消費税について(仕入れに係る消費税額の控除:全額控除)
今日は、消費税額の計算に係る規定である「仕入れに係る消費税額の控除」の規定のうち、全額控除について、まとめてみたいと思います。
最初の「消費税法について(概要)」の投稿で、「預かった消費税額」から「支払った消費税額」を差し引いた差額分を「差引税額」として国に納付する「多段階累積控除」の仕組みを解説しましたが、ここでは、その具体的な規定の中身について説明します。
消費税には、大きく分けると「原則課税(一般課税)」と呼ばれる原則的な計算方法と、「簡易課税」と呼ばれる簡便な方法の2種類の計算方法が規定されています。(まぁ、簡易課税の計算は、ちっとも簡便じゃないんですけどね。。。)
条文の流れに従って、原則的な取り扱いである「原則課税(一般課税)」の規定から解説したいと思います。
まず、制度上ポイントとなるのは、「対象期間」です。
試験問題としても、「いつ」支払った消費税額を、「いつ」預かった消費税額から差し引くことができるのかという部分がよく出題されます。
この部分の原則的な取り扱いを規定しているのが、「仕入れに係る消費税額の控除」の第1項になります。
また、「何の」支払いから引くことができるのかについても、併せて規定されています。
※下記の参照条文については、分かりやすさを優先し、条文番号の内容への置き換え、一部省略等を行っています。
仕入れに係る消費税額の控除
第30条1項に次の通り規定されています。
第三十条 事業者(小規模事業者に係る納税義務の免除の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が、国内において行う課税仕入れ又は保税地域から引き取る課税貨物については、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額(以下「課税標準額に対する消費税額」という。)から、当該課税期間中に国内において行つた課税仕入れに係る消費税額(当該課税仕入れに係る支払対価の額に百八分の六・三を乗じて算出した金額をいう。)及び当該課税期間における保税地域からの引取りに係る課税貨物(他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。)につき課された又は課されるべき消費税額(附帯税の額に相当する額を除く。)の合計額を控除する。
一 国内において課税仕入れを行つた場合 当該課税仕入れを行つた日
二 保税地域から引き取る課税貨物につき申告納税方式の規定による申告書(特例申告の場合を除く。)又は賦課課税方式の規定による申告書を提出した場合 当該申告に係る課税貨物(「一般申告課税貨物」という。)を引き取つた日
三 保税地域から引き取る課税貨物につき特例申告書を提出した場合(決定があつた場合を含む。) 当該特例申告書を提出した日又は当該申告に係る決定(以下「特例申告に関する決定」という。)の通知を受けた日
この規定中に新しく出てきた用語の意義はそれぞれ次の通りです。
なお、保税地域から引取りに係る申告等の各規定については、解説範囲が広がりすぎてしまいますので、ここでは割愛します。
課税仕入れ
第2条十二号に次の通り規定されています。
課税仕入れ 事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供(給与等を対価とする役務の提供を除く。)を受けること(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるもので、輸出免税等に掲げる資産の譲渡等に該当するもの及び輸出物品販売上における輸出物品の譲渡に係る免税その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるもの以外のものに限る。)をいう。
長い規定で、読み取り難いと思いますが、「いつ」の「なに」の支払いから消費税額を控除することができるのかが規定されています。
この規定がこれだけ長くなってしまっている原因は、相手が消費税を課されている課税事業者であるのか、または消費税を課されていない免税事業者であるのかが、わからないことによるものです。
ここは消費税法で最初につまずきやすいところだと思います。
一般消費者は消費税を納める義務がありません。
例えば、リサイクルショップに日用品を売却しても、その売却代金に消費税は課されていないこととして納税義務がないのです。
その買い取りをしたリサイクルショップ側では、「課税仕入れ」として消費税額が課されていることとして、その売却代金には消費税額含まれているものとして計算することができます。
ちょっと考えなくてもおかしいですよね?
