「権利能力なき社団」と「人格のない社団」の差異
先日のゼミでは、あまり突っ込まれたくなかった民法上の問題について指摘を受けました。
この問題とは、法人税法にいう「人格のない社団」と、所得税法が適用される民法上の「任意組合」との違いについてです。
もちろん、この両者に関しては、法律上の定義があり、解釈に関しては通達などのフォローがあります。
しかし、これらの該当性に関する裁判を見ていくと、裁判所として法律に定められたこと以外の基準もありそうだとの話になりました。
これは、現在、私の先輩が「人格のない社団等」に関する修士論文を書かれており、そのことが論点として挙がっているそうです。
現状、まだ研究中ですので、まだ私なりのまとまった私見があるわけではありません。
その私見をまとめる前段階として、現行法令などではどのように取り扱われているのかについて記事にしたいと思います。
なお、「人格のない社団等」の定義に含まれる「人格のない財団」については、私の論文テーマの主題から外れているため、ここでは割愛します。
所得税法上の取扱い
「組合(任意組合)」に関することについても、以前次の記事にしています。
匿名組合に関しては、所得税法上にも少し記載がありますが、任意組合に関しては、国内源泉所得に関する記述があるのみで、その所得計算に関しては記載がありません。
そのため、所得計算方法その他はすべて通達でカバーされており、定義自体も、所得税法基本通達14-1-1の注意書きで、次のようにフォローされています。
(任意組合等の組合事業から生ずる利益等の帰属)
14-1-1 任意組合等において営まれる事業(以下14-1-2までにおいて「組合事業」という。)から生ずる利益金額又は損失金額については、各組合員に直接帰属することに留意する。(平17年課法2-14「十五」により追加)
(注) 任意組合等とは、民法第667条第1項に規定する組合契約、投資事業有限責任組合契約に関する法律第3条第1項に規定する投資事業有限責任組合契約及び有限責任事業組合契約に関する法律第3条第1項に規定する有限責任事業組合契約により成立する組合並びに外国におけるこれらに類するものをいう。以下14-1-2までにおいて同じ。
法人税法上の取扱い
以前にもマンション管理組合を対象として、「法人格」の面から記事にしています。
ここで重要なのは、法人税法基本通達1−1−1です。
1-1-1 法第2条第8号《人格のない社団等の意義》に規定する「法人でない社団」とは、多数の者が一定の目的を達成するために結合した団体のうち法人格を有しないもので、単なる個人の集合体でなく、団体としての組織を有して統一された意志の下にその構成員の個性を超越して活動を行うものをいい、次に掲げるようなものは、これに含まれない。(昭56年直法2-16「二」、「六」により改正)
(1) 民法第667条《組合契約》の規定による組合
(2) 商法第535条《匿名組合契約》の規定による匿名組合
所得税法と法人税法から、今回の対象部分だけをクローズアップして図示すると、次の通りだと考えます。
ところが裁判では
これも以前に記事にしていますが、通常、裁判では「人格ない社団」は、民事訴訟上の「権利能力なき社団」として取り扱われています。
ところが、裁判では、例外的な判決ながらも、次の図のような、民法上の「組合(任意組合)」もこの「権利能力なき社団」として取り扱われる裁判例があります。
租税法上は、この「権利能力なき社団」は、「人格のない社団」と「組合(任意組合)」を区別するものでなければ、おかしな話になってしまいます。
しかし、裁判例には実際このように取り扱われた例があるようです。
ただ、まだこの裁判例の詳細は検討できません(苦笑)
何かの勘違いという可能性もまだ残っていますが、これから調査研究を通じて、「なぜ組合(任意組合)でありながら、同時に権利能力なき社団として取り扱われるのか?」、また、「その判決は民事訴訟法上においては、有効だとしても、租税裁判上でも有効な判決であるのか?」などについて明らかにしたいと考えています。
まとめ
終始論文に関しては、私は今このようなことを調査研究しています。
これが直接実務に役にたつとまでは考えていませんが、多少ながらも、マンション管理士として民法や不動産に関する知識を身につけましたのです、それらを生かせる税理士となればばと考えています。