2016年度総合管理受託戸数から見るマンション管理業界動向
購読しているマンション管理新聞にて、2,016年3月末現在の総合管理受託戸数ランキングが発表されました。
先日、2015年度末の国土交通省からマンションストック数が発表されています。
これらの数字には、期間のズレや、管理会社に総合管理を委託していない管理組合、自主管理の管理組合などによる母数の違いがあり、その分を割り引いて考える必要はあります。
しかし、管理組合の約9割は総合管理を管理会社に委託していると言われていますので、大勢は把握できると考えます。
最大手15社で市場の過半を寡占
スケールメリットを狙って、業界の寡占化が一層進行しています。
先年度の時点で過半を超えていましたが、今年はさらにそこから1.8ポイント分寡占化が進み、上位15社だけで、52.4%のマーケーットシェアを占めています。
さらに資本関係から企業グループ別に最大手15グループを集計すると、60.8%を寡占しています。
登録業者数自体が少ない
寡占化が進んでいますが、もともとマンション管理業者として国土交通省に登録して業者自体の数が少ないことも影響していると思っています。
普通に考えると、不動産を取り扱う以上、地域性が反映されやすい市場環境と考えられるのですが、実態としては、2014年3月末時点(これより新しい資料が発見できませんでした)での登録業者数は、2,213社しかありません。
ちなみに同じ国土交通省管轄の免許である宅地建物取引業と比較すると、全国に122,685業者ですので、50分の1以下です。
規模が大きいからと言って、いい管理をしているとは限りません
もちろん、基本的にはその看板に応じた仕事をするスタンスがありますので、零細の企業に比べれば、資料や制度などが整備されており、さすが大手というリアクションもあります。
しかし、みなさんご存知の通り、資料や制度が整備されているとしても、それがサービスに直結するわけではありません。
人的サービスの全てを契約書や仕様書で縛ることは難しいからです。
また、そもそもその契約書や仕様書は、分譲時点においては、分譲会社、ひいては管理会社がほぼ一方的に決めたものではないでしょうか?
もしそうだとすれば、その内容が顧客有利のものになっているのでしょうか?
スケールメリットの有効性
また、スケールメリットの視点から見ると、過去の管理会社勤務経験から、単一事業のビジネスを行う企業においては、スケールメリットには一定の有効性があると感じます。
しかし、今回市場を寡占しているような最大手管理会社においては、分譲マンション管理しか事業を行っていない企業はほぼありません。
企業成長のスピードの問題から新規事業への参入や買収などを通じて、多角化に及んでおり、その事業多角化に伴う、収益性低下(コングロマリットディスカウント)が起こっているはずです。
そうすると、会社全体としてはそれほど儲かっていないという現象が起こり、単一事業での収益性が良かったとしても、その価値が顧客に還元されるかは未知数となります。
結局、規模の大きいところに頼んだからと言って、いい管理をしてもらえるとは限らないという話になってしまうのです。
まとめ
コンプライアンスや情報力などから大手企業の方が良い管理となる確率が高まる傾向はあると思っていますが、それは確実ではありません。
この業界だけではないと思うのですが、人的サービスがその本質である以上、人ベースの結果が出ているように感じています。
結論、分譲マンションの管理はその企業規模に大きく影響されないと考えています。
これを前提により良い管理を受けようとするならば、まずは現在の契約書や仕様書を見直してサービスのブレを減らし、その価値がその契約内容に見合ったものであるのかどうかについて、吟味する必要があります。
そこで初めて、費用に見合った適正な管理を行っているかどうかが比較可能になります。