だって、一般消費者は消費税を払わなくてもいいのに、事業者側では、消費税が払われたものとしてその消費税額を控除してもよいということですから、バランスが取れません。
しかし、制度上しかたないのです。
なぜなら、事業者側は相手方に消費税を納める義務があるかどうかなんて証明のしようがないのです。
事業をしているかどうかの証明程度なら可能かもしれませんが、一昨年前(基準期間)における課税売上高が1,000万円を超えていないかどうかなんて、いちいち証明していられません。
相手方にその証明を求め、それを保存する規定とすることは、その影響額に対して厳密な制度すぎるため、一律に全ての取引に消費税を課されているものとして計算することにしているのです。
一般消費者は、このようにして日用品の売却などに関して、消費税を納める義務がありませんが、そもそも給与等は消費税の課税の対象から除かれており、消費税を預かっていないことになっています。
結果として、消費税率が上がって、物価上昇したとしても、連動して給与等は上がらないため、支払いが増える分消費税を負担しているということになります。
この面倒な部分を除いて要約すると、次の通りです。
・事業者が、他の者(一般消費者を含む。)から受けた課税資産の譲渡等(給与等、及び輸出免税等により消費税が免除されるもの以外のものに限る。)をいう。
課税標準
また、ここに課税標準という用語が出てきます。
「国内取引の課税標準」については、「消費税について(小規模事業者に係る納税義務の免除」でも既出ですが、この解説時には「課税資産の譲渡等の対価の額の合計額」として解説していました第28条1項の規定中に登場しています。
課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額を含まないものとする。以下この項及び次項において同じ。)とする。ただし、法人が資産を第四条第四項第二号に規定する役員に譲渡した場合において、その対価の額が当該譲渡の時における当該資産の価額に比し著しく低いときは、その価額に相当する金額をその対価の額とみなす。
まず、結論として、この「課税標準」には、消費税額が含まれていません。
そして、次に解説する「課税標準額」との違いは、この「課税標準」の額には、輸出免税等が含まれていることです。
なお、「輸入取引の課税標準」については、第28条3項に次の通り規定されています。
保税地域から引き取られる課税貨物に係る消費税の課税標準は、当該課税貨物につき関税法に規定する課税価格の計算方法の規定に準じて算出した価格に当該課税貨物の保税地域からの引取りに係る消費税以外の消費税等(国税通則法(定義)に規定する消費税等をいう。)の額(附帯税の額に相当する額を除く。)及び関税の額(附帯税の額に相当する額を除く。)に相当する金額を加算した金額とする。
こちらの課税標準の金額は、消費税ではなく、関税法その他の法律等の規定により決定されますが、ここでは詳細は割愛します。
消費税法の試験上は、金額自体は与えられますので、どの金額が消費税法の対象となるかを読み取る力が必要となります。
課税標準額
第45条1項一号に次の通り規定されています。
その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等(輸出免税等、輸出物品販売場における輸出物品の譲渡に係る免税その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。)に係る課税標準である金額の合計額(「課税標準額」という。)
下図の通り、課税資産の譲渡等という用語には、まず国内と国外の要素が入っていません。
そして、「国内において行った」という枠で、国内取引に限定し、更にかっこ書きで、国内取引の輸出免税等も除かれている税抜き売上高の合計額という結論となります。
まとめ
今日は、用語の解説がメインとなりましたが、これらの用語を使いこなせるようになることが合格への近道です。
これらを見るたびに、「これは税抜きだな」、「これには輸出免税等は含まれていない」などと確認しつつ、何が対象となっているのかをしっかりと読み取れるようになってくるとしめたものです。
一つ一つ理解を深めながら、反復練習により身につける。
この繰り返しにより、受験予備校での成績上位30%前後(できれば20%以内)を保ち続けられることが合格に必要なことだと考えます。
(科目合格が進むほど、上位選手ばかりで戦うこととなる勝負であるところが恐ろしいです:苦笑)