『忍び寄るブラックマンション危機とその回避法』を読了しました!
先日、株式会社シーアイピーの須藤社長を訪問した際に、ご著書である本書をいただきました。
実は、以前にも『活躍できるマンション管理士養成塾』の塾生から紹介を受け、一読したことがあったのですが、再読しました。
管理組合に対するセカンドオピニオンの大先輩が書かれており、書評として、「評価する」みたいな視点で書くとおこがましいですので、感想的なスタンスから記事化したいと思います。
特に共感できた部分
さすがにご経験が長いだけあり、「ここまで書いていいの?」と思うぐらいバッチリと業界の実情をご存じです(笑)
演出過剰と思わしき部分や少し言い過ぎと思われる部分もありましたが、元管理会社の社員として、ほとんどに同意できました。
その中でも、特に共感でき、また管理組合の方にとって有用と思われた部分を3つに絞ってご紹介します。
瑕疵問題は10年目手前の点検が肝心
新築時のアフターサービス点検については、2年で終わってしまいます。
『住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)』により、新築住宅の売主は、基本構造部分については、引き渡してから10年間の瑕疵担保責任がありますが、売主による10年目の自主点検行われることは、ほとんどありません。
特に何も言わなければ、そのまま過ぎてしまいます。
ほとんどの管理会社は、分譲した開発会社が親会社であり、内情として、「子分が親方に逆らう」ことは難しいのです。
隠すとまでは言いませんが、気づいていなかったと、見て見ぬ振りぐらいは当然ありえます。
また、独立系なら大丈夫とおっしゃられる方もいらっしゃいますが、2つ問題点があります。
一つ目は、新築時からその独立系の管理会社であれば、その会社は管理を委託してくれた開発会社は、基本は、大のお得意様であることです。
マンション管理組合もお客様ではありますが、新しい顧客を紹介してくれるわけではありませんので、問題発覚時点でのお付き合いにより、対応が変わり得ます。
二つ目は、独立系の会社でも日常の巡回点検を実施しているのは、そのほとんどが「管理員」か「フロント担当者」であり、建築の専門家であることは少ないことです。
必要なことに気づき、しっかりと指摘が行われるかどうかは未知数です。
このような次第から、何でも直してもらえるわけではありませんが、問題ないことを確認することも含め、この時点で一度しっかりと第三者の専門家にチェックしてもらうことは必要だと考えます。
大半が談合とリベートのブラック大規模修繕工事
実に明快に業界の裏側を書いてくれています。
どうしてこのような状態になるのかについても、しっかりと書かれており、元管理会社の社員として、私は本書の内容に全面的に同意します。
現在、私が管理組合向けのコンサルタントになった初めての顧問先の管理会社から、「リベート要求をするコンサルタント」ではないかと、疑われました(笑)
業界ではこのようなことが常態化しており、互いに疑いあっています。
「サイレント・マジョリティ」と「ボーカル・マイノリティ」
管理見直しを阻む問題点として、大いに賛同できます。
物言わぬ多数派である「サイレント・マジョリティ」を味方につけるために、情報発信を行い、相手からの発信がほとんどない中で、判断や行動をし続けることとなる理事長は本当に大変です。
我々、コンサルタントは、このような理事長を支援するために全力を尽くす必要があり、そのように在りたいと考えます。
まとめ
改善についての具体的なノウハウを知りたい方には、少し物足りないかもしれません。
しかし、多額の費用が必要となる修繕工事に関して、専門家活用が必要だと考えますが、その専門家であるはずの「一級建築士」に業界サイドの立場に立った行動があるという問題がしっかり書かれている本書は、業界の実態と管理組合運営上の問題点を知る上で、大変有用だと考えます。