A Written Oath

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消費税税理士試験

仕入れに係る消費税額の控除:課税売上割合に準ずる割合

一昨日昨日に続き、「仕入れに係る消費税額の控除」の規定を解説していますが、今日は「課税売上割合に準ずる割合」について、まとめてみたいと思います。

 

昨日の「課税売上高が5億円を超える場合等」の解説は、ポイントが多すぎて足早に解説をしてしまったので、そもそも課税売上割合についてもう少し掘り下げて解説を加えたいと思います。

「課税売上割合」は、細いところを除いて解説すると、下図数式の通り「課税売上高」と「非課税売上高」の合計額に対して、課税売上高が占める割合を意味しています。

 

Taxable_sales_ratio_Part2

 

話をシンプルにするため、まず個別対応方式による計算パターンに限って例示します。

 

税資産の譲渡等のみ(課税売上割合95%以上を含む)を行う事業者は、下図の通りに「支払った消費税額の合計額」である「課税仕入れ等の税額の合計額」の全額を控除することができます。

 

Multi-stage_cumulative_deduction

 

次に、非課税資産の譲渡等のみを行う事業者は、下図のように、「支払った消費税額の合計額」の全額を控除することができません。

個別対応方式を適用するためには、この区分を明確にすることが必要ですので区分経理は行いますが、「その他の資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ等の税額の合計額」は計算では使用されないため、計算式には出てきません。

したがって、差し引かれる税額はないことになります。

 

Multi-stage_cumulative_deduction_Tax-free_sales

 

最後に、「課税資産の譲渡等」と「その他の資産の譲渡等(非課税資産の譲渡等)」のいずれにも明確に「要する」と言えない「共通して要した課税仕入れ等の税額」については、「課税売上割合を乗じて計算した金額」を「支払った金額」として仮定計算しています。

 

これでもわかりにくいかもしれませんが、一応、イメージを図示すると次の通りとなります。

 

Multi-stage_cumulative_deduction_Taxable sales ratio_

 

ここまでの解説を前提に、今日の本旨に移りたいと思います。

 

 

課税売上割合に準ずる割合

第30条3項に次の通り規定されています。

3 「個別対応方式」の場合において、課税売上割合に準ずる割合(当該割合が当該事業 者の営む事業の種類の異なるごと又は当該事業に係る販売費、一般管理費 その他の費用の種類の異なるごとに区分して算出したものである場合には、当該区分して算出したそれぞれの割合。) で次に掲げる要件の全てに該当するものがあるときは、当該事業者の第二号に規定する承認を受けた日の属する課税期間以後の課税期間については、「個別対応方式」の規定にかかわらず、同号ロに掲げる金額は、当該課税売 上割合に代えて、当該割合を用いて計算した金額とする。ただし、当該割合を用いて計算することをやめようとする旨を記載した届出書を提出した日の属する課税期間以後の課税期間については、この限りでない。

一 当該割合が当該事業者の営む事業の種類又は当該事業に係る販売 費、一般管理費その他の費用の種類に応じ合理的に算定されるものであること。
当該割合を用いて個別対応方式のロに掲げる金額を計算することにつき、その納税地を所轄する税務署長の承認を受けたものであること。

 

要約すると、この規定は、売上高以外に合理的な方法で計算できるものがあれば、税務署長の承認を受けて、その方法で計算できる選択適用規定となっています。

具体例としては、経理計算などの共通費用について、従業員数による事業規模比率や、電気料金などについて店舗の床面積割を用いるなど、個別の費用ごとに「準ずる割合」を適用でき、それ以外に客観的な指標が用意できないときは、残りは「課税売上割合」を組み合わせて使用するなどといったことが可能になる規定です。

実務上、課税売上割合と共通費用の実態が乖離していると思われる場合には、自ら選択して適用できますので、しっかりと経理できていれば、有利な選択をすることは難しくないですね。