フロント担当者から見た業務処理の要領とポイントについて(契約書記載の業務:前編)
前回(2015.12.25)までで『マンション標準管理委託契約書』の「別表第1〜別表第4」記載の「管理事務」については、一通り解説が終わりました。今日からは、『マンション標準管理委託契約書』本文に記載されている各条項に関連する業務について、解説します。
ただ、長くなりすぎましたので、3分割とし、本日は第8条までを前編として、まとめたいと思います。
なお、第1条は、「総則」。
第2条は、「表示及び管理対象部分」(稀に、管理規約との整合性が取れていない場合がありますので、一度は、しっかりと確認されておくべきだと思います)
第3条は、前回までで解説した別表に詳細が記載されている「管理事務」です。
第4条 第三者への再委託
当然の話ですが、再委託していますので、その履行責任は、元請けである管理会社にあります。
再委託していると、フロント担当者は、報告書しか読まなくなりがちです。
しかし、実施に関して立会いを管理員だけに任せていると、業務の内容に不案内になり、どんどん「何もわからない」担当者になってしまいますので、建物巡回点検などに併せて、積極的に業務立会いを行い、現場実務に明るくなることをお勧めします。
第5条 善管注意義務
業務を委託された「プロ」としての注意義務が求められています。
何もわからないまま担当させられていたとしても、「契約書」上は関係ありません。
少なくとも、「契約書」に記載されている内容については、管理組合・管理会社の相互で、しっかりと把握されることをお勧めします。
第6条 費用の負担及び支払い方法
この条項中でなくても、構わないのですが、解約時の清算方法について、契約書に記載がありません(自らの解約について、詳しく規定するのかという根本的な問題はありますが、「契約書」の締結意義を考えれば、網羅されておくべき内容ではないでしょうか?)
毎月発生している業務については問題がありませんが、定額委託業務費に隔月以上の間隔で実施する業務が含まれている場合には、精算方法について事前に取り決めておくことが望ましいと考えます。
第7条 管理事務室等の使用
「管理事務室」の使用程度であれば、問題はほとんどありませんが、設置した機器(遠隔監視装置・電話設備)の費用負担など、細かいところまでは網羅されていないことが多いと感じています(馬渕先生も、しっかりと把握していない管理会社・管理組合で、『遠隔監視装置の費用負担を求められる事例』に遭遇されています)
これは先ほどの第6条にも関連しますが、清掃用具や備品、書類印刷・コピー代、郵送代などの費用負担も含めて、相互に確認・取り決めしておくことは重要です(担当としては間違った請求をしないために必要です)
また、管理組合としては、この確認が行われないと、管理会社の正確な比較もできません。
おおむね竣工時に手配が行われるため、担当者が変わると把握できていないことが多く、また書類による引継ぎも十分には行われていないケースが散見されます。
この他、この業務に関連して、管理組合備品と、管理会社備品との区分がしっかりと行われておらず、台帳などで管理されていないケースもあり、管理会社の変更に伴って、整理・確認が行われるケースが多いと思われます。
第8条 緊急時の業務
緊急対応業務については、体験が色々有りすぎます(苦笑)
また、守秘義務の問題もあり、ブログでは書きにくいことも多く、説明が難しいです。
ただ、一般論としてかけることは、中小の管理会社では、緊急対応後、速やかに「書面」で報告と費用請求を行っているケースは少ないと感じています。
大手の管理会社では、システムに則り、その流れで処理してしまうこともあるのでしょうが、実務上の実態として、理事長には電話などで一報を入れ、その後の理事会で協議し、事後承認を得るケースもあるのではないでしょうか?
この部分は、形式的なものと、実態にズレがある部分だと考えます。
契約書上は請求できることにはなっていますが、実務としては、理事会承認を経ず、先に費用請求することは難しいと感じます。