しかし、「担保価値」の部分については、ご存知の通り、金融機関などは「土地」を最も高く評価することから、土地が共有持分となる分譲マンションの担保価値は、とても低いものとなっています。
そのため、実質的には、分譲マンションの「資産上の価値」は、「賃貸することによって得られる経済的価値」と「税務上の評価」の2つが中心であると言えると考えています。
分譲マンションと一口に言っても、いろいろあります
多くの分譲マンションでは、「マンション標準管理規約」にある通り、その専有部分を「専ら住宅」として利用しています。
しかし、管理会社にいるとわかりますが、そうではない分譲マンションも実はかなりあります。
首都圏においては、投資用の分譲マンションがあり、また郊外には、リゾートマンションと呼ばれるタイプのマンションがあります。
特にリゾートマンションは、「生活上の価値」が主体の物件だと考えられます。
その物件を所有し、そこでの生活を楽しむために購入するものですから、その「資産上の価値」の割合は相対的に小さく、加えて流動性も低くなりがちなため、経済的な面で管理組合運営にも支障をきたすことが多く、滞納問題などを抱えるマンションが少なくありません。
投資用分譲マンションを貸すことによって得られる単純な経済的価値は不合理なほど小さい
これは、投資用分譲マンションに限らず、利便性の高いところに自ら土地を持っていて建築だけする地主さんを除き、投資用不動産のほとんどに言えると思っています。
投資用分譲マンションにおいても、昨年、クローズアップ現代でも取り上げられたサブリース契約になっているのですが、サブリース契約により家賃保証されている初期期間のみ、若干の黒字化は見込めますが、ランニングコストや出口戦略まで見据えて収支計算すれば、ほとんどの不動産では収支が成り立っていないのではないかと推測しています(詳細に書き出すと、マンション管理の論点から離れすぎてしまうので、ここでは割愛します)
一部に、市場の隙間や歪みを突くような戦略で、収益を上げている方もいらっしゃいますが、一般化できるような手法ではないと感じています。
私は「簡易な事務所」利用も認められる分譲マンションを賃貸しています
購入から賃貸することとなった経緯については以前記事化しています。
私が所有している分譲マンションは、商業地域にあり、「専ら住宅」としてだけではなく、簡易な事務所としても併用する「SOHO」的な使用も可能なマンションとして分譲されており、また、私の住戸ではありませんが、住戸の一部を分割して賃貸できる特殊なプランもあるマンションとなっています。
そのため、賃貸入居者の率が、一般的な分譲マンションよりも高く、ゴミ捨てマナーの問題などについて賃貸マンションに近いトラブル傾向があります。
しかし、分譲マンションを賃貸できるという事実は、今回話題にしている「資産上の価値」として、とても大きいポイントです。
とは言っても、大きく儲かっているわけではありません
そもそも購入時に一括して費用を支払っているわけですから、分譲マンションの購入は「家賃の長期前払い」と言えます。
賃料収入はありますが、収入とラニングコストの差額は大きいものの、当初に一括して費用を支払っているわけですから、儲かっているというよりも、一括前払いしてしまった費用を月々取崩しながら回収しているイメージです。
感覚的なお話としては減価償却費分だけ手元にキャッシュ残る感じです。
そのような収支にもかかわらず、空室リスクがあり、修繕費が発生します。
さらには、賃貸で住んでいればかからない固定資産税などもかかります。
分譲マンションの大きな特徴は「税務上の評価」
昨今、「タワーマンション節税」に対策が行われるということで話題ですが、分譲マンションは相続税上の評価が、とても低くなることが特徴でした。
不動産の価値のうち、最も大きく評価されるのは「土地」です。
タワーマンションでは、この「土地」の締める割合が非常に小さいため、金融機関の担保評価と同様に、相続税法上の評価額も低くなります。
これにより、支払った額より、とても低い額で評価されるタワーマンションは、相続税対策として、非常に有効だったのです。
この話の逆アプローチとして、お金を借りるためには、分譲マンションよりも一戸建てなどの一棟所有の方が有利になると言えます。
そのため、投資不動産の世界においては、初期の手元資金が少ない時期には、中古の投資用マンションを活用することがありますが、金融機関から資金を借りて投資不動産を行っていく場合には、規模を拡大するにつれて、一棟もののアパートなどを対象にするようになっていきます。
大きな方向として資産で商売をする時代はとっくに終わっている
もちろん、専門業者以上に勉強して成果をあげる人が一部にはいますが、不動産賃貸業を専業化するような人を除いて、専門業者に丸投げして所得がプラスになるようなことは、ほとんどない状況です。
過去の収入や遺産などで借り入れなく不動産を所有し、賃貸している方は、現状では問題なく運営できているかもしれませんが、その状況の中で相続が発生してしまうと、相続する側が困る事態がありえます。
運営ノウハウもなく、修繕知識もない中で、相続してしまうと、不動産の勝手がわからない相続人にとっては、簡単には手放すことができない負の遺産にもなりかねないからです。
「不動産」というだけあって、価値の変動が緩やか
ただ、これはメリットであると同時にデメリットでもありますが、流動性の低さを代替にして、不動産の価値変動は、有価証券などに比べて緩やかです。
この特徴を生かして所得を分散化する意味では価値があると考えています。
ただし、不動産は「投資」というよりも、所有者の活用方法によってその価値が変わる資産ですので、経営ノウハウが必要であり、「事業」と捉えるべきだと考えています。
まとめ
「価値」は様々な視点で分析ができるため、うまくまとめられず、体験などの羅列になってしまいました。
私が感じていることとして、「多様な価値」があるということは、「多様な活用方法があってもいいのではないか?」と考えています。
ただし、にわかに話題となっている「Airbnb」や「シェアハウス」は、少なくとも「専ら住宅」として規約があるマンションにおいては、その建物価値に対するフリーライドだと思っています。
分譲マンションをより活用し、経済的価値を高める工夫をしたいとは考えていますが、管理組合という団体において、多様な価値観を生かしていくためには、丁寧な共通認識や相互理解を踏まえた活用であるべきではないでしょうか?(まぁそれが難しいんですけど:笑)